原爆文学の継承

長津功三良

中四国詩人会理事長兼事務局長


 このところ、広島市では地味ではあるが、原爆文学を再確認し、継承してゆく、新しい形での発信への努力が積み重ねられている。「広島に文学館を! 市民の会」は一昨年から、原爆文学の物故作家の作品朗読、学習会に取り組んできた。さらに最近は、広島在住の作家、詩人が自作を語る会を続けている。また、「広島花幻忌の会」は旧日銀跡で原民喜の原稿などの展示会、シンポジウムを開催したのに続き、碑前祭や朗読会も開いてきた。ほかに、今年一年だけであるが、「峠三吉没後50年の会」による碑前祭や諸史料の展示会などもある。

 いずれも広島の文化人や作家、詩人たちを中心とした運動で、互いの会員同士の交流などもあり、少しずつ一般の市民に広がりつつある。最近の碑前祭の詩や小品の朗読には、中学、高校生など若い世代の積極的な参加も見られ、心強く思っている。

 単に原爆について書かれた文学諸作品を掘り起こしたり解読するだけではない。次の世代へ読み継ぎ、手渡していく、広島を発信地とした新しい平和創造の運動である。これからの時代へ、提言してゆく核となる試みであろう。

 多くは、戦争を経験した世代や原爆の悲惨を味わった世代が、一つの責務として行っているように見える。単に言葉として平和を叫ぶのではなく、もう一度戦争とは何かを見直す時期に来ているのではないだろうか。

 現在また、アメリカによるイラクへの攻撃、北朝鮮の問題など一触即発で、わが地球の上は騒然としている。人類の生存にもかかわることになりそうで、際どい思いをしている。人種や宗教を超越した平和を切に願う。

 無差別殺りくを経験したヒロシマ・ナガサキの人間として、また武器を持たない人間として、言葉や文字、音楽、絵画などで、心へ訴えるしか方法がない。これが、人間の良心を守る唯一の手段であろうと信じている。

 これからも、一人の人間として、小さくても自分のできることを続け、美しい世界を次の世代へ手渡していきたいものである。(山口県三和町)


「中国新聞」文芸欄、2003年3月30日。