9月28日(土)と29日(日)に山口県の青海島(おおみじま)に行ってきました。この夏休みは2日続けて休みがとれなくて、やっと還暦の日の翌日に家内と一泊旅行に出かけました。
海の見えるところでゆっくりしたいというのが目的で、金子みすヾのことは念頭になかったのですが、青海島に渡る前に長門市で降り、そこからバスで「香月美術館」に行きました。この美術館は三隅町出身の美術家香月泰男の作品を集めた町立の美術館ですが、不便なところにあり、なかなか行けませんでした、創立9年余にして始めて見に行くことができました。町立にしては立派な美術館です。有名な「シベリヤ・シリーズ」は山口県立美術館へ寄贈されているのですが、その他の膨大な作品が遺族から寄贈され、その一部が今回は「水」というテーマで展示されていました。画家のアトリエも再現されており、また別の企画の折には訪ねてみたくなるような、好ましい印象を得ましたが、来館者はあまりいませんでした。(入場料は一般500円です)
金子みすヾの方は調べてもいなかったのですが、長門三隅からバスで青海島に渡るために仙崎で乗り換えるために、JRの仙崎駅で降りたところ、「金子みすヾ館」の看板が目につき、よく見ると、JRの仙崎駅舍が文学館になっておりました。いわゆる田舎の駅舎にパネルで仕切りを作り、そこに彼女の作品や写真、あるいはテレビで放映された番組のビデオの放映などがなされていました。また、建物の隅に彼女の生家の金子文英堂(書籍文具店)の一部が再現されておりました。
あまり上手とは言えない展示の仕方でしたが(駅舎という建物のためやむをえないものがありますが)、訪問者が老いも若きも次々とやって来るのには驚きました。なかには観光バスでやってくる来館者も数多く見られました。金子みすヾ(明治36年〜昭和5年)は26歳で自殺したため、一部の人にしか知られていなかった童謡詩人ですが、20年前に矢崎節夫氏の努力で遺稿集が発見され、その後作品集、全集などが刊行されて、童謡は国語の教科書に収録されたり、彼女の人生がテレビでドラマ化されたりしてすっかり有名になり、長門市はそれを観光と結び付けて売り出していきました。
ここでもらったパンフレット「金子みすヾ 心のふるさと」は彼女の童謡と童謡に歌われた昔の風景などの写真がたくさん入った立派なもの(無料)ですが、そこには「金子みすヾ顕彰会 編集、長門市商工観光課 発行」とありました。
現在、この「金子みすヾ館」の他に「みすヾ記念館」もあり(これは訪ねることができませんでしたが、写真で見たところでは、彼女の文学資料などが集められて展示されているようです)、ともに入場無料です。
現在長門市では彼女の生家(金子文英堂)を文学館にするため工事中とのことですが、すでに彼女の胸像や詩碑が作られ、「みすヾ通り」や「みすヾ公園」が整備され、ゆかりの場所には説明板があり、小さな仙崎という漁港は金子みすヾで塗りつぶされているようでした。もちろん、市の商工観光課の肝煎りでなされていることからも推察できるように(そういえば中原中也記念館も山口市の観光課の発案とのことです)、彼女は町起こしのために使われていますが、それとくらべると広島市の文学者に対する熱のなさに驚くばかりです。(10月2日、水島記す)