消化管生理学

人間が食物を外界から取り込むには、消化と吸収が必要です。
食物は口腔内で咀嚼されて飲み込める大きさになると嚥下されます。嚥下に伴い食道には蠕動運動が生じ、また食道胃接合部では嚥下に伴い弛緩が生じます。胃の中に食物が入ると、反射的に胃液分泌と胃の受け入れ弛緩を生じた後に蠕動運動が起こります(図1)。胃液の主成分は塩酸ですがその他無機物や消化酵素などの無機物も含まれます。また、食事によっておこる胃液分泌は脳相、胃相、腸相の3つの相に区別されており、その調節には神経性因子とヒスタミンなど液性因子が関わっています。胃の蠕動運動は胃体上部から始まり、3回/1分のリズムですが(図2)、近年アウエルバッハ神経叢の神経に接するc-Kit 蛋白質を持つ細胞(カハール介在細胞)が消化管運動のペースメーカー的役割を果たしている事がわかり注目されています。また胃の蠕動運動は平滑筋自体の性質や粘膜下層に存在するマイスナー神経叢やアウエルバッハ神経叢などの内在神経により調節され、さらに自律神経などの外来神経やホルモンもこれに関与しています。これらにより粥状になった食物が少量ずつ十二指腸に食物が送られると、十二指腸粘膜から消化管ホルモンが分泌されて膵液や胆汁が分泌されます。以上の経過により食物は吸収可能な大きさまで分解されます。
小腸粘膜はその解剖学的特徴により物質吸収に非常に適しており、吸収の大部分は小腸で行われます。小腸の運動は分節運動、振子運動、蠕動運動よりなり9回/1分〜12回/1分のリズムで動きます。またその調節には腸内反射や小腸小腸反射、腸外反射が関与しています。
残渣は大便として排泄されます。大腸の運動も副交感神経や交感神経により調節されていますが、排便反射も大きく関与しています。
以上の様に、消化管は食物を非常に合理的な機構で消化、吸収しています。従ってこの中の機構がうまく作動しなくなると様々な症状が出現します(図3)。また、この中でも特に、消化管運動はストレスとの関連(脳ー腸相関)から最近注目されており、過敏性腸症候群など脳ー腸相関から見た病態の研究も盛んに行われています。

図1
図2