広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 助教 中島 祐子 先生

No.14 「整形外科という分野で超音波を使い、新たな可能性を探る」

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広島大学 大学院医歯薬保健学研究院 助教
中島 祐子 先生




 
専門分野:整形外科学
履歴:
1998年    東京女子医科大学 卒業
              広島大学整形外科学教室 入局
              中国労災病院整形外科
2000年    広島市民病院整形外科
2003年    広島大学大学院 医歯薬学総合研究科博士課程 入学
2007年    広島大学大学院 医歯薬学総合研究科博士課程 修了
              広島大学病院整形外科
2012年    同、病院診療講師
2015年    広島大学大学院医歯薬保健学研究院 助教

◯ 見えなかったものが見える、見えるから分かる、分かるからできる

  私は専門とする整形外科の中でも、手を専門にしたグループに所属しています。手の形や機能の異常である多指症や形成不全などの先天異常、手の痛みやしびれを伴う末梢神経障害、動きに関わる腱の炎症や断裂、その他腫瘍や外傷など、扱う疾患は多岐にわたります。これらの疾患に対して「超音波」を用いた診断・検査法を研究しています。
一般的に整形外科というとnakashima_2レントゲンのイメージ強いかと思いますが、超音波を用いることで、レントゲンでは見ることが出来ない、骨以外の軟骨、神経、筋肉、腱、靭帯、血管などを確認し、さらにリアルタイムで血流や動きを観察することが可能になります。
  このリアルタイムで動きを見ることができるという点において、超音波検査は優れていると言えます。さらに、超音波装置の性能がよくなり、画像が鮮明にはっきりと見えるようになったことで、今まで見えなかったものが見えるようになりました。すると、病態を把握するという診断はもちろん、針を刺す行為である穿刺や注射、麻酔などを行う際の安全性や確実性も向上します。これらのメリットから、近年超音波は注目を浴び、整形外科に取り入れようとする動きが出始めています。
  そういった意味で、整形外科領域における超音波診断基準を確立することが早急に求められています。

◯ 限られた時間の中で、自分ができること

  外科には部位によっていろいろな専門がありますが、私が手を専門にしようと思ったのは、私自身が女性で、結婚して家庭をもち、子どももいたということが大きく影響しています。子どもがいるということを考えると、仕事にすべての時間を費やすことは非常に困難です。そのため限られた時間の中で、たとえ短い時間でも自分が役に立てるところで仕事がしたいと考えました。手の外科は、時間のかかる大きい手術だけでなく、入院する必要が無い小さな手術も多く行われており、ここなら自分も力になれるのではないかと考え、手を専門にしたグループに所属することにしました。
  超音波とは???????????????????????????????そういった時期に出会いました。働き始めたけれども、限られた時間の中だと思うようにいかず、何かないかと日々を過ごしていた時に、部屋の片隅に布のかけられた古い超音波の機械を見つけました。まだ使えるのに布をかけられている機械が、まるで自分みたいだと思い、使ってあげたいと思いました。その頃は周りに超音波を扱っている人も居らず、教えてくれる人もいなかったので、東京やいろいろなところにセミナーを受けに行ったりして、はじめは手探りでしたが、いろんな人との出会いがあり、少しずつ活躍できる場が広がっていきました。患者さんの治療はもちろんですが、学んだことを実践の場で使って、エコーをしながら、患部の経過を記録し、その記録をまとめて報告するといった研究も行っています。

◯ 広島という地元に根差したシステム作り

  現在、広島大学病院の整形外科で使用することはもちろん、香港・韓国・インドネシアなどアジアを中心とした海外や日本全国の医療者に超音波検査を普及させる活動を行っています。
  そのほかには野球障害検診も年に数回行っています。これは野球をする子どもたちの「野球肘」を早く見つけることで、nakashima_4早期治療を行い、長く楽しく野球をしてもらうことを目的としています。「野球肘」は小学校の高学年頃に患ってしまうことが多く、初期には症状がまったくありません。そのため定期的な検診が重要です。このプロジェクトはまだ立ち上げ段階なので、現時点ではオファーがあったチームに対してのみですが、医師と理学療法士、作業療法士、放射線技師、臨床検査技師などの有志が集まって検診を行っています。今後は、広島という地元に根差して、スポーツをする広島の子どもたちのコンディションの維持や病気を早く見つけてあげられるような、年に数回の定期検診の確立といったシステムづくりも行っていきたいと考えています。

◯ 日本初の運動器超音波講座

  今後の大学内での展望を述べるなら、運動器超音波の研究室を持つことです。現在は整形外科の中で手や肩など、部位で専門が分かれています。私自身のテーマは「運動器超音波」なので、それをメインとした講座が持てたら、今までとは違った幅広い視点で、さまざまな疾患の病態解明やよりよい治療に結びつくような新しい研究をしていきたいと思っています。
簡単ではないことも、ひとりの情熱が超音波の波動のように広がって周囲の人を巻き込んでいく・・・そんな活動がしたい、と思っています。

取材担当:田崎 優里(広島大学 大学院教育学研究科 心理学専攻 博士課程前期2年)



 width=■ 朝日新聞にも取材していただきました。
(右の画像をクリックするとご覧いただけます(pdf:702KB))
朝日新聞、平成29年1月19日掲載、承諾書番号(A16-2541)
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