北九州市旧門司三井倶楽部のこと

成定 薫


 4月1日、家族で門司港レトロ地区で遊びました。この地区には、新しく建てられた門司港ホテルを中心に、JR門司港駅をはじめ、旧大阪商船、旧門司税関、国際友好記念図書館など古い洋式建築が配されていて、確かに一種レトロな雰囲気を醸し出しています。北九州観光の目玉になっているのはご存じの通りです。

 さて、JR門司港駅前に旧門司三井倶楽部という建物があり見物しました。もともとは1924(大正10)年、三井物産の接客・宿泊施設として、駅からかなり離れたところに建てられたものだそうですが、先年、この地区の再開発の一環として巨額の費用をかけて駅前に移設されたそうです。1階部分は入場無料でレストランなどがあります。2階は有料(といっても100円)で、展示コーナーになっており、アインシュタインと林芙美子ゆかりの品々を見ることができます。

 なぜアインシュタイン(1879-1955)かというと、1922年にアインシュタイン夫妻が改造社の招きで来日した際、帰国を前にした数日間、門司三井倶楽部に宿泊したからだそうです。夫妻が使用した家具調度などが復元・展示されています(アインシュタインメモリアルルーム)。

 また、なぜ林芙美子(1904-1951)かというと、彼女は門司の生まれで、幼少期をこの地で過ごしたからだそうです(その後、尾道へ移り住んだ)。彼女の著作や私信などが展示されています。

 旧門司三井倶楽部の建物自体に風格があり、上記のような事実が分かって、なかなか興味深かったのですが、アインシュタインと林芙美子の組み合わせには何の必然性もないのが気になる、というか残念でした。

 やはり、この建物(の2階)は「北九州文学館」あるいは「門司文学館」とし、林芙美子を中心に近代文学資料を展示して、一角にアインシュタイン・コーナーを設けるほうが、展示のコンセプトがはっきりしていいのではないかと思いました(いかに著名な科学者とはいえ、アインシュタイン夫妻は、門司にほんの数日間、ただ滞在・宿泊しただけなのですから)。このように考えるのは、筆者が「広島に文学館を!市民の会」の会員だからでしょうか。

 それにしても、科学者であれ、文学者であれ、その地にゆかりのある著名な文化人を担ぎ出して、観光ルートに乗せるというたくましい商魂に感服しました。水島先生がかねてから疑問を呈しておられるように、この点、広島市は「商売っ気(商才)」がないですね。(2003年4月5日記)