2012年度HINDAS第3回研究集会 報告

2012年度HINDAS第3回研究集会
日時:2012年10月27日(土)14:00-17:00
場所:広島大学大学院教育学研究科K217号室


<報告1>
藤森 梓(大阪市立大学)
経済自由化期のインド・アパレル産業の諸相―アパレル産業クラスターの構造変化に関する実証分析―

 本報告では,グローバル化が進むインドのアパレル産業の現状についての考察を行った。はじめに,世界的にアパレル産業において近年,市場競争が激化する中で,途上国の市場シェアが大きく拡大している。その一方で,世界的な繊維・アパレル大国であるインドの市場シェアには大きな伸びが見られない。こうした状況を受けて,インドにおけるアパレル産業政策は2000年代に入り,輸出志向・国際競争力強化を重視した政策への転換が行われた。しかしながら,インドのアパレル産業の現状に目を向けてみると,国内市場志向が強く,必ずしも輸出志向が強いとは言えない。本報告では,こうしたインドのアパレル産業の現状について,「小規模化」と「クラスター化」というキーワードをもとに検証を行った。インドのアパレル産業は,比較的規模の小さい事業所が集積した産業クラスターによって生産の大部分が担われている。こうした産業クラスターは,大きく輸出志向の強いクラスターと国内志向の強いクラスターの2種類に分類することができる。これらの中で,輸出志向のクラスターについては,海外との競争激化や国際市場での需要の不安定さなどから,いくつかの不安材料を抱えている。その一方で,国内市場向けの生産を行っている事業所・クラスターは,国内の旺盛な需要によって支えられ,比較的安定した生産活動を行っている。このように,2000年代以降におけるインドのアパレル産業は,政府の示す産業政策とは異なり,国内志向の発展を遂げていると言える。 (藤森梓)


<報告2>
土屋 純(宮城学院女子大学)
デリー首都圏(NCR)におけるショッピングセンターの発展と外資系小売業の参入

 本報告は,デリー首都圏(NCR)を事例地域として,①ショッピングモールの立地展開について,②外資系小売業の参入状況について,2点について検討するものである。デリー首都圏では,1990年代後半よりショッピングセンターの立地が始まり,2000年代前半になると郊外に位置するグルガオンなど,新興住宅地を中心として中小規模のセンターが開発された。2000年代後半になると,ニューデリー市の南部に位置するサケート(Saket)地区などで大規模な開発が始まり,複数のショッピングセンターが集積する地域が形成されるとともに,グルガオンのAmbience Mallなど店舗面積10万㎡を超える大規模ショッピングセンターも建設されるようになっている。こうした大規模ショッピングセンターのテナントを中心に,外資系小売業の参入が2000年代より本格化するようになっている。欧米のファッションブランドから日系や韓国系の電機メーカーがショッピングセンターに軒を連ねるようになり,インド市場にブランドを浸透させようとしている。このようにショッピングセンターは,グローバルなブランドに親しむ場であるともに,新しい生活様式を体験する場となっている。 (土屋純)

<討論内容と座長所見>
 本研究会は、東京大学拠点と共同で開催されたものである。藤森氏は繊維・アパレル産業の発展について、経済学的見地から産業クラスターを地域的単位とした分析により論じた。質疑では、クラスター間の産業構造の違いなど地域的差異についての質問が寄せられた。土屋氏は2012年9月にデリー首都圏で実施した調査の結果をもとにショッピングセンターおよび外資系小売業の展開に関する報告を行った。質疑では、外資系企業の戦略内容や、ショッピングセンターの立地展開と都市階層との関係といった点について質問・議論がなされた。経済学と地理学という二つのディシプリンから、近年におけるインドの産業発展の解明について議論がなされたことは大きな成果であった。(宇根義己)



戻る