活動状況

2017年度 HINDAS 第3回 研究集会 報告

【主催】南アジア地域研究 広島大学拠点(HINDAS)

【日時】2017年9月5日(火)14:00〜17:20

【場所】広島大学 文学研究科 1階 大会議室(東広島キャンパス)

【報告】

 佐藤 裕哉(下関市立大学)
 「インドSEZ開発の現状と課題ー新聞資料とハイダラーバードでの現地調査結果を中心に ー」

本研究は,インドSEZ開発の実態や開発にともなう課題をインド中央政府公表資料,新聞資料,ハイダラーバードのディベロッパーの調査結果から分析,考察したものである。

まず,中央政府公表資料から稼働中のSEZの分布を確認すると,南部の大都市に多いことが明らかとなった。また,業種や開発主体により分布に地域差がみられた。業種では,ITは大都市,多品種は小都市に多く,開発主体では不動産・インフラ企業によるものは大都市中心,州政府によるものは小都市にも分布する。これには,事業に必要な土地面積の違いが影響していると考えられる。

新聞資料はThe Economic Timesを用いて,見出しのテキスト解析を行った。対象とした期間は2005年12月1日〜2007年1月31日で,SEZに関する記事数は289,見出しの単語総数2149語であった。頻出語を調べたところ,landやstateなどが抽出された。開発当初から土地問題や州政府の関与が大きかったことがうかがえる。

ハイダラーバードのディベロッパーへの調査から,SEZ(特にIT-SEZ)は人材へのアクセス(質・量)などの理由により都市を指向することが明らかとなった。また,開発には,税優遇,電気・水の供給,用地取得など州政府の影響力が強く働いている。一方で,土地の問題で開発が頓挫する事例もみられ,これは開発当初から変わらない課題である。

  

 

 友澤 和夫(広島大学)
 「湾岸諸国へのインド人労働者送出システムーRecruiting Agentsに着目してー」

インドから毎年湾岸諸国に約150万人の労働者が新規に送出されている。このような大規模な労働者移動は,何らかのシステムを抜きには成り立ち難い。本研究はこの点に焦点を当てたものであり,労働者送出にかかわる制度的枠組みを抑えた上で,その中心的なアクターの1つであるRecruiting Agents に着目して,送出システムの実際を明らかにすることを目的とする。インドでは労働を目的とする移民に関しては,1983年制定のEmigration Actによって制度的な骨格が定められている。そこにおいて,労働者送出に介在できるRecruiting Agentsは移民保護官(Protector of Emigrants)から認可されたものに限られるとされている。調査時点ではインド全体で1,213業者が認可登録されているが,その半数以上はムンバイに立地しており,これにデリーが続いている。ただし,湾岸諸国に移動する労働者の出身地の主体はUP州やビハール州であり,Recruiting Agentsの立地とは対応しておらず,両者を結ぶ媒介項が必要である。こうした問題意識を持ちながら,デリーのジャミア地区に所在する20業者を訪問し,労働者送出システムにおけるそれらの位置づけや事業の内容に係わる情報を得た。同地区には,認可を受けた事業者の本社のほか,他州に本社を置く事業所の支社,そして非認可事業者が立地している。非認可事業者の多くは認可業者に労働者を斡旋する機能を有している。また,各業者はUP州やビハール州の個人Agentを活用して労働者を集めている。さらには,そうした州に支社機能配置を置くものもある。人材派遣業は手数料ビジネスであり,売り上げには斡旋する労働者の数が直結するため,このような構成をとるものと捉えられる。業界構造の把握にはまだ十分な点があるが,さらに資料・情報を収集してさらに踏み込んだ考察を展開したい。 

  

 

 岡橋 秀典・石川 菜央・陳 林(広島大学)
 
「経済成長下のインドにおける山岳地域農村の変貌

                ーウッタラーカンド州ナイニタル近郊1集落の再調査にもとづく考察ー」

本報告は、インドヒマラヤの山岳農村を対象に、その10年後の再調査をもとに、経済成長のもとでの村レベルの変化の実相を明らかにしようとした。前回調査は約10年前の2007年9月に実施し、その結果は岡橋・番匠谷・田中・チャンド(2011)で公にしている。今回は、広島大学大学院「たおやかで平和な共生社会創生プログラム」の海外オンサイト研修として現地に滞在し、岡橋、石川、陳の指導により調査実習を実施した。分析の結果は以下の通りである。商業的農業生産と農外就業拡大により、所得の向上が持続している。しかし、農業に関しては兼業化や高齢化により今後後退する可能性もある。観光開発は村民の雇用をやや拡大したが、コンフリクトも深刻化しており、開発方式が問題となっている。外部資本の進出が新たな従属をもたらさないように、地元主導の観光やホームステイの導入が求められる。教育水準の高さも持続しており、雇用によい影響を与えているが、一層の農業離れや村外や州外への転出をまねく可能性もある。この村は地方都市ナイニータールの波及効果に浴するが、その意味で山岳地域の都市化の展開が地域開発上重要な意味をもつことを示唆している。この集落でも、州内の山麓平地部での工業化・都市化の影響がみられ、今後は、さらに労働力の吸引、人口流出が進むかどうか、注意が必要である。よく言われる平地部と山岳部の格差だけでなく、山岳部農村の地域分化と格差にも注目する必要があることを提起しておきたい。

  

 

 

  

                  

 

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