児童・生徒のワーキングメモリと学習支援

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「ワーキングメモリ」とは

 ワーキングメモリ (working memory:作業記憶,作動記憶) とは,短い時間に心の中で情報を保持し,同時に処理する能力のことを指します。会話や読み書き,計算などの基礎となる,私たちの日常生活や学習を支える重要な能力です。ワーキングメモリのメカニズムについては,これまで様々なモデルが提案されてきましたが,最も代表的なものとしてBaddeley & Hitch (1974) のモデルが挙げられます。このモデルでは,ワーキングメモリは,言語的短期記憶 (音韻ループ),視空間的短期記憶 (視空間スケッチパッド),中央実行系の3つのコンポーネントから構成されるシステムとして捉えられています (図1)。言語的短期記憶は音声で表現される情報 (数,単語,文章など) を保持し,視空間的短期記憶は視空間情報 (イメージ,絵,位置情報など)を保持します。そして,中央実行系は,注意の制御や,処理資源の配分といった高次の認知活動を司ります。言語的短期記憶と中央実行系の機能を合わせて,言語性ワーキングメモリと呼び,視空間的短期記憶と中央実行系の機能を合わせて,視空間性ワーキングメモリと呼びます。

「ワーキングメモリ」とは

 ワーキングメモリは,思考と行動の制御に関わる実行機能(executive functions)の一つであると考えられています。
実行機能は,思考と行動の制御を行うプロセスであり,前頭葉の働きと関連することが脳科学研究から分かっています。
実行機能には,抑制(inhibition),更新(updating),シフト(shifting)の三つの働きがあるとされていますが(Miyake et al., 2000),その中で,更新の働きがワーキングメモリーであるとされています。そして,これら3つの働きの中で,更新(ワーキングメモリー)が知能(流動性知能・結晶性知能)に影響します(Friedman et al., 2006)。

 ワーキングメモリは,国語,算数(数学),理科などの学習と密接に関連していること,そして,発達障害のある子どもの多くがワーキングメモリに問題を抱えていることが明らかになっています(Alloway, 2009; Gathercole & Alloway, 2008)。

文献

  • Alloway,T. P. (2009). Improving working memory: Sage Publication1.(アロウェイT. P. 湯澤美紀・湯澤正通(訳)(2011). ワーキングメモリと発達障害:教師のための実践ガイド2 京都:北大路書房)
  • Baddeley A. D., & Hitch, G. J. (1974). Working memory. In G. Bower (Ed.) Psychology of learning and mo tivation Vol. 8. New York: Academic Press. pp. 47-90.
  • Friedman, N. P., Miyake, A., Corley, R. P., Young, S. E., DeFries, J. C., & Hewitt, J. K. (2006). Not all executive functions are related to intelligence. Psychological Science, 17, 172-179.
  • Gathercole, S. E., & Alloway, T. P. (2008). Working memory and learning:A practical guide for teacher s. London:Sage Publications. (ギャザコールS. E. アロウェイT. P. 湯澤正通・湯澤美紀 (訳) (2009). ワーキングメモリと学習指導:教師のための実践ガイド 京都:北大路書房)
  • Miyake, A., Friedman, N. P., Emerson, M. J., Witzki, A. H. & Howerter, A. (2000). The unity and diversity of executive functions and their contributions to complex "frontal lobe" task: A latent variable analysis. Cognitive Psychology, 41, 49-100.
  • 湯澤美紀 (2011). ワーキングメモリと発達障害―支援の可能性を探る― 心理学評論, 54, 76-94
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