my works
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研究テーマ1:生物の進化を促す反復配列の研究
【背景】
生物のゲノムには多種多様な反復配列が含まれています。含まれている、というよりも、むしろ反復配列の海原に、ところどころ島のように遺伝子が存在する、というのが真核生物のゲノムの姿だと言っても良いかもしれません。
生物の進化の過程で、さまざまな反復配列がゲノムの中に出現し、あるいは外部から侵入し、自分のコピーを増やし、ゲノムの中を動き回り、ホストとの間で様々な相互作用を繰り広げながらゲノムの進化を促進し、種に固有のゲノム組成を作り上げてきました(→もっと詳しく)。私たちはこのような反復配列たちが、いかにホストのゲノムを進化させてきたのかに興味をもって研究を進めています。
【動く遺伝子トランスポゾンと生物の進化】
反復配列の中には、ゲノムの中を動き回るトランスポゾン(転移因子)とよばれるグループがあります。これらは生物のゲノムに「寄生」している「利己的なDNA因子」だと考えられてきました。しかし生物の進化という観点からみると、トランスポゾンは非常に大きな役割をはたしてきました。私たちは両生類や魚類で見つけたいくつかのトランスポゾンの進化と、生物の進化の関わりについて研究を進めています(→もっと詳しく)。
【単純反復配列の起源と進化】
生物のゲノムには、反復ユニットが同じ向きに縦列(タンデム)に長く連なった「単純反復配列」(Simple Sequence Repeat、SSR)と呼ばれる反復配列が多数ふくまれています。ある種のSSRは大量にコピーを増やし、また染色体全体に散在して存在しています。さらにいくつかのSSRは、染色体の構造と機能に重要な役割を果たしていることが知られています。しかしそのようなSSRがそもそもどのようにして生まれ、どのようにして染色体全体へと広がっていったのかは詳しくは明らかになっていません。私たちはカエルにおいて、MITEと呼ばれるある種のトランスポゾンがSSRを生み出し、コピー数を増やし、染色体全体に広げる役割を果たしたことを発見しました。この発見にもとづいて、SSRの起源と進化について研究を進めています(→もっと詳しく)。
研究テーマ3:カエルの変態のメカニズム
【オタマジャクシがカエルになるしくみ】
イモムシが蝶になり、オタマジャクシがカエルになるように、多くの動物の個体発生は卵から幼生ができる「胚発生」と、その後の大規模な体の作り換えである「変態」の2段階を通しておこなわれます。変態は広い動物群で見られ、海産の無脊椎動物では,むしろ変態しない(直接発生)動物のほうが例外的だといえます。発生の全体像を理解するためには、胚発生の研究とともに変態の研究が必要不可欠な課題です。
カエルの場合、オタマジャクシに手脚が生え、尾が縮むという目立った変化の他にも、肝臓、腸、表皮などの様々な器官が幼生型から成体型へと変化します。これらの多様な変化はすべて甲状腺ホルモンという同じシグナルに応答して起こります。同じシグナルを受け取っても、それを受ける側のシステムが違えば異なる反応を示すわけです。このような違いを生み出す仕組みは、生物学的に興味深い問題です。
変態には時間的な制御も重要です。たとえば尾は後肢が成長した後に縮まなければなりません(さもなければオタマジャクシは泳ぐ事ができなくなってしまいます)。このように変態においては、同じホルモンに誘導されて変化が起こるにもかかわらず、はやく変化する器官、遅く変化する器官があります。このような時間的な制御はどのような仕組みで行われているのか、興味がもたれます。
私たちはこのようなカエルの変態のメカニズムを分子生物学的な手法によって研究しています。
output
学生時代の研究テーマ:ホヤの発生における遺伝子発現制御機構の研究
大学院時代は京都大学理学研究科動物学専攻の佐藤研でホヤの研究を行いました。
ホヤは現在ではゲノム解析の進展やさまざまな分子生物学的手法の開発によって、発生生物学と進化生物学の優れた研究材料として広く認知されています。しかし私が研究をはじめた1990年代前半には、その分子生物学的な研究はようやく始まったばかりであり、われわれ研究者は基礎的な実験手法の開発から始めなければなりませんでした。そこで私たちは、まず外来遺伝子をホヤの初期胚に導入し、発現させ、その発現制御機構を調べるという一連の手法を開発しました。この手法を用いて、マボヤ(Halocynthia roretzi)の幼生筋肉アクチン遺伝子群が筋肉で特異的に発現するのを制御しているプロモータ領域のシスエレメントの探索を行いました。また、筋肉アクチン遺伝子の発現機構が他種のホヤ(Ciona savignyi)との間で保存されているかを調べる分子比較発生学的研究も行いました。
グラント
トランスポゾンベクターを利用した、脊椎動物への遺伝子導入法の調査研究
海外研究開発動向調査(代表、 2002年度採択)
T2-MITE転移因子の大量増幅・転移機構に関する研究
若手研究B(代表、2003年度採択)
動く単純反復配列(mobile-SSR)による染色体高次構造の進化
萌芽研究(代表、2007年度採択)
トランスポゾンの増幅・転移が遺伝子発現ネットワークを進化させた可能性を探る
基盤研究C(代表、2010年度採択)
研究テーマ2:無腸類と共生藻の共生メカニズムの進化
【進化を駆動する共生関係】
私はトランスポゾンの研究を通して、生物の進化における「共生」の意義について考えるようになりました。そして宿主生物と共生体(共生生物やウイルス、トランスポゾンなど)の対立と協調をはらむ関係がシステムの中に不安定性を生み出し、これが生物の進化を駆動する主要な原動力の一つであると考えるようになりました。この観点から、最近、無腸類と単細胞藻類の共生関係について共同研究者である彦坂-片山智恵(広島大学自然科学研究支援開発センター遺伝子実験部門)らとともに研究を始めています。
無腸類(Acoela)は左右相称動物の中でもっとも初期に分岐したと考えられている動物です(Katayama et al. 1993)。かつては扁形動物の一種とされていましたが、現在は無腸動物(Acoelomorpha)という独立した門に分類されています。この動物群には微細藻類と光共生の関係にある種が多数含まれています。私たちは特に、微細藻類を卵細胞を通して親から子へと「垂直伝搬」させる機構を進化させたワミノアという無腸類に興味をもち、このような機構がいかにして進化したのかを調べようと研究を開始しています。