江坂 宗春教授に聞きました!
 
人間にとっても大切なビタミンCについて植物を対象に独自の研究が続けられている。その成果はいずれ食糧問題や環境問題の解決に大きな一石を投じるだろう。そこには、人類の未来を拓くという壮大なロマンがある。
 
植物のビタミンCの生合成の機構やビタミンCの生理機能を明らかにする研究。
 
  江坂先生は植物の遺伝子やタンパク質、酵素など、分子・遺伝子・細胞レベルでの研究を専門としている。「植物は、食料という意味で言うと、栄養価が高く、安全・安心な食料源です。人間は植物を食料として栄養を摂取していますから、植物を研究することは、人間の食料問題に直結しているんです」と先生は語る。

そして、先生が続けている幅広い研究の中でも、特に力を入れているのが「ビタミンCを多く含む植物の研究」であるという。「ビタミンCというのは、私たち人間にとって重要な働きを持っています。老化防止に役立ったり、ストレスによって増えたりする体内の活性酸素を取り除くというような働きもしてくれるんですね。しかも、現代のようなストレス社会では、どんどん体内からビタミンCが失われていくので、積極的に摂る必要があります」。
 
その一方で、植物にとってもビタミンCは大変重要であると先生は言う。「植物はいったん根を下ろすと一生動けないので、非常にストレスを受けるんです。光や紫外線、寒さといった環境ストレスですね。これらに耐えられないと生きられないんですよ」。

これまでの研究によって、植物が生きていくためにビタミンCを利用しているということが分かるなど、ビタミンCは植物にとっても大変に重要な役割を持つものであることが解明されているそうだ。ところが、「植物のビタミンCというものがどういうものなのか、実は分かっているようでまだよく分かっていないんですよ」と江坂先生。

そのため、まずはビタミンCが生合成する機構やビタミンCの生理機能を解明するという基礎的な研究を応用研究とともに行っているそうだ。
 
 
目標はビタミンCを増やすこと。いずれは20~30倍に。さらにはその応用も。
 
  先生の研究室では、ビタミンCを豊富に含むことで知られる南米原産の果物・アセロラについて、ある企業と連携しながら、詳しい研究を長年続けている。アセロラはビタミンCの含有量がレモンの30~40倍と大変多い。

「アセロラはどうしてそんなにビタミンCを作れるのかを研究していましてね。少しずつ分かってきているところです」と先生。この謎が解明できれば、その性質を遺伝子導入によって他の植物に付与して、ビタミンCたっぷりの植物を作り出すことができるのだという。

こうした植物のビタミンCを増やす研究や、特にアセロラのビタミンCについての研究は他にあまり例がなく、江坂先生独自の研究というから驚きだ。
 
「他でほとんどやっていないものですから、私のところで基礎的な研究をしながら、ビタミンCを増やすという応用面にも取り組んでいる訳なんです。現在は2~3倍までは増やすことに成功していますが、これくらいだと栽培法によってできなくもないレベル。目標としては20~30倍くらいをめざしています」。

この研究の醍醐味はどんなところにあるのだろうか。
先生は「いずれは地球レベルで貢献できることでしょうか」と回答。

「植物はCO2を吸ってくれて、人類や地球にとって大変ありがたい存在です。その生理機能を明らかにすることは、私たちが抱える環境問題や食糧問題解決の手がかりになるはず。それが実現できれば、まさしく地球レベルで役立ててもらえる訳ですから」と笑う。

「もちろん、達成するまでにはいろんな課題が次々と、研究するほどに出てきますからね。じっくり腰をすえて、あきらめずにやる研究だと考えています」。
 
 
ビタミンCは夢を持ちながら研究するのが大事。苦労した分、達成感も大きいはず。
 


  「人間を研究する医学を始め、動物の研究者はたくさんいるんですが、植物の研究者はあまりいないんですよ」と江坂先生。

研究者人口が少ないため、ユニークな研究ができるとも。「私自身、小さい時から植物を育てたりするのが好きでした。植物を育てたり、植物に触れながら研究ができるというのは、自分自身の心にも大変いいんですよ」。さらには、「最終的に楽しくなる、というのが研究だと私は思っています」と先生は言う。

植物相手の研究は、長いスパンで取り組むため、時々あきらめる人も出てくるそうだが、苦労や失敗を乗り越えた先には、大きな喜びが待っているとのこと。

「ビタミンCを多く含む植物は、病害や悪条件の環境にも強いため、生産量も上がり、栄養価も高い。それがうまく作り出せれば、人間の健康な食生活にも大いに役立つことになります」。

つまり、先生の研究は、『豊かな人間生活を築くための研究』に他ならない。いずれはその成果が我々の食生活を変えていく日がやってくることだろう。「そのためにも、共に研究を進めていく若い力に期待しています」。
先生は言葉に力を込めた。
 
江坂 宗春 教授
エサカ ムネハル
国立大学法人 広島大学大学院 酵素化学研究室 教授

1981年12月16日~1989年9月30日 広島大学生物生産学部助手
1989年10月1日~2001年3月31日 広島大学生物生産学部助教授
2001年4月1日~ 広島大学生物生産学部教授
2002年4月1日~ 広島大学生物圏科学研究科教授
2006年4月1日~2007年5月20日 広島大学学長補佐(教務担当)
2008年4月1日~2012年3月31日 広島大学大学院生物圏科学研究科長・生物生産学部長
2013年4月1日~ 広島大学副学長(学生支援担当)

2013年5月15日掲載

 

人間と自然の調和的共存への挑戦