活動状況

2015年度 HINDAS 第2回 研究集会 報告

【主催】現代インド地域研究 広島大学拠点(HINDAS)

【日時】2015年7月11日(土)14:00〜16:40

【場所】広島大学大学院 教育学研究科 2階 K215講義室(東広島キャンパス)

【報告】

  油井美春(広島大学現代インド研究センター)

    「インドにおける政治空間と暴力―マハーラーシュトラ州の事例を中心として」

本報告では、第一にヒンドゥー・ムスリム間暴動が頻発してきたマハーラーシュトラ州を事例として選択し、1960年代後半以降の政治空間においてヒンドゥー・ナショナリスト組織が「制度化された暴動システム」の起動によって勢力を伸張する過程を説明した。第二に、2014年に実施された第16次連邦下院選挙およびマハーラーシュトラ州議会選挙の結果と有権者の選好に焦点を当て、インド人民党の圧勝と会議派の惨敗、マハーラーシュトラ州でのサフラン同盟の復活について説明した。第三に、昨今の選挙分析では、モーディー政権下でヒンドゥー・ナショナリズム色は退潮しつつあると言及されているが、ラーム寺院再建運動、ヒンドゥー教への再改宗、ヒンドゥーとムスリムの通婚への介入、ヒンドゥー神話を重視した学校教育カリキュラムの改訂、牛肉販売の禁止といったヒンドゥーの文化と歴史の栄光を強調するサフラン化の動きが全国的に見出されることを明らかにした。 
 本報告の質疑では、特定地域に暴動が頻発してきた背景、「制度化された暴動システム」の起動の時期、インド人民党が低位カーストから支持を集めた要因、地方政治家の経歴、社会階層別の投票行動についての質問が挙げられた。ムスリムが社会的・経済的なイニシアティヴを掌握してきた特定都市において、1960年代後半以降の多党化の時期からヒンドゥー・ナショナリスト組織による暴動システムが起動してきた点を説明した。後進カースト出身のモーディー首相が貧困からの成功モデルとしての人気を掌握し、インド人民党の圧勝に帰結したわけだが、今後は議員となった政治家の経歴、有権者の投票行動について、踏み込んだ分析を深化させていきたい。

  

  友澤和夫(広島大学大学院文学研究科) 

    「インドにおける分断化された工業労働市場の形成―フォーマル部門のインフォーマル化」

現代インドでは工業化にともないインフォーマルな雇用が拡大している。本報告は、2014年2月にハリヤーナー州最大の工業団地IMTマネサール近傍で実施した現地調査を基に、自動車産業に従事する請負ワーカーの労働市場を論じたものである。調査対象者(254人)の大部分が、UP州からビハール州にかけての「請負ワーカーベルト」を出身としており、デリー首都圏の「オート・コリドー」との間で、前者から後者への労働力移動と、後者から前者への送金を介した所得移転を生んでいる。前者にも一定の経済的メリットがもたらされているが、請負ワーカー自体は押し並べて不安定かつ低賃金状態に置かれている。また、労働力再生産に費やす金額は少なく、消耗が激しいため年数の経過とともに当該労働市場から離脱していく。ただし、請負ワーカーベルトが抱える過剰人口により、直ちに補填される。このように工業化により形成された労働力需給システムを介して、請負ワーカーベルトはオート・コリドーへの低賃金労働力供給地として包摂されると同時に、そこに従属化する関係がつくり出されている。この関係は、現代インドにおける中心-周辺構造の形成とみることができ、同国の経済地域構造を捉える上で重要な論点となるであろう。

  

 

       

       

       

 

  

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