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1. 小児肝癌と日本小児肝癌スタディグループについて

 小児肝癌は、小児の肝臓に発生するまれな悪性腫瘍(がん)です。その種類は大部分が肝芽腫と呼ばれる小児に特有な腫瘍で、一部に成人型肝癌が含まれます。日本では全国で年間30~40例の発生があります。1980年代までは手術による完全切除が唯一の治療手段でした。しかし、1990年代になり、抗癌剤を併用することで、従来、手術不可能であった腫瘍や、転移のある腫瘍も治癒する可能性が出てきました。また、手術後の腫瘍の再発率も減少しました。ただし、発生頻度の低い腫瘍を、全国の各施設が独自に治療を行っていたのでは、日本全体の長期的な治療成績やその問題点が分かりません。そこで、小児肝癌に対する治療法の改善を目指して、1991年に日本小児肝癌スタディグループ(JPLT)が全国規模で結成されました。日本の治療成績はアメリカ、ヨーロッパ各国と比べ、遜色のない成績をあげており、特に早期の腫瘍に対しては、欧米の1/2の量の抗癌剤で90%以上の生存率を得ています。


2. 日本小児肝癌スタディグループの目的

 日本小児肝癌スタディグループ(JPLT)は、小児肝癌に対するよりよい治療の開発と治療に役立つ研究を同時に行っていこうとしています。治癒が見込まれる早期の腫瘍に対しては、少しでも抗癌剤の使用を控え、治癒の難しい進行した腫瘍には最新の治療方法を提供したいと考えています。また、抗癌剤を広く使用するようになってから、腫瘍によっては、抗癌剤に対する反応性や再発の有無などに違いがあることも分かって来ました。小児肝癌は、他の小児がんと比べ、世界的に著しく研究が遅れています。日本小児肝癌スタディグループでは、同じ治療に基づいた各腫瘍の治療経過を分析するとともに、各腫瘍の性質を研究することで、腫瘍の性質に応じたより適切な治療方法を開発することを目指しています。現在は、国際的にヨーロッパを中心としたグループ(SIOPEL)やアメリカを中心としたグループ(COG)と連携して、同じ治療法を検討することで、より確かな治療法確立に向かって協働で研究を行っていくことを目指しています。


3. 日本小児肝癌スタディグループによる治療と登録

 日本小児肝癌スタディグループ(JPLT)による治療への参加はご自由です。担当医や主治医の先生にご相談ください。参加に同意していただきますと、腫瘍の広がりに応じて定められた治療が始まります。数ヶ月に及ぶ全体の治療計画を知ることも可能になります。 また、治療の開始の前にJPLT登録センター(広島大学自然科学研究支援開発センター)および研究事務局(広島大学自然科学研究支援開発センター)に登録が行われ、お子さまの名前はコード番号により匿名化されます。病気の情報や治療の経過、副作用の程度、治療終了後の再発や障害の有無などが、各施設から事務局に報告されますが、個人情報は、厳密に管理され、外部に漏出することがないようにコード番号でのみ連絡を行う仕組みとなっています。事務局では蓄積されたデータを集計し、治療方法の効果や問題点を分析していきます。また、各施設は、日本小児肝癌スタディグループ事務局に最新の治療成績や副作用情報を問い合わせることができます。切除した腫瘍の病理学的検査は、日本小児肝癌スタディグループ病理専門医による中央病理診断を受けることができます。


4. 予想される利益

 日本小児肝癌スタディグループによる治療へ参加することで得られる利益は、まず、全体の治療計画がはっきりと決められていて分かりやすいことにあります。また、スタディグループ病理専門医の診断を受けることができるほか、治療の難しい腫瘍に対しては、事務局を通して専門施設による特殊治療の相談や紹介も可能です。
 治療や研究に参加することで何事にも代え難い貴重な情報が得られ、将来、同じ病気に苦しむお子さまやご家族に恩恵を与える可能性があります。


5. 研究成果の公表

 研究の成果は、お子さまやその家族の氏名などが明らかにならないようにした上で、学会発表や学術雑誌およびデータベース上等で公に発表されることがあります。


6. 費用負担に関する事項

 日本小児肝癌スタディグループの組織の維持に必要な費用や、遺伝子解析研究に必要な費用は、日本小児肝癌スタディグループの参加施設の会費や、公的機関の研究に対する助成金から出され、お子さまの家族が負担することはありません。


7. 研究協力の同意と撤回の自由

 この研究への協力の同意は自由意思で決めてください。強制ではありませんし、同意しなくても、お子さまの不利益になるようなことはありません。一旦同意した場合でも、不利益を受けることなく、いつでも同意を取り消すことができ、その場合は採取した試料は、検査結果とともに廃棄され、診療記録などもそれ以降は研究目的に用いられることはありません。ただし、同意を取り消した時すでに研究結果が論文などで公表されていた場合などのように、遺伝子を調べた結果などを廃棄することができない場合があります。

(なお、この同意はお子さまが16歳になるまで有効であると考えています。お子さまが16歳になった時には改めて本人の同意が必要となります。この場合には、病名の告知の問題が出て参りますが、ご家族とも十分に検討の上、お子さまに病気に対する十分な理解があると思われる時は、お子さま本人の同意が得られるように努力いたします。)


8. 守秘義務と個人情報管理者

 お子さまの名前はコード番号により匿名化されますので、日本小児肝癌スタディグループの内部の会議であれ、また将来、研究の成果が公表される場合であれ、個人が特定されることはありません。個人情報管理者は、個人情報の保護と管理を堅くお約束いたします。また、日本小児肝癌スタディグループ研究施設が、お子さまから提供していただいた試料や検査結果を解析する時は、登録センターを経由してコード番号のみが移送されますので、研究者には個人名はわかり得ず、プライバシーは保護されます。また、日本小児肝癌スタディグループ病理専門医による診断を受ける時も、まったく同様に個人名は秘匿されます。 


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