2010年度 海外派遣報告

  • インド,ウッタル・プラデーシュ州、バングラデシュ・タンガイル県における定期市調査

    期間:2010年8月4日〜8月26日
    国名:インド
    参加者:渡辺和之(立命館大学文学部・非、研究協力者)
    概要:現代インドにおける都市=農村関係の変化を研究するため、バングラデシュとインドで定期市調査に行ってきた。おもな目的は1980年代後半に名古屋大学がおこなった定期市研究の再調査をすることで、現代インドの農村地域における商業活動の変化を比較することにある。
     バングラデシュでは、タンガイル県にあるNGO組織グラムバングラを訪れ、同組織の研究施設周辺の定期市調査をおこなってきた。調査した定期市はヒンドゥー教徒とイスラム教徒が今日中する地域であり、農産物の売り手にも両教徒が含まれていたのを確認できた。
     インドでは北インドのウッラルプラデッシュ州ロダウラ村を訪れ、同村周辺の定期市を20カ所調査してきた。今回は各定期市で売り手の配置図を作成するとともに、販売する商品名を各店舗ずつ記入してまわった。また一部定期市では、売り手全員の出身村とカーストも聞き取り、商人の属性を捉えることが出来た。ただし、今回の調査でロダウラ村周辺の定期市の1/3程度を再調査できたに過ぎない。このため、20年前の基礎資料と比較するためには、この調査を今後も定期市調査をあと数回継続する必要がある。また、今回は新たにロダウラ村を含む3カ村で世帯調査を開始し、各世帯のカースト構成や家族構成などのデータを収集してきた。指定カーストのなかからもトラクターを所有するする世帯が現れたり、かつて小麦畑だった所がマンゴー畑になるなど、インド社会の動態を示す上で重要な現象を見つけることが出来た。その背後には、UP州の指定カースト優遇政策によって農業労働者の賃金が上昇し、高カーストの地主層が大規模土地経営を維持できなくなるなど、政治的要因があると村人はいう。
     今後は、継続中の基礎調査に加え、上記の新たな問題をより詳しく調査することで、現代インドの都市=農村関係の変化を明らかにしてゆきたい。(渡辺和之)

  • インド・ウッタラカンド州、ラージャスターン州およびデリーの自動車産業に関する調査

    期間:2011年2月13日~2月25日
    国名:インド
    参加者:友澤和夫(広島大学大学院文学研究科・教授、研究分担者)
    概要:本派遣では、成長著しいインドの自動車産業について、その担い手である自動車メーカー、自動車部品メーカーの実際を知るべく、訪問調査を実施した。ルドラプルでは州政府が巨大な工業団地を開発しており、進出企業には中央政府の恩典付与があるため短期間で急速な工業化が進展している。今回は、ターター・モーターズ社のベンダー企業8社を訪問し、あらかじめ用意しておいた質問票に基づいてインタビュー調査を実施した。8社とも2009年前に訪問しており、この2年間の急成長の実態が確認された。デリーにおいては、グレーター・ノイダに所在するホンダ・シエル・カーズ社を訪問調査するとともに、ラージャスターン州アルワール県に開発されている日系企業専用のニムラナ工業団地を見学し、開発事業体である同州工業開発公社より説明を受けた。また、インド自動車部品工業会を訪問して、自動車部品産業にかかわる資料を収集した。以上のように短期間のインド滞在であったが、効率の良い調査が実施できた。(友澤和夫)

  • インドにおけるGIS(地理情報システム)の研究・教育状況に関する調査

    期間:2011年2月13日~2月23日
    国名:インド
    参加者:鍬塚賢太郎(琉球大学法文学部・准教授、研究分担者)・宇根義己(人間文化研究機構地域研究推進センター・研究員/広島大学現代インド研究センター・特任助教、研究分担者)
    概要:インドにおけるGIS研究とそのデータに関する最新の成果・資料等について、現地の大学、研究機関および民間企業を訪問し収集した。
     最初に、南インド・ポンディチェリのフランス研究所(French Institute of Pondicherry)を訪問した。同研究所は、ヨーロッパを中心に世界規模で都市化を分析するe-Geopolisプロジェクトのインドにおける拠点となっている。現地では、プロジェクトを担当するFIP社会科学部門長Eric Denis氏などと情報交換し、インドの都市化および都市システムの分析について知見を得た。次に、タミル・ナードゥ州クンバコナムのガバメントカレッジの地理学科を訪問した。ここでは、GIS教育のカリキュラムについて意見交換するとともに、同学科が注力している防災関係プロジェクトについて情報を得た。
     その後、チェンナイに移動し、アンナ大学Institute for Ocean Management、マドラス大学地理学教室を訪問した。アンナ大学では、インド全土を対象とした海岸浸食に関する研究プロジェクトの一端を視察した。学生・大学院生がプロジェクトに従事し、衛星データの解析にあたってフィールド調査を併用している点が印象的であった。マドラス大学では地理学科を訪れた。GIS教育プログラム、大学院生のGISに関する取り組みについて研究室を見学および意見交換した。さらに、チェンナイのセンサス局(Directorate of Census Operations、Tamil Nadu)を訪問し、調査期間中であった2011年インド・センサスの現況などについて担当官から情報を得た。なお、デリーを除く旅程においては、マドラス大学元教授のスッバイヤー氏と行動を供にし、多くの支援を賜った。
     チェンナイからデリーに移動し、GISデータ作成・販売、企業向けソリューションなどを手がけるML Infomap社を訪問した。同社は創業17年目のインドにおけるGIS関連企業の先駆け的存在である。同社では、訪問に先立って同社で購入したGISデータについて詳細な確認を行うとともに、同社の事業内容の説明などを受け、インドにおけるGISビジネスの最先端を知ることができた。最後に、鍬塚はデリー市街地に位置するフランス外務省傘下の研究機関CSH(Centre de Science Humanies)を訪問し、図書館で資料を収集した。宇根は、Jamia Millia Islamia大学地理学教室を訪問し、海外共同研究者のIshtiyaq教授や現地研究者・院生と情報交換等を行った。(鍬塚賢太郎・宇根義己)

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