活動状況

2015年度 HINDAS 第3回 研究集会 報告

【主催】現代インド地域研究 広島大学拠点(HINDAS)

【日時】2015年8月26日(水)13:00〜17:40

【場所】広島大学大学院 文学研究科 1階 大会議室(東広島キャンパス)

【報告】

後藤拓也(高知大)

「インドにおけるブロイラー養鶏産業の地域的発展とそのメカニズム」

本報告では,2000年代に顕著な成長を遂げたインドのブロイラー養鶏産業について,その地域的発展メカニズムを検討した。インドにおけるブロイラー養鶏産業の空間構造をみると,もともと養鶏業が盛んであった南インドに大規模な産地がみられる。しかし近年,ハリヤーナー州など北インドにおいても鶏の改良種が普及して産地が拡大するなど,養鶏産業の全国的展開が顕著である。ハリヤーナー州は,インド最大の鶏肉市場であるデリーのガジプール市場に近接するため,そこでの競売による価格決定に影響を受けやすい。そのため,大手養鶏企業の垂直的統合が進んだ南インドに比べて,農家の収入が不安定な状況に置かれている。このようにハリヤーナー州は,必ずしも産地として有利な条件を持つ地域ではないが,近年は大手養鶏企業の勧誘によってブロイラーを飼養する農家が増えている。これら農家の多くは,ガジプール市場に鶏を出荷していたが,最近では養鶏企業に鶏を販売する農家も増加傾向にあるなど,先進国のような垂直的統合が形成されつつある。さらに2005年頃から,インドでは大手養鶏企業8社が,独自の鶏肉ブランドを創設し,全国に鶏肉の直販チェーン店を展開するようになった。このようにインドのブロイラー養鶏産業では,生産面や流通面の垂直的統合が進む一方で,ガジプール市場のような旧態依然とした流通機構も存続するなど,産地・流通構造の二極化が顕著になっている。

                              

 

土屋純(宮城学院女子大)

「デリー首都圏グルガオンにおけるショッピングモールの展開と既存商業集積との競合・共存」

本発表は、デリー首都圏の郊外都市であるグルガオンを事例に、ショッピングモールなどの商業集積の分布状況を把握し、郊外都市として発展しているグルガオンにおける商業地理の変遷を明らかにしようとしたものである。ショッピングモールの立地は、2000年代前半にはメトロ駅周辺に限定されていたが、近年、幹線道路沿いに展開するようになっており、分布が面的になりつつある。さらに、開発された住宅地内では地域センターが整備されている地域もあり、飲食店やファッションなどの商業集積が形成されている。一方、古くからの商業集積地であるサダールバザールは、グルガオン全体に影響力のある商業集積を維持している。さらに、開発地の合間に存在しているアーバンビレッジでは、周辺地域の変化に合わせて自営業が盛んになっており、シカンダルプールでは建築用材店の集積地が形成され、ナトゥプールでは卸売市場が活況となっている。しかし、全般に開発住宅地内での日常生活品(特に食料品)を購入できる商店は限定されており、行商なども展開している状況である。今後、グルガオンの開発が進んでいく中でどのように商業地理が再編されていくのか、注目していきたいと考える。

                              

 

南埜猛(兵庫教育大)

「インドの水資源開発とその方向性」

本報告では、1)科研「現代インドの経済空間構造とその形成メカニズム」における本研究の位置づけと研究の視点・方法,2)インドの水資源開発の特徴,3)河川連結案について言及した。本研究は,産業空間を支える資源開発やインフラ整備といった国土空間の開発や利用の解明を,水資源に注目して検討を行う。インドの水資源開発のあり方として,「水資源の拡大的開発」と「既開発水資源の有効活用」の方向性があり,本研究ではそれぞれナショナルレベルとメガリージョンレベルの2つの地域スケールで検討する。また分析の鍵概念として「水利転用(Water Transfer)」と「持続可能な開発(Sustainable Development)」を用いる。独立後の「水資源の拡大的開発」の結果,現在インドは世界第3位のダム保有国となっている。独立後のダム建設の歴史的展開をみると1970年代・1980年代をピークとし,その後は減少している。現在も貯水量ベースで拡大的開発を継続している中国との違いを指摘した。今後のインドにおける「水資源の拡大的開発」として河川連結案(Linking of River)を取り上げ,その歴史的経緯と最近10年間における議論の動向を示した。同計画の実現にあたっては,インド国内の社会的・政治的状況とともに,技術や資金面において中国が重要な役割を果たす可能性のあることを指摘した。

                              

 

澤宗則(神戸大)・森日出樹(松山東雲女子大)・中條暁仁(静岡大)

「デリー首都圏内農村の宅地化と社会変動ーUP州ノイダの1農村の追跡研究」

UP州ノイダの1農村を事例に、デリー首都圏内農村の宅地化と社会変動を分析した。1997年に悉皆調査を行った事例農村で、2014年に旧住民の調査を行った。世帯員の全氏名を記入した追跡調査により、総計としての農村の各種統計量の変化ではなく、各世帯、個人の変化を個別に捉えた。Rural VillageからUrban Villageへの移行の状況を詳細に分析することが可能となった。事例農村の周辺にはビジネスセンターや大学、オフィスが建ち並び、それらに農地を売却した利益で、アパートを建設・経営を行うもの、村内に店舗(携帯ショップ、写真屋、食材店)を開業するものが増加した。これらはいずれも農地を所有していた上位カーストの地主層である。他方、以前から土地を所有していない下位カーストの多くは、底辺の労働者のままであること多いなど、社会階層間の格差は再生産されている。現金収入の上昇にともない、耐久消費財や教育水準の向上も顕著であり、公立学校ではなく、私立学校へ通学するものが大多数となり、その一部は大学や大学院へ進学している。女子の教育水準の向上も顕著である。下水道などのインフラの未整備のままでの新住民の急増は、生活環境の悪化という大きな問題をもたらした。しかし脱農にともない従来の大地主層を中心とした農業中心の支配構造が崩れるに従い、ローカルな自立性が欠如し、問題は解決されない。その結果、ローカルな社会関係資本(social capital)を再び創り上げる必要性と困難さにアーバンビレッジは直面するのである。

                              

 

由井義通(広島大)・日野正輝(東北大)・V.R. Sharma(Univ. of Delhi)

「デリー南郊・マネサールにおける都市開発」

デリー南郊のグルガオンの都市開発は,さらに南側のマネサールへと拡大した都市計画へと展開している。本報告は,マネサールの都市開発の概要について紹介し,20152月にマネサール・セクター1の住宅地区において実施した住宅調査と住民へのアンケート調査の分析結果からなるものである。

住宅調査では,空き地と空き家,建設中の住居を調査したうち,建設後も入居者のいない空き家が多いことを明らかにした。また,戸別訪問による住民へのアンケート調査の結果,マネサールの調査対象地区では,デリーへの通勤者はわずかしかおらず,都市開発目的であるIMTマネサールへの通勤者と隣接のグルガオンへの通勤者が多いことが明らかとなった。また,戸建住宅やグループハウジングには富裕層の入居がみられる一方,チャンディガルやデリーなどに在住する所有者が,投機目的で住居を取得し,IMTマネサールで働く単身者に貸し出している住居もかなりみられることが明らかとなった。そのため,外見上豪奢にみえる住居であっても,10名以上の単身居住者が集団で居住するなど,居住者と住宅地区の社会階層の乖離がみられる。

                              

 

 

 

          

 

 

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