活動状況

2016年度 HINDAS 第1回 研究集会 報告

【主催】南アジア地域研究 広島大学拠点(HINDAS)

【日時】2016年5月14日(土)14:00〜17:00

【場所】広島大学学士会館 2階 会議室1(東広島キャンパス)

【報告】

 宇根義己(金沢大学)
 「インド・タミルナードゥ州コインバトールの産業集積に関する予察的考察−紡績工業を中心に−」
 

本報告は2016年3月に調査した内容をもとに,タミル・ナードゥ州コインバトールにおける産業集積の形成要因と発展過程について,主に紡績業に注目して論じたものである。コインバトールは繊維機械やポンプ・モーター産業,一般機械,自動車部品産業,そして紡績業など,多様な全国的規模の産業が集積する都市である。当地では20世紀初頭に長繊維綿花の栽培を契機に紡績業が発展し,そこに英国事業家や多数の地元技術者・起業家が生まれ,紡績業や機械産業等へと事業を拡大していった。工業化の担い手は農業カーストNaiduが中心であり,彼らの家族的経営や多角的経営といった形態がコインバトールを多様な産業による産業集積地域へと導いていったと理解される。

本研究が特に着目した紡績業については,一部を除いて20世紀前半の段階でコインバトール市街地から郊外へと立地シフトの傾向を示していた。 また,1990年代中頃から労働者不足が問題となり,2000年代中頃からはこれが深刻になっていく。聞き取りした紡績工場では,北インドを中心とした他地域出身の労働者を雇用しなければ生産を維持できない状況に直面しているところもあった。

質疑では,紡績業がコインバトールに存立し続ける要因について,移動労働者の採用メカニズム,繊維・アパレル産業のコモディティ・チェーンにおける紡績業の位置付けと役割などに関する質問があった。本報告での議論を土台に,さらなる調査研究につなげていきたい。

 

 

 内川秀二(専修大学)
 「インドのアパレル・クラスターにおけるビジネスとコミュニティー」

本発表は産業クラスターにおけるコミュニティーの役割について論じようとしたものである。綿製ニット製品の集積地であるティルプルとウール製ニット製品の集積地であるルディアーナーの事例を比較検討した。両クラスターが発展した原因として(1)安価な労働力、(2)日常的な取引を通して流通業者と製造業者間で情報が共有されていること、(3)多様な下請ネットワークの存在、(4)参入費用が低いこと、が考えられる。

ティルプルは農業カーストであるガウンダー出身の元労働者が独立して起業し、輸出企業の経営者と成功した事例が数多くみられる。多くの先行研究が、ガウンダーが同じカーストの出身者を優遇したために、他のコミュニティーが不利な立場に置かれていることを示してきた。

しかし、ティルプルとルディアーナーの調査結果ではコミュニティーよりも信頼関係の方が重要だと経営者たちが認識していることが判明した。ルディアーナーでも元労働者が経営者になっている事例があり、ティルプルでは非ガウンダーが 、ルディアーナーでは商業カースト以外のコミュニティー出身者が 、零細企業として下請をしながら規模を拡大していった事例が考察された。両クラスターにおいて垂直的な協力関係はコミュニティーを超えて機能している。社会ネットワークは他のコミュニティーを排除していない。参入が容易であるために、主要コミュニティー以外の若者もニット産業に参入している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

                  

 

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