内視鏡診断関連

内視鏡診断学に関する研究

1)通常内視鏡形態診断学
 腫瘍においては、内視鏡的摘除適応基準が拡大されつつあり、従来の古典的診断学のみでは対応できなくなっています。新しい適応基準に即した新しい内視鏡診断学の構築を研究しています。

通常内視鏡観察によるsm浸潤実測値1000μmの診断
岡志郎, 田中信治, 他. 胃と腸 39: 1363-73, 2004

2)拡大内視鏡診断学
 腫瘍や,胃炎,炎症性腸疾患の色素拡大観察所見(pit pattern)の解析と臨床応用についての研究を行なっています。大腸腫瘍に関しては,pit patternの病理組織学的背景・分子病理学的背景の解析も行なっています。潰瘍性大腸炎に関しては,拡大観察所見の臨床的意義,治療による変化を中心に,免疫学的・分子病理学的背景との関連についても研究を行なっています。さらに,colitic cancer/dysplasiaの早期診断への応用も研究中です。

拡大内視鏡を用いて精査を行います 病変発見 インジゴカルミン散布 クリスタルバイオレット散布
大腸腫瘍のpit pattern分類と治療指針
Tanaka S, et al. Gastrointest Endosc 64: 604-13, 2006(改変)
V I 型pit patternの亜分類の客観的評価と各病理組織学的因子に関する臨床研究
Kanao H, Tanaka S, Oka S, et al. World J Gastroenterol 14: 211-7, 2008

潰瘍性大腸炎におけるcolitic cancer/dysplasiaと非腫瘍性病変との鑑別に、色素拡大観察による周囲の炎症粘膜との比較で残存pit密度が高くpitが不整な場合には、colitic cancer/dysplasiaの指標になる。

Nishiyama S, Oka S, Tanaka S, et al. Inflamm Bowel Dis 20: 508-13, 2014
潰瘍性大腸炎の拡大所見が組織所見(Matts分類)と関連し、病変の再燃予測に有用。
Kunihiro M, Tanaka S, et al. Inflamm Bowel Dis 10: 734-44, 2004(改)
胃前庭部の拡大観察が胃炎の状態やH. pylori除菌後の確認に有用なことを明らかにしました。
Kim S, Tanaka S, et al. Dig Liver Dis 36: 286-91, 2004
十二指腸腫瘍に対する色素拡大観察の臨床的意義についても現在検討中です。
Endocytoscopyは450倍の超拡大観察により、構造異型だけでなく細胞異型・核異型まで評価することができ、生体内で病理診断に極めて近い診断ができる次世代の内視鏡と位置付けられ、臨床応用が開始されています。
鴫田賢次郎、岡 志郎、田中信治、他. 広島医学 67巻1号18-22, 2014

3)超音波内視鏡診断学
 腫瘍や炎症性疾患に対する新しい応用の方法を研究しています。腫瘍では浸潤実測距離の術前診断を、炎症性腸疾患では病態把握に対する応用を試みています。化学(放射線)療法の効果判定も行なっています。FNAで得られた標本の分子病理学的解析も粘膜下腫瘍を中心に開始しています。また、SM癌の完全摘除生検目的の術前精査目的に関しても積極的に施行しています。

術前に拡大内視鏡検査+EUS施行群のうちEUS-M〜SM2例にVM+例は認めず、cT1癌に対する大腸ESD前のEUSは臨床的に有用である。
Ozawa S, Tanaka S, Oka S, et al. Int J Colorectal Dis 28: 1247-56, 2013
早期胃癌ESD術前のEUSにてEUS-M/SMの所見であれば段端陽性例はなく完全摘除が可能である。
Mouri R, Tanaka S, Oka S, et al. J Clin Gastroenterol 43; 318-22, 2009
小腸病変の質的診断にダブルバルーン下内視鏡下のEUSが臨床的に有用であることを明らかにしました。
(右:小腸GIST、左:小腸結核)
Fukumoto A, Tanaka S, et al. Gastrointest Endosc 65; 412-20, 2007
小腸狭窄性病変の狭窄評価に体外式超音波検査が有用であることを報告しました。特にType A/Bは狭窄の頻度が高いため、カプセル内視鏡検査は施行すべきではない。
Nakano M, Oka S, Tanaka S, et al. Scand J Gastroenterol 48; 1041-7, 2013

4)ダブルバルーン法による小腸内視鏡検査
 ダブルバルーン法による小腸内視鏡検査で、全小腸が内視鏡で観察可能になりbiopsyによる組織採取や内視鏡的治療も可能になっています。この手技を利用して、これまで解析できなかった小腸疾患の病態解明を目指しています。

小腸腫瘍に対する診断ストラテジー(案)を提案しております。
Fukumoto A, Tanaka S, et al. Scand J Gastroenterol 44:332-8, 2009
当院におけるDBEにて診断した小腸腫瘍性病変の内訳
当院における小腸腫瘍におけるDBEの検査動機
小腸濾胞性リンパ腫に対するDBEの有用性を明らかにしました。
Kodama M, Kitadai Y, Tanaka S, et al. Endoscopy 40: 343-6, 2008
スパイラル内視鏡は、米国のベンチャー企業であるスパイラス社が開発した小腸内視鏡です。 2007年にAkermanらによって初めて報告され、これまでに欧米を中心に10,000件以上の検査が行われています。 バルーン内視鏡と異なり、先端にらせん状の突起(空気で充満)が装着されたオーバーチューブと小腸用の内視鏡 (バルーン内視鏡時に使用するものと同じ)から構成されます。オーバーチューブのグリップ部を時計方向に回転させることで 小腸が短縮され、内視鏡が深部小腸に挿入される原理です。挿入経路としては、経口と経肛門の2つのアプローチ方法があります。
東京大学との共同研究でスパイラル内視鏡の臨床的有用性を明らかにしました。
Yamada A, Watabe H, Oka S, et al. Dig Endosc. 25:406-11, 2013

5)カプセル内視鏡による消化管診断学
 カプセル内視鏡の新たな応用方法についての研究を行っています。カプセル内視鏡は鎮痙剤や鎮静剤を必要とせず、腸液が貯溜したままの小腸内腔を蠕動によって進んでいくため、生理的な状態の内視鏡検査が行えます。この特長を生かして消化管の形態的および機能的な病態解明を行っています。

FICE-CEのうちFICE1、FICE2で病変の視認性を向上させることを明らかにしました。
Imagawa H, Oka S, Tanaka S, et al. Gastrointest Endosc 73: 299-306, 2011
FICE1・2でangioectasiaの拾い上げ診断能を向上させることを明らかにしました。将来的には自動解析機能などへの応用が期待されます。
Imagawa H, Oka S, Tanaka S, et al. Scand J Gastroenterol 46: 1133-7, 2011
Occult OGIBとOvert OGIBにおける小腸病変の頻度と出血源の内訳はほぼ同等である。
Watari I, Oka S, Tanaka S, et al. Gastroenterol Res Pract, 915463, 2013
代償性肝硬変患者に対する門脈圧亢進症性小腸炎の診断に対してカプセル内視鏡検査は有用である。
Aoyama T, Oka S, Tanaka S, et al. Dig Dis Sci 58: 1390-6, 2013
LDAによる小腸粘膜障害の実態を明らかにしました。
Watari I, Oka S, Tanaka S, et al. Digestion 89: 225-31, 2014
CEとDBEの診断能に関して、全小腸観察を施行例を用いてほぼ同等であることを明らかにしました。
Shishido T, Oka S, Tanaka S, et al. Hepatogastroenterology 59: 955-9, 2012

6)機能的消化管疾患の病態解明
 ダブルバルーン法による小腸内視鏡検査に体外式超音波検査・内圧検査などを併用して、器質的疾患のみならず、機能的消化管疾患の病態解明を行なう研究をスタートしています。


7)Narrow band imaging (NBI)の有用性に関する検討
 NBIは従来の内視鏡システムと異なり、光の生体への深達度を考慮し狭帯域化したRGBフィルタを用いて感度特性を短波長側にシフトさせた新しい電子内視鏡システムであり、粘膜表層の微細構造(pit pattern、毛細血管構築など)の変化を高感度で捉えることが可能である。
 NBI拡大観察による表面微細模様(surface pattern)ならびに腫瘍表面の微小血管構築に基づいた診断学が構築されつつあります。我々はSurface patternを最重視した分類(広島分類)を提唱しています。
 最近では拡大内視鏡が普及していない欧米でも使用可能なNBI分類として、 NBIによる非拡大のNBI International Colorectal Endoscopic (NICE) 分類が提唱されています。NICE分類は1)病変の色調(Color)、微小血管模様(Vessels)、表面模様(Surface pattern)の3項目を中心とした分類であり、Type1は過形成病変、Type2は腺腫〜粘膜内癌、Type3はSM深部浸潤癌の指標とされます。
 このNBIによる大腸腫瘍のpit pattern診断能、色調と病変表層の毛細血管性状について解析し、その臨床的有用性について検討・研究している。

NBIシステムの原理

Surface patternの実際

NBI拡大観察 広島分類 (Surface patternを最重視した分類)
我々は大腸病変に対するNBI拡大分類としてsurface patternとvascular patternを総合的に評価した広島分類を提唱しており、診断の際にはsurface patternを最重視しています。
type Aは過形成性病変の指標、type BとC1は腺腫〜SM微小浸潤癌の指標で内視鏡治療適応病変、type C3はSM高度浸潤癌の指標で外科的切除病変である。一方、type C2はSM高度浸潤癌の頻度が54.5%を占めており、NBI拡大観察のみで診断は困難である。
Kanao H, Tanaka S, Oka S, et al. Gastrointest Endosc. 69; 631-636, 2009
広島分類はintara-observer variabilityやintra-observer variabilityでKappa値が高く客観性の高い分類です。
Oba S, Tanaka S, Oka S, et al. Scand J Gastroenterol. 45; 1084-1092, 2010
NICE 分類
大腸腫瘍のcharacterizationを目的とした単純なType 1〜3の3つのCategory分類である。分類の基本となる所見は、(1) 病変の色調 (Color)、(2) 微小血管構築 (Vessels) 、(3) 表面模様 (Surface pattern) の3項目である。Type 1は過形成病変、Type 2はadenoma〜M癌、Type 3はSM深部浸潤癌の指標である。この分類は、国際共同研究組織Colon Tumor NBI Interest Group (CTNIG) :Tanaka S(日本)、Sano Y(日本)、Rex DK(米国)、Soetikno RM(米国)、Ponchon T(フランス)、Saunders BP(英国)で作成したNBIの基本分類で、現在世界中で診療や臨床研究に使用されている。
NICE分類は大腸病変の腫瘍・非腫瘍の鑑別診断においてExpert, Medical students, Fellowに関係なく高い正診率、感度、特異度でした。
Hewett DG, Kaltenbach T, Sano Y, Tanaka S, Saunders B, Ponchon T, Soetikno R, Rex DK. Validation of a simple classification system for endoscopic diagnosis of small colorectal polyps using narrow-band imaging. Gastroenterology 143; 599-607, 2012
NICE分類はType2とType3の鑑別診断に関しても、Expert, Medical students, Fellowに関係なく高い正診率、感度、特異度を有していました。
Hayashi N, Tanaka S, et al. Gastrointest Endosc 78; 625-632, 2013
現在、大腸病変に対するNBI拡大所見分類に関しては、NICE分類をベースに国内の多施設共同研究としてThe Japan NBI Expert Team (JNET)にて統一分類を策定中です。広島大学も中心的施設の一つとしてこの研究に参加しています。


8)BLIの有用性に関する検討
 BLIはキセノン光源に変わり2種類の波長の狭帯域光観察(BLI)用レーザーと白色光用レーザーにより構成されている。BLIにはBLIモードとBLI-brightモードの2つの観察モードがある。BLIモードはBLI用レーザー出力比率を強めて短波光成分を増やし、粘膜表層の微小血管のコントラストを高めている。一方、BLI-brightモードは白色光用レーザー出力比率をやや強めることで白色光成分を増やし、画像の明るさと血管コントラストの向上を両立している。このBLIによる胃腫瘍の微小血管構築像と表面微細構造の解析を行い、その臨床的有用性について研究を行っている。

胃癌のBLIによる内視鏡画像
Journal of Clinical Gastroenterology, in press

9)カテーテル型レーザ走査型共焦点顕微鏡の開発
 レーザー走査型共焦点顕微鏡(Laser Confocal Microscope: LCM)は通常のプレパラート作製の行程を経ずに組織像に近い像が得られることより、生体標本の病理診断に近いミクロのレベルの観察が可能となります。内視鏡による消化管疾患診断能の向上を目指し通常の内視鏡下で病理診断の行えるカテーテル型レーザー走査型共焦点顕微鏡の実用化に対する研究を行っています。

カテーテル型レーザ走査型共焦点顕微鏡の開発
Schema of the catheter-based reflectance-type laser-scanning confocal microscopy


新しい内視鏡診療機器開発に関する共同研究

1)硬度測定を目的とした内視鏡プローブシステムの開発
 工学研究科・複雑システム工学専攻の金子 真 教授との共同研究として、病変の硬度測定内視鏡プローブの開発研究を行なっています。
この研究は、平成16年度21世紀COEプログラム拠点形成計画事業に採択された「超速ハイパーヒューマン技術が開く新世界(21世紀産業革命に向けて)」(代表:工学部 金子 真 教授)の中で行なっています。
 金子 真 教授とのこの共同研究は、(1)Finalist for best conference paper award in 2003 IEEE International Conference on Robotics and Automation (ICRA 2003)「Touching stomach by air」、(2)2003年度日本コンピュータ外科学会講演論文最優秀賞「内視鏡用非接触硬さイメージャ」などの受賞を受けており注目されている研究です。

2)表面プラズモン共鳴バイオセンサー(SPR)による胃粘膜細胞機能測定技術の開発および内視鏡診断への臨床応用
 医歯薬学総合研究科皮膚科学の秀 道広 教授との共同研究です。表面プラズモン共鳴バイオセンサ(SPR)における無標識の物質の結合・解離測定システムを、細胞膜近傍でおこる細胞内情報伝達反応を検出するシステムとして応用し、種々の物質に対する生細胞の反応を無侵襲、かつリアルタイムで検出するシステムを開発しています。これを用いて、無処理あるいは薬剤処理した胃癌細胞の機能を組織生検することなしで診断する「optical biopsy」としての機能を確保し、最終的には、経内視鏡的鉗子型プローブの先端にマイクロ化した本システムを装着し、ルーチン内視鏡検査における生体内での臨床応用を目指しています。現在基礎検討を行なっているところです。

3)消化管内視鏡画像解析による客観的指標の構築
広島大学 工学研究科、ナノデバイス・バイオ融合科学研究所と共に、画像解析による消化管内視鏡の定量化に関しての共同研究を行っています。
現在開発されているNarrow Band Imaging (NBI)、 Blue LASER Imaging(BLI)拡大内視鏡画像などの画像強調観察による消化管腫瘍の内視鏡画像に対しコンピュータ画像解析を行い、病理組織診断を反映する定量的な数値を提示する事を目的としています。

4)消化管自家蛍光観察による機能内視鏡開発
 静岡大学 電子工学研究所・産業技術総合研究所と共に、消化管自家蛍光観察を可能とする機能内視鏡の開発を行っています。
低酸素イメージングを自家蛍光により行うためには、微弱な自家蛍光をとらえる特殊なイメージセンサーが必要になります。静岡大学 電子工学研究所で開発された高感度・低ノイズ・高ダイナミックCMOSイメージセンサーを用いて実臨床で用いる事のできる低酸素イメージング消化管内視鏡の開発の基礎研究を行っています。

5)3次元形状計測センサによる立体計測機能搭載内視鏡開発
 広島市立大学大学院・鹿児島大学大学院・産業技術総合研究所と共に立体計測を可能とする消化管内視鏡の開発を行っています。
現在、消化管内視鏡では距離を計測する際、感性や経験による計測、大きさが既知の対象を病変部に近づけ比較する事による計測、内視鏡の焦点調節機構を利用した計測など行われています。簡便かつ正確に病変の大きさや距離を測定することを可能とする事を目的として、内視鏡に搭載可能な能動ステレオ法による3次元形状計測センサの臨床応用に関する研究を行っています。

6)広角内視鏡の開発
 ひだ裏などの死角部の観察が容易となり病変の見落としを少なくすることが期待されています。

Uraoka T, Tanaka S, Matsumoto T, et al. Gastrointest Endosc 77: 480-3, 2013