次世代型コミュニケーションツールの研究

 

 分散システム学研究室では,情報集積機能と即時性とを兼ね備えた次世代型のコミュニケーションツールを実用化するためのプロジェクトを進めています.本プロジェクトで開発しているシステムは,私たちが提案したP2P型ファイル共有手法をベースにしており,多数のユーザによる共有ファイルへの書込み情報を他のユーザに対してリアルタイムに伝播することができます(概念図を下に示します.この手法に関するもう少し詳しい説明はこちら).またこの手法は共有メモリモデルをベースにしているため,過去に行われた更新はすべてのユーザが容易に参照することができ,アーカイブとしての機能も備えています.加えて,特定のノードへの負荷の集中が起こりにくいP2P型のアーキテクチャを採用していることから,通常のサーバ型システムに比べて1桁以上高い規模拡張性が得られることが期待されます.

 

 

 

 2017年度の卒論テーマ案は以下の通りです.

 

P2P型共同編集システムの試作

 ネットワークを介したファイル共有は,多くのネットワークアプリケーションにおける共通基盤のひとつです.たとえば他の人がYouTube上にアップロードした動画をダウンロードしたり,Dropboxなどのオンラインストレージを各個人がバックアップとして利用したりする際などにファイル共有が使われています.そのような一般的な利用法に加えて,ファイル共有機能を使って「ユーザ間の密な連携」を実現しようという試みも数多くなされています.たとえばGoogleが提供しているオフィスソフトであるGoogle Docsでは,複数人が同時にファイルの編集・閲覧をおこなうことが可能です.ペイントソフトをオンライン化することで,複数のユーザが一枚の絵を並行して完成させることのできるアプリも開発されています[研究室公開でのデモあり].そのような共同編集アプリの設計では,性能や使いやすさなどに加えて,「ある人が行なったファイルの更新を他の人のディスプレイ上でどのように見せるか」なども重要な課題となります.このテーマでは,いくつかの具体的な共同編集アプリを想定し,その上で各ユーザが自然に連携できるような方式の検討・実装をおこないます.

 

P2Pシステムにおける最適戦略の機械学習

 P2P型ファイル共有システムのひとつにBitTorrentなどの並列ダウンロードシステムがあります.このシステムの目的は,OSのディストリビューションなどの大容量ファイルを安全かつ高速にダウンロードすることであり,ファイルを固定サイズのピースに分割し,参加ピアがそれまでに取得したピースの一部を他のピアにアップロードするように仕向けることで,システム全体で提供可能な総アップロード量を大幅に増やしています.BitTorrentではアップロードを促す仕組みとしてゲーム理論で知られているしっぺ返し戦略(tit for tat)などが使われていますが,それぞれのピアにとっての最適戦略が具体的に何であるのかについては,実はあまりよくわかっていません.そのような最適戦略を機械学習を使って獲得していこうというのがこのテーマの目的です.昨年囲碁の世界を揺るがしたAlphaGoがおこなっていたように「見込みがありそうな手を大量に学習させることで」新しい知見が得られると考えています.またシステム運営側にとっては,ここで得られる知見はフリーライダーの軽減・撲滅にも利用できるはずです.

 

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