研究集会の案内

2012年度HINDAS第4回研究集会

HINDAS 研究ユニット2

  現代インド地域研究広島大学拠点(HINDAS)では、下記の通り研究集会を開催いたします。直前のご連絡で申し訳ありませんが、皆様のご参加をお待ちしております。


タイトル
「学校教育は脱貧困に寄与しているか?:インドで急増する『就職のための私立教育機関』からの報告」

日時:1128() 開場1230 開始12:50~(90分程度を予定)
場所:広島大学(東広島キャンパス)総合科学部 講義棟K311教室

プログラム
 ①趣旨説明(佐々木宏、広島大学大学院総合科学研究科・准教授/HINDAS研究員)
 ②報告「Dose the School Education realize the success of children from poor families in India?
     
Mr.Anupam Raghuvanshi, Triumphant Institute of Management Education, Varanasi
      
Centre, Director
 
③質疑応答

※使用言語は日本語(Mr.Raghuvanshi報告は英語ですが逐次通訳付)
※本研究会はJSPS科研費研究(平2224年度、基盤(C)課題番号22530602「発展途上国における『学校教育を通じた脱貧困』の可能性の検証」、研究代表者:佐々木宏)の成果公開の企画です。
※問い合わせ先:佐々木 宏(広島大学大学院総合科学研究科准教授 /hsasaki<at>hiroshima-u.ac.jp


趣旨
インドでは1970年代から「高学歴失業者」問題が知られていたが、近年、この問題は深刻化傾向にある。その背景には、90年代以降の中高等教育就学者の増加、目下の経済成長が高学歴者向けの雇用機会の規模を十分に拡大させていないという需給のミスマッチがあると言われている。しかし、このような状況においてもインドの教育政策は中高教育のさらなる拡大を志向しており、実際、就学者は増加しつつある。一方でその受け皿となる労働市場の劇的な変化は見込まれておらず、高学歴失業者問題は短期的な解決を見通せない構造のなかにある。
 
インドの高学歴失業者問題は、現在、経済成長のための人的資源の配分、社会統合や治安といった観点から、取り沙汰されることもあるが、本研究会では貧困家族で育つ子どもの「学校教育を足がかりにした脱貧困」という視点から、この問題に着目している。インドが「学歴社会」であることを前提にすると、高学歴を得ることは階層上昇や脱貧困の有力な手段であると考えることはできるし、事実、教育開発をめぐる議論では学校教育はそのような手段と目されてきた。しかし、高学歴失業者の存在は現在のインドでは学歴を得ることが必ずしも職業に結びつかないことを示しており、この点を指摘する近年の調査研究も少なからずある。「学校教育を足がかりにした脱貧困」という視点からは、インドの中高等教育は貧困層の階層上昇のボトルネックとみなすこともできるのではないか。
 
本研究会の実施母体である科研研究チームでは、以上のことをふまえ2010年から3年間、デリー、チェンナイ、ウッタル・プラデーシュ州Varanasiにおいて、中高等教育機関や就学者/卒業者を対象にした調査をすすめてきた。その調査によってみえてきた興味深い事実の一つは、インド、とりわけ都市部においては「卒業後の就職保証」を掲げる中高等教育修了者向けの教育サービスが発達しつつあるということである。たとえば、MBAや教員資格など就職に有利だとされる学位・資格を授与する機関、インド工科大学や名門MBAの入試準備のための機関、さらに公務試験準備のための機関等々などがその具体例である。いうまでもなく、この動向を後押ししているのは高学歴失業者の存在である。また、増加する教育機関の供給の主な担い手は政府ではなく利潤を求める「私」であり、公教育の枠外(政府の認可制度の外部)にもはみ出す形で展開をしている。
 
本研究会では、上述の中高等教育の市場主導による急速かつ野放図な多元化が、先に述べた本科研研究チームの関心である「学校教育を足がかりにした脱貧困」にどのような影響を与えているのかを考えてみたい。議論の材料は、急増する『就職のための私立教育機関』の一つであるTriumphant Institute of Management EducationT.I.M.E,Varanasiセンターの責任者Raghuvanshi氏による報告である。T.I.M.Eは中高等教育修了者向けの教育サービス企業のインド最大手の一つであり、Varanasiセンターでは、IITや名門MBA入試受験者、海外留学希望者、公務員試験受験者向けの教育サービスを提供している。また、Raghuvanshi氏は、T.I.M.Eのほか、MBAプログラムを提供する私立教育機関の経営、貧困子弟への教育支援(T.I.M.Eでの学習機会の提供)にもコミットしており、まさに中高等教育の市場主導による多元化の当事者の一人である。本研究会が着目している昨今の状況のかなりの領域は、政府のコントロールの外で進んでいるが故に公的統計/文書では内実が見えづらい。Raghuvanshi氏による報告は、いわば現場からの報告として、ここに光をあててくれるものと期待している。(文責:佐々木宏)

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