炎症性腸疾患

マウス腸炎モデルを用いた炎症性腸疾患新規治療法の開発

炎症性腸疾患の治療は現在タクロリムスや生物学的製剤など種々の免疫抑制作用を有する寛解導入療法が開発、使用され、臨床での使用機会が増加したことで、手術症例が減少し、長期に寛解維持可能な症例が増加しています。しかし実際は寛解導入薬がそのまま引き続き寛解維持薬として使用されるケースが多く、長期間の免疫抑制による感染症発症、発癌のリスク増加が、今後患者の高齢化に伴って問題となっています。腸管は本来炎症に対して自然治癒機構を有していますが、粘膜修復にはさまざまな抗炎症性サイトカイン、ケモカインや、成長因子といった免疫応答が関わっていることが報告されています。さらに腸管には制御性T細胞や制御性マクロファージが豊富に存在し、“過剰な免疫反応を抑制する”という免疫機構を有しています。寛解導入期と維持期では抗炎症を担う免疫機構が異なることが予想され、維持期ではむしろ免疫活性化という見地から治療がなされるべきではと考え、研究を行っています。



炎症性腸疾患治療薬の薬理遺伝学研究

人間の色々な体質は、それぞれの人が持っている遺伝子のわずかな違いに由来しています。この遺伝子の違いは、さまざまな病気の原因にもなります。ある遺伝子に病気を引き起こす強い変化があり、その変化が子、孫へと伝わっていく場合、病気が遺伝する可能性が出てきます。しかし、遺伝子が多少異なっていても、その多くは病気と直接には関わらず、背の高さ、顔の違いといった個性をもたらすにすぎません。炎症性腸疾患は、原因が不明で腸に炎症がおきる病気ですが、遺伝子の違いにより治療が効きやすかったり、効きにくかったり、あるいは副作用が出やすかったりする可能性があります。また、ある治療で症状が改善したのちに再燃しやすかったり、しにくかったりするのも遺伝子の違いに由来している可能性があります。我々は炎症性腸疾患の薬の効果や副作用に結びつく遺伝子を見つけ出そうとしています。そうした遺伝子が見つかれば、薬で治療する前に治療効果や副作用を予想でき、より適切な治療ができるようになる可能性があります。

参考文献

  1. Yoshioka K, Ueno Y, et al. Role of natural killer T cells in the mouse colitis-associated colon cancer model. Scand J Immunol. 75:16-26, 2012
  2. Hanaoka R, Ueno Y, et al The water-soluble extract from cultured medium of Ganoderma lucidum (Reishi) mycelia (Designated as MAK) ameliorates murine colitis induced by trinitrobenzene sulphonic acid. Scand J Immunol. 74:454-62, 2012