吉村 幸則教授に聞きました!
 
ニワトリの肉や卵は大変優秀な食資源のひとつ。しかし、それらを育てる過程には細菌汚染をはじめとした、多くの危険が潜んでいる。そうした問題を解決へと導くために鳥類の免疫機能や生殖機能の解明に挑む。
 
中心となるのは、ニワトリの卵の細菌汚染を抑制する免疫機能に関する研究。
 
  広島大学では古くからニワトリを使った研究が盛んであった。吉村先生もその流れをくむ研究者のひとりだ。

「私は特に、卵管や卵巣が微生物に感染しないメカニズムの解明に取り組んでいます。こうした生殖器に備わっている免疫機構を明らかにして、生体防御機能を高めることで、健康なニワトリの卵ができれば、食材として安全な卵になり、ヒトの健康にも役立ちます」と吉村先生。

そうした感染を抗体や白血球で防ぐという研究は昔からよくされてきたが、先生の研究はそれをさらに発展させたものだ。
 
「これまでに、抗菌ペプチドという、菌を殺すような成分がニワトリでも働くということが確認されているんです。しかし、生殖器でこのペプチド成分がどうやってできるのか、といったあたりはまだよく分かっていない。その解明を目指しています」。

抗菌ペプチドは卵巣でも卵管でも発現し、こういった卵ができる場で働くとともに、卵の中にも組み込まれるというところまでは確認されているとのこと。

「おそらく卵の中でも、菌が入ってこようとするのをやっつけてくれるのではないかと考えていますが、まだそのエビデンス(証拠)は得られていません。これからさらに研究を進めていきます」と先生は語る。
 
 
生殖器官における抗菌ペプチドの役割研究では世界トップクラスのひとつ。
 
  こうした卵管や卵巣における抗菌ペプチドの働きについての研究は、世界でもフランス等のヨーロッパの2チームと、アメリカのチーム、そして吉村先生のところなどがリードしており、互いに情報交換をしながら進められているそうだ。

果たして、これらの研究の成果はどのように生かされるのだろうか。

「1つの抗菌ペプチドは何種類かの菌に対して働きますし、抗菌ペプチドには何種類もありますから、抗菌ペプチドを作る力を高めてやれば、いろんな菌をやっつけてくれる。特定のターゲットに効くワクチンとともに、幅広く作用してくれる抗菌ペプチドの作用で感染を防ぐことが期待できます」と吉村先生。
 
サルモネラ菌などの侵入を防ぐため、世界各地の養鶏業者は厳重な管理体制をとっている。抗菌ペプチドがうまく働くようになれば、ワクチンに加えて、より多くの菌への対策が講じられることになるという訳だ。
では、抗菌ペプチドを作る力を高めるにはどうしたらよいか。

実はまだその全容の解明には至っていないと先生は言う。

「乳酸菌などの有用菌のプロバイオティクス(生菌剤)で抗菌ペプチドの産生を高められないかという研究を少し前に始めたところです。胃や腸などの消化管でも抗菌ペプチドができるので、その機能を生菌剤で高められるかというのをまず調べていて、将来的には、ニワトリの身体のいろいろな場所で、そういったことができないかと考えています」。
 
 
特徴的なのは、観察するモノの幅広さ。たくさんの共同作業から得るものも多い。
 

  このほかにも先生は、ニワトリの生殖に関する研究にも明るい。
ここで、ニワトリの卵ができる過程をおさらいしておこう。

卵巣で卵黄が、卵管で卵白や卵殻膜、卵殻が形成される。卵巣から排卵されたすぐ後の卵黄に精子が入り込むと受精が起こる。受精卵はこの卵黄に卵白や卵殻膜が形成されたものである。

「トリの精子は卵管の中で2~3週間生きるんです。人間の場合は1日ももたない。トリの精子はどうやって長生きできるのか、ということも研究しています。トリの生殖機能にも解明すべきことがたくさんあります」。

吉村先生がこうした道に進まれたのは、研究室で指導を受けた教授の刺激が引き金になったそうだ。おもしろさはどんなところにあるのだろうか。

「食料を生産するという大事な課題を、学生のみなさん、留学生、国内外の研究者の方と協調して研究できること。そして、観察が遺伝子レベルだけでなく、顕微鏡で細胞や組織を見る、動物を飼育して肉眼で見る、というように大変幅広いことが特色でしょうか」と吉村先生。

また、学生や院生に対しては、「私のところは、ニワトリの飼育など共同作業が多いんですが、そうした中で人のつながりを大事にしながらモノを考えていくということをしっかり身につけて欲しい」と期待を込める。
がんばりやさんが集う研究室からは、優秀な研究者も数多く輩出されているそうだ。
 
吉村 幸則 教授
ヨシムラ ユキノリ
生物資源科学専攻 家畜生体機構学研究室 教授

1983年6月1日~1991年3月31日 広島大学 生物生産学部 助手
1991年4月1日~1994年5月31日 広島大学 生物生産学部 助教授
1994年6月1日~1999年3月31日 広島大学 大学院国際協力研究科 教授
1999年4月1日~2002年3月31日 広島大学 生物生産学部 教授
2002年4月1日~ 広島大学大学院 生物圏科学研究科 教授

2014年6月16日掲載

 

人間と自然の調和的共存への挑戦