トランスポゾン
トランスポゾン
新しいMITE型トランスポゾンXmixの発見
私たちはツメガエル(Xenopus)のゲノムで非常に大量に増幅している新しいMITE、Xmixを発見しました(Hikosaka et al, 2000, Hikosaka and Kawahara, 2004)。面白いことにXmixはその内部配列を重複させ、90bp弱の縦列反復配列(タンデムリピート)をつくり、これがツメガエルのゲノムの中で大量に増幅・転移して非常に優勢なサテライトDNA(あるいは単純反復配列SSR)を生み出していることが分かりました。私たちはこのXmixの進化をツメガエル属の種間比較によって調べ、さらにこの大量増幅のメカニズムを調べようと研究を進めています。(→もっと詳しく)
ツメガエルのT2-MITEファミリーの進化
魚類の新規トランスポゾン(国際共同研究)
ツメガエルのTxpBトランスポゾンファミリーの進化
Xmixはカエルおよび魚類でみつかっている「T2ファミリー」と呼ばれるMITEのファミリーに属しています。このファミリーにはいくつかのサブファミリーがありますが、それらはお互い同士に内部配列の相同性はほとんど見られず、ただ(1)挿入のターゲットがTTAAという4塩基の配列である、(2)両末端にAGG(A/G)(A/G)という配列をもつ、という共通性をもつグループです。このターゲットと末端部の共通性から、このグループのMITEsは同じあるいは類似した転移酵素によって動かされるのではないかと予想されますが、肝心の転移酵素はまだ見つかっていません。
私たちは独自の解析プログラムを用いたデータベース解析によって、T2ファミリーのサブファミリーを再度検索、分類し直し、各サブファミリーの進化の歴史を推定しました。その結果、同じT2ファミリーであっても各サブファミリーの進化の歴史には大きな違いがあること、また現在の転移・増幅活性にも違いがあるらしいことを明らかにしました(Hikosaka and Kawahara, 2010)。 面白いことに、いくつかのサブファミリーはツメガエルのゲノムの中で非常に長い間、転移活性を保ち続けています。私たちはこのトランスポゾンが「長生き」な理由は、このトランスポゾンが動くことがカエルにとって何らかの利益をもたらしてきたのではないかと考えています。私たちはこのテーマで2010年度に科学研究費補助金(基盤研究C)を得て、現在研究を進めています。
私たちはツメガエルのゲノムから新しいトランスポゾンファミリーTxpBを発見しました。このファミリーは昆虫で見つかった「piggyBac」というDNA型トランスポゾンに似た転移酵素(transposase)をもち、転移のターゲット配列もpiggyBacと同じTTAA配列でした。TxpBには3つのサブファミリーがありますが、これらはツメガエル属の共通祖先から数千万年から1億年もの間、受け継がれてきたことが示唆されました。一般にDNA型トランスポゾンは(ホストにとっては無用の長物なので)自然選択によって保存されず、一つのホストで長期にわたって生き延びることは難しいと言われています。実際、脊椎動物では「元気な」トランスポゾンはほとんど見つかっておらず、メダカのTol2, Tol1が知られているのみです。TxpBは一つのホストの中で非常に「長生き」しているという点で、興味深い存在です。
私たちのこれまでの解析によって、そのうちの一つのサブファミリーはホスト(宿主)によって「家畜化」されて、ホストにとって有用な機能を果たすように進化したことが示唆されました。つまりホストの役に立つことで、自然選択によって保存されてきたわけです。これと対照的に、残りの2つのサブファミリーは現在もカエルのゲノムの中を動き回っている「元気な」トランスポゾンであることが示唆されました。そうだとすると、これらはカエルやヒトを含む四足動物で初めて見つかった元気なDNA型トランスポゾンということになります。私たちはpiggyBacの”piggy”にちなんで、家畜化されたサブファミリーを「Kobuta」、家畜化されていない野生のままのサブファミリーを「Uribo1, Urbo2」と名付けました(Hikosaka et al., 2007)。現在、家畜化されたトランスポゾンの機能と、野生のトランスポゾンの転移活性について研究を進めています。
ドイツのベルリンにあるマックス・デルブリュック分子医学研究センター(Max-Delbruck Center for Molecular Medicine)のZoltan Ivics研究室との共同研究で、魚類の新しいトランスポゾンについて研究を進めています。
トランスポゾンとは

トランスポゾンには大きく分けて2種類の異なるタイプがあります。ひとつはDNA型トランスポゾンと呼ばれるグループで、これらは染色体上のある位置からいったん染色体外へと切り出されて、また別の場所へと挿入されるという「カット&ペースト」方式の転移をします。もうひとつはRNA型あるいはレトロトランスポゾンと呼ばれるグループで、これらはいったんRNAに転写され、それが逆転写によってふたたびDNAになって他の場所へと挿入される「コピー&ペースト」方式の転移をします。後者は転移のときにコピーが増えるので、ゲノム内で非常に大量に増幅する傾向がみられます。
このような転移メカニズムの違いがあるため、DNA型トランスポゾンは一般にRNA型にくらべてコピー数は少ないのですが、DNA型トランスポゾンの中にもRNA型に匹敵するほど大量にコピーを増やしているものがあります。その代表的なものがMITE(Miniature Inverted-repeat Transposable Element)と呼ばれるクラスのトランスポゾンです。MITEは様々な真核生物でみつかり、その配列は様々ですが、次のような共通の特徴をもちます。(1)長さがたかだか数百bpと短く、(2)両末端に逆向き配列(IR)をもち、(3)その外側に短い同方向の反復配列(ダイレクト・リピート、TSD)をもち、(4)内部に転移酵素遺伝子をコードしていない非自律的な転移因子で、(5)非常に均一性の高いコピーが非常に大量に(ときには数万コピー以上まで)増幅している。DNA型トランスポゾンであるMITEが、なぜこのように大量に増幅できるのか、その理由はよく分かっていません。
動くSSRによる染色体の進化
XmixのようにMITEが単純反復配列(SSR)を生み出すという現象は、カエルだけでなく広い生物で見られるらしいことが分かってきました。私たちはトランスポゾンの上に乗って増幅し、動くSSRが生物の染色体の進化をドライブする役割を果たしたのではないかと考えて研究を進めています(→もっと詳しく)。