P2P型ビデオストリーミング基盤の研究

 

 ビデオストリーミングサービスが各家庭でも幅広く利用されるようになってきました.20159月にはNetflixAmazonビデオの見放題サービスがそれぞれ開始されており,民放各社のビデオオンデマンドサービスも,それらと呼応するかのように次々に始まっています(20171月現在,Amazonプライムでは,月額325円で2万タイトル以上が見放題です).またYouTubeやニコ動などの動画共有サイトでは,素人が作成・投稿したコンテンツをいつでもどこでも気軽に楽しむことができます.

 

 ビデオ配信サービスの普及は,それを支えるネットワークの側にも大きな影響を与えています.2016年末の時点でインターネット上のトラフィックの数十パーセントがビデオ配信によって占められており,この傾向は,画質の向上や視聴者数の増大などに伴って今後ますます加速していくものと予想されています.そのような高品質のサービスを安定して提供するためには,(ホームネットワークなどのように)単純なサーバーをひとつ用意するのでは不十分です.実際,ビデオ配信サービスの多くではAkamaiAmazon CloudFrontなどのコンテンツ配信ネットワーク(CDN)が利用されています.ただしCDNから視聴者への配信そのものは,CDN上で最も視聴者側に配置されているエッジサーバーと呼ばれる高性能なサーバーによって(ある意味集中的に)なされており,そのため,今後視聴者数や配信負荷の増大によってシステム側に求められる能力がエッジサーバーの処理能力に近づくことによって,提供されるサービスの品質が大きく低下してしまう可能性は依然として残っています.

 

 私たちが研究しているピアツーピア(P2P)型のビデオストリーミングシステムは,そのようなエッジサーバーの処理能力の限界を,エッジサーバーからサービスを受けている通常のクライアントコンピュータ(ノード)たちの助けを借りることで打破しようというものです.仮に各ノードが受けているサービスの量を1,各ノードが他のノードに提供できるサービス量の上限を2としましょう(ここでは,サービス量はビデオのビットレートだと考えてください).ノードの助けを借りない場合は,エッジサーバーはすべてのノードに直接サービスを提供するだけの処理能力を持たなくてはなりません.しかしN台のノードが提供できるサービスの総量は2N(>N)ですから,ノードの助けがある場合は,エッジサーバーは,(究極的には)1台のノードにサービスを提供するだけの能力があればよいことになります.もちろん実際のストリーミングシステムでは,サービスを中継する回数をできるだけ低く抑える必要があるため,上の試算ほどの効果は見込めません.しかしたとえば転送回数を2回に制限したとしても,エッジサーバーの負担は,ノードの助けを借りない場合の1/7に減らせることがわかると思います(高さ2の完全二分木を考えましょう).

 

 そのようなP2P型のビデオストリーミングサービスは,実は皆さんの知らないところですでに実用化されていて,PPLiveCool-Streamingなどがその代表例としてあげられます.しかし今後その性能や利便性をさらに向上させていくためには,いくつもの課題を解決していく必要があります.本研究室で現在取り組んでいる具体的な課題は,例えば次のようなものです(いくつかの課題については研究室公開でデモをします):

 

P2Pビデオストリーミングの高性能化

 各参加ピアが帯域を拠出するよう促すためのインセンティブ機構や,帯域を有効活用するためのコーディング手法・配信手法などについて研究します(詳細については,こことかここを見てください)

 

WebRTCを用いたビデオ会議システム

 上級生がこれまでにつくった基本システムをベースにし,カメラアングルの自動切り替えや割り込み機能などを実現します [研究室公開でデモあり].詳細については,ここを見てください

 

説明: Macintosh HD:private:var:folders:4f:69nk0_m50rqdt6y5dkh13_cw0000gn:T:TemporaryItems:Video_conference.png

http://www.televideo.conference.org より引用したイメージ画像.

 

○ 攻撃耐性のあるビデオストリーミング手法の研究

 信頼できるピアにできるだけ公平に仕事を負担してもらうようにすることで,攻撃の影響を最小化することができます.詳細についてはここを見てください.

 

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