ダブルバルーン内視鏡

小腸は通常の内視鏡で到達が難しく、わからないことが多いことから長らく「暗黒の臓器」と言われてきました。しかし、小腸にも他の臓器と同様に炎症や腫瘍などの病変が存在します。 近年普及してきたカプセル内視鏡とバルーン内視鏡は、そのような病変の診断や治療を可能とし、小腸分野の診療は飛躍的な進歩をとげてきました。
しかし、カプセル内視鏡は生検など組織検査ができない、狭窄があると出来ないなどの欠点があります。そこであらたな検査法として自治医科大学の山本先生らによってダブルバルーン内視鏡が考案されました。 その対象は小腸のみならず、通常の大腸内視鏡挿入困難例や胃術後再建症例でのERCPなど幅広く応用されております。

機器

当院ではFUJIFILM社製のダブルバルーン内視鏡を導入しています。先端にバルーンが装着できる内視鏡本体と、同じく先端にバルーンの付いたオーバーチューブから成ります。いずれのバルーンもコントローラーで操作しますが、圧が上がりすぎないように設定されています。バルーンを交互に拡張させることにより腸管を固定し、小腸挿入時の問題である過伸長を防ぎ、小腸を短縮しながら挿入します。

方法

ダブルバルーン内視鏡の挿入は経口的、経肛門的に行う方法があります。 どちらを選択するかは、症状、他検査の結果によって決定されます。いずれにしても1時間程度を要するため鎮静剤、鎮痛剤を必要に応じて投与して検査を行います。 また、深部小腸への挿入を補助する目的でX線透視下に行います。

前処置

A 通常の上部消化管内視鏡と同様に前日の夕食後より絶食。


B 通常の大腸内視鏡と同様に前日の夕食後より絶食、当日朝より下剤内服。

前投薬

ABともに1〜2時間かかる検査のため鎮静剤を用い十分に鎮静し、検査の苦痛を軽減します。

長所

専用の生検鉗子を用いて病理組織診断、専用の局注針を用いて止血術、専用のスネアを用いてポリープ切除を行うことができます。

応用

二つのバルーン、オーバーチューブを用いて腸管が伸びるのを防げるため、通常の大腸内視鏡での挿入困難症例、術後の腸管にも応用できます。

適応症例

原因不明の消化管出血
他の画像検査で認められる器質的異常(腫瘍・炎症性病変)
手術後症例の病態解明(Roux-en-Y吻合など)
慢性下痢、吸収不良症候群
通常の大腸内視鏡挿入困難例

ダブルバルーン内視鏡検査風景X線透視下で行います。 径肛門的アプローチによるダブルバルーン内視鏡挿入時のX線像。
小腸癌の一例です。生検を行うことでより正確な診断を行うことができます。
これは、血便を契機にして見つかったメッケル憩室の一例です。深部小腸への挿入だけでなく、内視鏡先端から造影剤を注入することで局所の小腸造影を行うことができます。
小腸内に生じるサイズの大きい毛細血管拡張はしばしば再発する出血が臨床的に問題となります。しかし焼灼処置を行うことで治療することができます。
空腸に生じた腺腫の一例です。小腸内に生じるポリープも内視鏡的に切除可能です。
また、小腸に炎症を生じる疾患では狭窄と通過傷害を来すことがあります。程度にもよりますが内視鏡的に狭窄部をバルーン拡張することが可能です。
胃や小腸の手術歴があり、複雑な再建をされた腸管でも、その内視鏡の特性を生かし目的の箇所まで到達することが可能です。特に術後再建腸管での胆管、膵管造影に応用されています。
腹部手術歴などがあり、腹腔内で大腸が癒着変形した症例はしばしば通常の大腸内視鏡では盲腸到達が困難です。しかしダブルバルーン内視鏡の特性を生かし盲腸まで挿入が可能となります。
PJP患者の過誤腫性ポリープに対するポリペクトミーの実際
a. 32歳,男性。空腸に管腔を占める径45mm大の有茎性ポリープを認める。 b. 同上のインジゴカルミン散布像。 c. 病変の基部にスネアを移動させる。 d. 病変の基部でスネアを絞扼し,凝固波電流でポリープを切除した。 e. 切除後潰瘍底。術中出血は認めなかった。 f. クリッピング後。本症例は後出血を認めなかった。 g. 回収ネットによる切除標本の回収。 h. 切除標本。 i. HEルーペ像。病理組織学的に過誤腫と診断され, 腺腫や腺癌は認めなかった。
空腸脂肪腫に対する内視鏡的切除
a. 69歳,男性。空腸に鉗子にて容易に変形する正色調〜やや白色調,亜有茎性の粘膜下腫瘍を認めた。 b. 超音波内視鏡検査。付着部の描出は困難であったが,粘膜下に類円形の高エコー腫瘤として描出され,脂肪腫に矛盾しない所見であった。 c. 病変の基部を近接し確認し,基部に少量のボスミン加生理食塩水を局注後に切除した。d. 切除後潰瘍底。 e. 切除後潰瘍底より出血を認めた。凝血塊を除去後にクリッピングを施行し,周囲にポリドカノールを局注した。 f. 止血後。本症例は後出血を認めなかった。g. 切除標本。h. HEルーペ像。病理組織学的に脂肪腫と診断した。
回腸腺腫に対するポリペクトミー
a. 71歳,男性。回腸に径7mm大の有茎性ポリープを認めた。 b. 同上のインジゴカルミン散布像。 c. 病変茎部の腸壁側にクリッピングを施行した。 d. スネアにて病変を切除した。 e. 追加クリップを施行し終了した。 f. HEルーペ像。病理組織学的に低異型度腺腫と診断した。

診療実績

ダブルバルーン内視鏡検査件数の年次推移