治療内視鏡関連

内視鏡治療学に関する研究

1)消化管腫瘍の内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection; ESD)


 消化管腫瘍の粘膜切除に関して、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を積極的に行い、臨床成績を構築中です。手技に関する新たな工夫や一般内視鏡医への標準化対策も検討中です。従来のスネア法との比較に関しては、その臨床的有用性を科学的に前向きに検討していくべく、比較研究を構築中です。

  a) 咽頭・食道
中・下咽頭腫瘍の内視鏡的所見と病理組織学的所見の関連を検討し、咽頭腫瘍に対するESDの有用性について報告しました。
Kuwahara T, Hiyama T, Oka S, et al. Gastrointest Endosc 76: 1095-103, 2012
本邦でも増加傾向にあるBarrett食道癌に対するESDの有用性を報告しました。
Kagemoto k, Oka S, Tanaka S, et al. Gastrointest Endosc 2014 [Epub ahead of print]
食道扁平上皮癌の多発病変は単発病変に比べてまだら食道の合併が有意に多いことを証明しました。
Urabe Y, Hiyama T, Tanaka S, et al. Endoscopy 41: 304-9, 2009
食道扁平上皮癌に対して、従来法(EAM)と比べてESDが一括切除率が高く、局所再発率が低いことを証明しました。
Urabe Y, Hiyama T, Tanaka S, et al. J Gastroenterol Hepatol 26: 275-80, 2011
  b) 胃
胃ESDにおける後出血の危険因子について明らかにしました。
Higashiyama M, Oka S, Tanaka S, et al. Dig Endosc 23: 290-5. 2011
潰瘍(UL)合併早期胃癌に対するESDの治療成績について解析し報告しました。
Higashiyama M, Oka S, Tanaka S, et al. Gastric Cancer 16: 404-10, 2013
抗血小板薬低用量アスピリン継続下での胃ESDの安全性を報告しました。
Sanomura Y, Oka S, Tanaka S, et al. Gastric Cancer 17: 489-96, 2014
胃ESDにおける水平断端陽性の危険因子について明らかにしました。
Numata N, Oka S, Tanaka S, et al. Gastric Cancer 45: 1480-7, 2010
透析例を含む慢性腎不全患者に対する胃ESDの安全性について報告しました。
Numata N, Oka S, Tanaka S, et al. J Gastroenterol Hepatol 28: 1632-7, 2013
胃ESD後の局所遺残再発病変に対する再ESDの有用性。
Higashiyama M, Oka S, Tanaka S, et al. Gastrointest Endosc 77: 298-302, 2013
  c) 大腸
大腸ESD時における粘膜下層線維化の程度を分類し、高度線維化例では一括切除率が低く穿孔率が高い。
Matsumoto A, Tanaka S, Oba S, et al. Scand J Gastroenterol 45: 1329-37, 2010
径20mm以上のLSTに対する内視鏡治療法別の局所遺残再発率
Terasaki M, Tanaka S, Oka S, et al. J Gastroenterol Hepatol 27: 734-40, 2012
大腸ESDにおいて、内視鏡操作性と高度線維化(F2)が不完全切除および穿孔のリスク因子である。
Hayashi N, Tanaka S, Oka S, et al. Gastrointest Endosc 79: 427-35, 2014
歯状線に接する直腸腫瘍に対するESDの有用性
Nakadoi K, Tanaka S, Oka S, et al. Gastrointest Endosc 76: 444-50, 2012
粘膜筋板の状態を加味することで根治判定基準外大腸T1(SM)癌のうちリンパ節転移陰性例を絞り込める可能性がある。
Nakadoi K, Oka S, Tanaka S, et al. Surg Endosc 28: 1269-76, 2014
大腸T1(SM)癌で内視鏡的摘除後のリスク因子がSM浸潤実測値(1000μm以深)のみで、他のリスク因子がなければリンパ節転移率は極めて低いことを明らかにした(全体で1.2%)。
Nakadoi K, Tanaka S, Oka S, et al. J Gastroenterol Hepatol 27: 1057-62, 2012

2)食道表在癌(m3~)の内科的治療の適応拡大
 放射線化学療法を併用した内視鏡切除の有用性を症例を重ねて研究しています。

3)内視鏡的切除した消化管腫瘍の根治判定基準の拡大
 内視鏡切除で局所根治した転移のない癌は、外科的手術が不要です。不必要な外科手術を減らし、患者によいQOLを得てもらうため、転移のない癌の条件を病理組織学的・分子病理学的に解析し、内視鏡治療根治度判定基準に応用する研究を行なっています。消化管腫瘍の悪性度は浸潤先進部が規定しているため、生検標本では正しい評価が得られません。我々は内視鏡切除標本を用いて、組織構築を考慮して分析できる手法である「免疫組織化学、In Situ Hybridazation,Microdissection法によるPCR法など」を中心に用いています。

HE標本による大腸SM(T1)癌根治判定基準適応外の病変に対しても免疫染色による各種分子病理学的マーカーの発現を浸潤先進部で評価することで、リンパ節転移の予測診断がより確実となり、内視鏡的切除のみで根治できる大腸SM癌の条件がさらに拡大できる可能性がある。
Kaneko I, Tanaka S, Oka S, et al. World J Gastroenterol 13: 3829-35, 2007
胃SM癌に対するESDの臨床的妥当性について長期予後から解析しました。
Sanomura Y, Oka S, Tanaka S, et al. Gastric Cancer 15: 97-105, 2012
胃SM癌のリンパ節転移危険因子を明らかにし、胃SM癌に対するESD適応拡大の可能性を報告しました。
Sanomura Y, Oka S, Tanaka S, et al. Scand J Gastroenterol 45: 1480-1487, 2010
未分化型早期胃癌に対するESDとEMRの治療成績の比較と予後からみたESD適応拡大の可能性を報告しました。
Oka S, Tanaka S, et al. Surg Endosc 28: 639-647, 2014

4)内視鏡切除により局所遺残した消化管腫瘍の病態解明
 内視鏡切除で遺残した腫瘍は、通常の腫瘍よりも発育速度などの生物学的態度が切除前の腫瘍とは異なることが明らかになっています。この病態解明のために、動物実験やヒトの材料を用いた分子病理学的研究を行なっています。この研究成果は、局所遺残腫瘍の取扱いや転移リスクの診断への応用が期待されます。

内視鏡的切除後局所遺残再発大腸癌の増殖動態と分子病理学的特徴について明らかにしました。
Kunihiro M, Tanaka S, et al. Dis Colon Rectum 43: 1107-15, 2000