推薦:佐々木暁美著『秋の蝶を生きる 山代巴 平和への模索』
山代巴は、たしかにこの一書の中に生きている!
〈秋の蝶 地にしばらくは 止まりけり〉芭蕉
秋の蝶は、やがて来る春のために、渾身の力をふりしぼって卵を産み、死んでいくのだと、山代吉宗は妻になる巴に語る。
三年後、ふたりは共に反戦のかどで捕らえられ、ふたたび相見ることはない。敗戦直前、吉宗は獄死していたのだ。
残された巴は、ひたすらに人権と自立を求めて身近な人々と語り、千夜一夜の物語を紡いで止むことがない。それだけが、平和を築く連帯のいしずえであることを疑わないからである。
晩年の彼女に寄り添い、学んだ著者が、愛と畏敬をこめてその生涯を辿った山代巴は、たしかにこの一書の中に生きている。
山代巴の産みつけた卵は、私の中にしっかりと育っている―。そう考える人は、私自身を含めて決して少なくはない。
この本を手にするあなたの中にもその卵の育つことを、心の底から期待する。
原田 奈翁雄