活動状況

2018年度 HINDAS 第1回 研究集会 報告

【主催】南アジア地域研究 広島大学拠点(HINDAS)

【日時】2018年5月12日(土)13:30〜16:50

【場所】広島大学 文学研究科 1階 大会議室(東広島キャンパス)

【報告】

杉江 あい(東京外国語大学/日本学術振興会特別研究員):

バングラデシュ農村におけるイスラーム知識の広がりと進化-中東滞在経験者と宗教教育に着目して

本研究は,バングラデシュ村落社会におけるイスラームに関する知識・実践の広まりと深化が,どのようなメカニズムによって起こっており,世界的なイスラーム復興の潮流といかなる接点や共通性/相違性を持つのかを,中東滞在経験者と(宗教)教育の普及がもたらす影響に着目して明らかにすることを目的とする. 2011~8年に断続的に行ったフィールドワークによると,村落住民のほとんどがここ10~20年のうちに宗教的知識が増えたとし,その理由として教育施設・勉強会の増加,従来の知識・実践の是正,宗教的知識人の増加といった教育をめぐる変化が指摘された.モスクやマドラサは宗教的知識の情報源として最も多く挙げられたが,成人女性を対象とした勉強会が多数開かれるようになったことも聞かれた.また,サウディアラビアからは当国政府による教育施設だけでなく,バングラデシュ人による勉強会で学び,より知識を深めて帰還する者が見られた.バングラデシュでは1980年代に中東諸国からの圧力と資金援助により,宗教教育が拡充されたこと,また経済・教育の水準の向上に伴って宗教的知識が広まっていることが世界的なイスラーム復興との接点および共通点として挙げられる.これに対し,国家による直接的な働きかけがほとんどなく,宗教教育を受けた知識人による教育や,中東滞在経験者による家族に対する働きかけを通じて個別的に宗教的知識や実践の広まり・深化が生じている点が,バングラデシュの固有性として指摘できる.

                                      

友澤 和夫・陳 林(広島大学)・古屋 辰郎(広島大学・院)・I. Nury(Lotus India Biz Ltd.):

デリー首都圏における工業労働市場とワーカーの経済生活-自動車系と軽工業系の比較考察

デリー首都圏の工業化は,自動車系と軽工業系(アパレル,繊維など)の雇用を大きく拡大させたが,前者では非正規化が顕著に進行したのに対して,後者でその水準は低く留まる。本報告は,ハリヤーナー州最大の工業団地IMTマネサールでの調査結果により,自動車系の非正規ワーカーと軽工業系のワーカーは,出身地や賃金水準を同じくしており,基本的には同一の労働市場にあることを導き出す。両者の間には差異も認められる。それは,自動車系においては企業側が労働力を若く,新しい状態に保ちたい意向を持つため,軽工業系よりも入れ替わりが 激しいことにより生じている。経済生活面では,ワーカーは住居費や食料費を抑制し,手取り収入の40%程度をウッタル・プラデーシュ州やビハール州の農村部に住む家族へ送金していることが注目される。送金は家族の生活費のみならず,教育費や耐久消費財の購入にも充てられ,彼らが置かれている条件不利性を軽減する可能性も有していると考えられる。制約がある中で,インド工業化の恩恵を引き出そうとするワーカーの営為が一定程度明らかとなった。

                             

 

石上 悦朗(福岡大学):

インドの産業発展-政治経済学とグローバル競争の視点から

本報告では「インドの産業発展はどこに向かっているのか?」という問題意識から、インドに関わる議論を整理し、重要な論点を剔出し、報告者が読み解いた構図を示した。主な論点は以下の通りである。
1. インドの政府(中央・州)・国家(の役割)は産業発展に向けては「開発国家」としては効果的には機能していない。その例解として指定商業銀行の不良債権問題と経済特区(SEZs)を取り上げた。
2. 経済の構造の最上部においてなお許認可を必要とする部門において、クローニー・キャピタリズムの現象が生じていることは上記と関連があるだろう。
3. 産業発展においては製造業の賃金が低迷し、R&D投資が低減しつつあることに注目した。「新興工業国」への道は遠いというより、別の道を歩んでいるのではないか、という問題提起を行った。
4. 新しい資本家としてのICTサービス企業家がビジネスであまり多角化しないのは、同部門が各種のインセンティブを享受してきたことに加え、そもそも輸出志向の世界市場向けという意味で最も市場経済に親和的なマインドを持っていることによる。
5. インドにおける経済自由化は、現在も進行している長い過程であり、2017年のGST(財・サービス税)導入によりようやく「一つの国内市場」が実現したといえる。したがって、今後、市場経済にふさわしい企業の行動や制度の整備が期待できる。ICTサービスを国内のサービス部門、製造業部門をどう結び付けてゆくか注目したい。

                               

 

    

 

     

戻る

.