広島市への申入書

 

広島市長秋葉忠利 様
広島市役所企画調整課 様

旧日本銀行広島支店の「文学館」としての活用を

 私たち「広島に文学館を!市民の会」は、平和文化都市・広島に「文学館を!」という素朴な願いから
発足した市民団体です。広島市ほどの大きな都市に、また原爆がもたらした痛みを後世に伝える資料の
多くが遺されている場所でもあるこの地に、いまだ「文学館」のひとつもないのは市民として残念なこと
です。    
  これまで「広島文学資料保全の会」など市民の努力によって、峠三吉・原民喜・正田篠枝などの貴重な
資 料が中央図書館に寄贈  されてきましたが、これを生かし、保存・公開・研究する場はありません。
これまで市が「文学館」は不要であるとの口実にしてきた中央図書館の「広島文学資料室」は手ぜまである
ばかりでなく、せっかくの貴重な資料の有効活用にはほど遠く、関係者は心を痛めているのが現状です。

 このたび旧日本銀行広島支店の建物が広島市に無償貸与され、その有効活用策が今夏までにまとめられる
と聞きました。旧日銀広島支店の建物は、広島市内に現存する数少ない被爆建物であり、昭和初期を代表す
る希少な歴史的建造物です。また、隣接する頼山陽史跡資料館や近隣の平和記念公園と平和記念資料館とリ
ンクすることで、この一帯は広島の歴史・文学・文化ゾーンとなる可能性があります。この文化財としての
建物を「文学館」として活用することで、私たち広島市民は広島の歴史と思想を継承するのにもっともふさ
わしい空間を得られることになるでしょう。
 現在、多くの市民から旧日銀広島支店の活用のためのアイデア・意見 が寄せられていると聞きますが、
原爆文学を中心としながら、さらに近代の郷土作家ならびに郷土に縁のあった作家の作品を文学の諸ジャン
ル (小説、詩、短歌、俳句、川柳、評論、随筆、被爆者手記、児童文学、戯曲、映画シナリオ、漫画、
アニメーションなど)にわたって集められ、その保存、公開、研究がなされる「文学館」としてこの建物
が活用され ることを私たちは強く要請いたします。

 原爆の証人たちは次第に減り、人々の記憶はうすれてゆきますが、そうした記憶の消滅を防ぎ、時代と人
を 照らし出すものは文学であります。政治では汲み尽くせぬ可能性が文学にあるならば、そうした文学から
時代を越えて一つ一つの貴重な記録を蘇えらせることのできるのは、今を生き、将来を生きる一人一人の市
民です。広島の過去と現在をつなぎ、これまで の広島を築き上げた先人とこれからの広島をもり立てていく
若い世代とをつなげる場、歴史的に貴重な文学を忘却から守る一方で、文学を通じて市民が交流で
きる場、これから生まれてくる広島の文学を育て、人類の未来にメッセージを発信する場―の創造めざして、
旧日本銀行広島支店を「文学館」として活用することを重ねてここに要請いたします。



2001年1月26日  広島に文学館を!市民の会  代表 水島裕雅