これまでの活動(2010年度)

2010年度HINDAS第4回研究集会

研究ユニット3(「地理情報システム(GIS)による空間情報の基礎研究」)主催


報 告

テーマ:「現代インド地域研究における空間情報の利活用―ArcGISとGoogle Earthを用いて―」
日時:2010年8月23日(月)13:00-17:00
場所:広島大学大学院文学研究科 1階 B153講義室(東広島キャンパス)



第1報告者:鍬塚賢太郎(琉球大学法文学部)
タイトル:現代インド空間情報の展開にむけて―保存から利活用可能な情報へ―

<発表内容>
 現代インド研究を進めるなかで構築していく空間情報システムの方向性について,その利活用を念頭に置きながら報告した。その際に,取り組むべき課題を4つの段階,すなわち1)情報通信技術,2)空間情報,
3)利活用,4)公開,に切り分け,特に空間情報と利活用に焦点を絞り述べた。
 紙地図のデジタル化は,保存という観点から徐々に進められてきている。しかしながら,それを有効かつ容易なかたちで利活用していくためには,デジタル化されたデータをGISソフトウエア等で操作・利用可能な情報に変換していく作業が必要である。というのも,紙地図をデジタル化するだけでは,そこに記載された情報と,例えば衛星データや国勢調査といったデータとを,緯度・経度に基づいて重ね合わせることが容易でないからである。インドにかかわる外邦図などの貴重な紙地図を整理する際,そのワークフローのなかに緯度・経度情報を付加する空間参照の手順を予め計画しておく必要があり,そのためには紙地図がどのように作成されたのかといった点を踏まえる必要がある。つまり,利活用にあたっては,紙地図をデジタル形式で保存するだけでなく,空間参照を行った形式で保存することが求められる。その上で,専門的なGISソフトウエアの操作に習熟していなくても,当該情報へ容易にアクセスできる環境の整備が望まれる。 (鍬塚賢太郎)





第2報告者: 宇根義己(広島大学現代インド研究センター)・鍬塚賢太郎(琉球大学法文学部)
タイトル:広島大学における外邦図の所蔵状況とGoogle Earthを用いた利活用

<発表内容>

 第1報告に続いて,紙地図の保存から利用に向けた仕組みの構築について,Google Earthを援用する方法を提案した。現時点において,デジタル化された紙地図については研究機関等によってデジタル・アーカイブとして公開されはじめている。しかしながら,その多くはデジタル画像をそのまま公開する段階に留まっており,緯度・経度などの空間情報を持ち,かつGISソフトウエア等を用いて現代の地図や衛星写真との重ね合わせがスムーズに行える状態,すなわち空間情報化された状態で公開されているわけではない。そこで本報告は,まず宇根が広島大学の所蔵する外邦図の系譜及び所蔵状況について説明し,次に鍬塚が空間情報化する際の課題を簡潔にまとめるとともに,外邦図をGoogle Earthを用いて利活用可能な形で公開する仕組みについて提案した。最後に,Google Earthを用いて地図に記載された情報を抽出する方法やその活用法を紹介した。
(鍬塚賢太郎・宇根義己)





第3報告:宇根義己
GISによるインド小地域単位データの空間分析とGoogle Earthの活用
―ウッタラカンド州の2001年センサスを事例に―


<発表内容>
 本報告は,GIS(地理情報システム)によるインド・センサスデータを用いた小地域単位の分析について論じるとともに,空間情報の利活用という観点から,GISデータをGoogle Earth(以下,GE)に組み込む方法とその応用可能性を示した。
 インドを対象としたGISによる空間分析研究では,州(state)や県(district)単位での分析が圧倒的に多く,郡(tehsil)や村(village)単位のものは少ない。そこで本報告は,ウッタラカンド州および同州ナイニタル県ナイニタル郡ビムタール地区を対象に,2001年センサスを利用して人口・世帯数データ,社会・教育関連データ,就業関連データについて郡,村単位での分析を行った。小地域単位での分析によって,郡,村間の差異がより詳細に浮かび上がり,当該地域の地域的特性の一端を把握することができた。
 続いて,分析で用いた郡単位の女性識字率のデータをGISソフトウエアからGEへ変換する方法を説明した。利活用の点からは,GISデータをGEで表示し,データへのアクセシビリティを向上する方法(GISデータの利活用)と,GE上の衛星写真を利用してGISデータをより高い精度に磨く方法(GEの利活用)が考えられることを示した。(宇根義己)

発表PPTダウンロードはこちら(pdf形式)→ 

ワークショップ:ArcGISとGoogle Earthの連携方法(鍬塚,宇根)
<内容>
 本研究集会の最後にワークショップを開催し,鍬塚と宇根が報告で紹介した作業の一部を実際に参加者がPCを操作しながら体験した。まず,GISの専用ソフトArcGISで作成した緯度・経度などの情報をもつデータ(SHPファイル)を,操作が容易なGoogle Earthで表示可能なデータ(KMLファイル)に変換する方法について体験した。次に,その逆の過程,つまりGoogle Earthで作成したデータをArcGISで利用可能なファイルに変換する方法について体験した。前者では,ArcGISで作成したウッタラカンド州Tahsil別女性識字率の地図をGoogle Earthで表示する作業に取り組んだ。後者では,Google Earth上で地形図をベースマップにデリー周辺の郵便局分布図を作成し,それをArcGISで分析できるようにデータを変換した。高度な分析が可能なArcGISと入手や操作も容易なGoogle Earthとの間でデータを双方向にやりとりすることは,データの作成や共有といった面において利便性と汎用性を高める。この手法は,空間情報の「利活用」と「公開」という段階において有用な手段の一つとなると考える。(鍬塚賢太郎・宇根義己)




<配布資料PDFのダウンロード>
ArcGISからGoogle Earthへ(宇根)

Google EarthからArcGISへ(鍬塚)


<全体を通じての討論内容・座長所見>
 地域研究において統計情報と地図は,地域を概観するために,あるいは地域を分析するためになど様々な用途において重要な役割をもっている。近年の地域データのデジタル化はGIS(地理情報システム)をはじめとして,地域研究の底知れない発展の可能性を導き出している。本日の2つの発表とワークショップは,これまでアナログ地図データに依存していた地域研究にとって画期的な手法を提示するものであった。従来の発展途上国研究において,国勢調査などの地域統計の利用とフィールドワーク時の地図利用,研究を論文化する際の地図化は最大のネックとなっていたが,本日の発表はいずれもこれまでの途上国研究の「障壁」を取り除くものであった。さらに,外邦図やGoogle Earthの活用は現状の把握や分析だけではなく,地域変化を解明する手段としても非常に重要な手法を提示していた。
 また,本日の研究会では実際にArcGISを使ってGISの講習を行なったが,これまで受け身的な地域情報分析結果を知るだけではなく,実体験として地域分析ができたことは空間情報の利用と活用の裾野を広げるものとして非常に貴重な機会であったと思われる。
 ただ、空間情報の利用は単に地域分析のツールにとどまるのではなく,空間情報の価値を十分に生かすためにはどのように空間情報研究として展開するかが課題である。また,地図や統計データの共有化・公開についても新たな課題として浮かんできている。(由井義通)

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