高畠 敏郎 教授からの挨拶
私たちの磁性物理学研究室に興味を持ってくれた学生や研究者の皆さん,こんにちは!
これまでの歴史を振り返り,最近の動向を述べた後で,本研究室で卒業研究や修士・博士論文研究をやってみたい方へのメッセージをお送りします。
研究室のルーツは昭和39年に理学部物性学科に設置された「磁性体講座」です。初代は結晶磁気異方性の研究で有名な辰本英二教授,二代目は高圧下での磁性研究の先駆者である藤原浩教授です。平成7年に私が三代目を引き継いだ後,平成10年の大学院重点化に伴い,物性学科が廃止となりました。当研究室は新しく出来た大学院先端物質科学研究科に属することになり,理学部では物理科学科の教育を担っています。
研究室の教員に最近動きがあります。平成8年に助教授として迎えた伊賀文俊氏は,希土類ホウ化物の単結晶を育成するためにキセノンランプ炉を用いた浮遊帯溶融法を開発し,その磁性研究を国内外の多くの研究者と共同で進めました。特に,近藤半導体YbB12のギャップ形成機構の解明,フラストレート系TbB4の分数磁化プラトーの発見などがよく知られています。同氏は平成23年4月に茨城大学に教授として移りました。助手であった梅尾和則氏は高圧下での比熱測定法を開発し,重い電子系Ce7Ni3の非フェルミ液体的挙動やYbAgGeの磁気フラストレーション関する研究で成果を上げて,平成18年に自然科学研究支援開発センター准教授となりました。その後に助教として着任した鬼丸孝博氏は,新奇なカゴ状希土類化合物を開発し,最近,PrIr2Zn20単結晶において4極子秩序とさらに低温での超伝導を発見しました。平成23年9月には准教授に昇任しました。
当研究室から巣立った14名の博士(内3名は論文博士)は全員が研究者・大学教員として日本だけでなく米国や韓国の大学,研究所,企業で活躍しています。修士号を取得した41名は,自動車,非鉄金属,半導体製造などの企業における高度な技術者,中学・高校における熱心な教師として社会に貢献しています。学士号を取得した76名のほとんどは大学院に進学しましたが,半導体や情報関係の企業に就職した者もいます。
私自身は,昭和63年に広島大学に着任以来,セリウム近藤半導体に精力を注いできました。CeNiSnやCeRhSbでは4f電子と伝導電子との混成によって擬ギャップが形成されるために,巨大な熱電能が現れます。このような価数の不安定な希土類化合物に着目して,熱電変換物質としての可能性を探りました。最近では,希土類を含まないカゴ状物質の熱電物性も研究しています。充填スクッテルダイト及びクラスレートというカゴ状物質の中には,熱を伝えにくく,かつ巨大な熱電能を示すものがあります。これらは熱電変換材料の候補として大きな期待が掛けられています。どうすれば熱伝導率をさらに小さくできるのか,熱電能をさらに大きくできるのかという課題に対して,新物質を合成しながら研究を進めています。その際,強い電子相関を活かして熱電能を高め,カゴ構造の特徴であるラットリングを活かして熱伝導を下げるという方針に則っています。最近,クラスレートBa8Ga16Sn30が200〜300℃で従来材料よりも優れた熱電変換性能を持つことを発見しました。これは,基礎物理の研究が応用につながるという身近な例です。
研究の詳細については,発表論文リストをご覧ください。
当研究室で卒業研究をやってみようと思っている学生の皆さんへ
磁性物理学研究室では,新しい物質を創製して,電子のスピンと軌道運動が金属-非金属転移や特異な超伝導,巨大熱起電力,軌道の秩序化,構造相転移とどの様に関わっているかを研究しています。対象とするのは,f 電子を含む希土類, d 電子を含む遷移金属,s及びp 電子を含む非金属元素をうまく組み合わせた多種電子系のカゴ状や層状の物質です。
卒論では一人一人が新物質や単結晶を作って,以下のようなテーマを研究します。
- 巨大熱起電力を示す熱電変換物質の伝導と磁性
- 圧力によって誘起される金属-非金属転移と磁性-非磁性転移
- 電子軌道の空間的秩序化と金属-絶縁体転移
- スピンフラストレーションと多極子が絡んだ量子状態
これらの面白い物理現象は、性格の異なるs,p,d,f 電子がお互いのスピンの向きと運動量を意識して、 譲り合ったり、寄り添ったりしながら運動するために起こります。 しかし、電子集団が示すマクロな量子力学的現象をミクロな立場から理解することは、とても難しいのです。 この難問にチャレンジするために、私たちは先ず新物質を創製し、それを綺麗な単結晶にします。 次に、その磁気的・熱的・電気的特性を広い温度範囲で圧力と磁場を変えて精密に測定し、 新しいアイデアに基づいて解析します。
次のような学生は大歓迎。
- オリジナル物質を作って、国際共同研究に参加したい。
- 新機能をグリーンイノヴェーションに活かしたい。
- 磁性(近藤効果、フラストレーション)や電気伝導の本質を理解したい。
- 電磁気学と物理科学実験法の授業や物理科学実験が面白かった。
- 大学院に進学して研究者になりたい。
