分子形質発現学研究室ホームページ

分子形質発現学研究室

研究室HP再構築中につき,研究者総覧をご覧下さい。

坂本 敦
島田 裕士
高橋 美佐

○研究活動の概要

 本研究室では,植物に特徴的な高次生命現象を司る分子基盤とその制御機構について,遺伝子,代謝,分化・形態などの幅広い視点から研究している。とりわけ,不断に変化する生育環境への適応・生存を可能にする代謝調節機能や,植物の主要機能を担う葉緑体のバイオジェネシスに注目している。また,これらの植物機能の解明研究を通じて,過酷環境でも生存可能で高い生産ポテンシャルを有する植物の創出研究も行っている。さらに,平成29年度より分子遺伝学研究グループと協力し,微細藻類を対象にバイオ燃料の開発に取り組む共同研究講座(次世代自動車エネルギー共同研究講座・藻類エネルギー創成研究室)を開設し,産学共創研究も推進している。

(1) 植物の成長生存戦略と代謝機能制御

独立栄養を営む植物は,動物と比較して遙かに多様で複雑な物質代謝系を有するが,その固着性が故に厳しい環境変動を生き抜くために代謝が担う役割も極めて大きい。即ち,過酷環境下の適応応答や恒常性の維持などの生命現象においては様々な物質代謝が関与しているが,植物代謝系は単に多彩なだけでなく,生育環境の変動に応じて代謝の生理的役割を合目的に変換する柔軟性をも兼ね備えている。このような多機能性を有した植物代謝のダイナミズムを,運動能力の欠如を補う植物の“したたか”な成長生存戦略の一環と捉え,その制御に関わる分子機構や遺伝子ネットワークの解明研究を進めている。また,シグナル伝達やストレス傷害といった正負両面の生理作用を持つ活性酸素や活性窒素の植物代謝機能に焦点を絞った研究も展開している。亜硝酸毒性や硝酸過剰障害,大気汚染など,活性窒素の関わりが示唆されている農業・環境問題にも関心があり,大気中の活性窒素酸化物の植物生理作用なども解析している。

(2) 葉緑体の発達機構

植物細胞において葉緑体は光合成を行うだけでなく,窒素・硫黄代謝,アミノ酸合成,植物ホルモン合成等を行う重要な細胞小器官である。また,緑色組織以外において葉緑体はカロテノイドやデンプンを貯蔵する赤色・黄色・白色の色素体へと形質転換する。植物の主要機能を担う葉緑体や色素体が形成されるメカニズム解明を目的として,遺伝学・分子細胞生物学・生理学的手法等を用いて研究を行っている。また,葉緑体の重要な機能の一つである光合成に関して,発生した酸素分子による光合成タンパク質の酸化と光合成機能低下に注目して解析を行っており,これらの研究を通して光合成活性上昇植物の育種を目指している。

(3) 物や光合成藻類の機能開発と応用研究

上記の研究から得られた成果をもとに,過酷環境でも生育する作物や,光合成機能の強化を通じて生産能力が増大した作物,環境汚染の改善に役立つ植物などを創出する研究も行っている。また,高度に脂質を蓄積する能力に優れた光合成微細藻類をプラットフォームとして,第三世代のバイオエネルギー生産や高付加価値物質の探索にも取り組んでいる。