パリの国立図書館を訪ねて

水島 裕雅


 久しぶりにポーランドとフランスに行ってきました。ポーランドのワルシャワ大学で開かれたヨーロッパ日本研究協会(以下EAJSと略記)の第10回大会に参加し、発表するのが目的であり、期間も8月23日から9月6日とわずか2週間ほどでしたので、訪ねたのはワルシャワとパリに限られました。EAJSの国際大会は3年に1度開催され、世界の各地から500人以上の参加者があり、また発表者も300人以上いるという大規模なものですが、この学会の話をするのは別の機会に譲り、今回はパリの国立図書館に話をしぼりたいと思います。新しい図書館ができたという話は聞いていましたが、今度が初めての訪問です。

 旧国立図書館はルーヴル宮に近いリシュリュー通りにあいかわらず黒ずんだ巨大な姿を残していました。しかし、ここは現在、手書き原稿(マニュスクリ)や、地図、版画、写真、メダルや骨とう品などの収集館となっていて、図書館というより文学館的な機能を持っているようです。それでは新しい図書館はどこにできたかというと、パリ南東の新興開拓地(といってもパリの中心のシテ島から5〜6キロ、地下鉄14番の終着駅の近く)にありました。本を広げて立てた形といわれる巨大な建物(数えてみると22階ありました)が4棟、広大な敷地の四隅に立っているのにまず驚かされます。近づいてみると、その広大な敷地はすべて木の板で被われていて、まん中に大きな穴があいています。中をのぞいてみると、それは中庭になっていて、大きな木がたくさん植えてあり、4〜5階の深さがあります。東側入り口という表示に従いエスカレーターで中庭に降りていくとそこが入り口で、厳重な手荷物検査がありますが、その後の応対はとても親切でした。ここには1300万冊の蔵書があり、その他旧国立図書館などの25万のマニュスクリや1200万の印刷物や写真、100万のマルチマディアの作品、89万枚の地図などがコンピュータで管理されています。写真つきの登録カードをもらえばすぐに誰でも利用でき、学習棟と研究棟とで国籍を問わず大勢の人々が読書をしたり、パソコンに向かったりしています。まだ南北の2棟は空いているようで、将来に向けて準備されているようです。誰にでも資料を提供し、思索する場を与えようとする努力は、1666年のコルベールの旧図書館建設と1692年以来のその公開と拡充に始まり、文化や学問の公開の努力は実に300年以上も続いているわけで、文化に対するフランスの誇りと情熱を感じました。(広島大学・みずしま ひろまさ)


『広島芸術学会 会報』第74号(2003年)、「巻頭言」。