海洋の90%は深海にある

文:福場 辰洋木村 浩之


海洋の平均深度は3800m、水深1000mを越える海域は全海洋面積の88%、体積で75%に相当する。
仮にここで光の届かない水深200mより深い部分を「深海」と呼ぶなら、面積で92%、体積はなんと99%となる。
そう、海洋の大部分は「深海」なのである。

我々の住む地球は「地の球」というには海の占める割合が多い。 「水球」と呼んだ方がよいのではないかと思わせるほどだ。 先にも挙げたとおり、海洋のほとんどは「深海」である。 世界最深のマリアナ海溝にまで生物が生息することが確認されているので、地下を除く地球生物圏のほとんどが深海にあるといえる。 仮に陸上バイオスフェアを地表から30mまでと考えると、海洋バイオスフェアは陸上の300倍となり、そのうち深海バイオスフェアは200倍分以上となる。

我々人類は地上の生物圏をくまなく探索してきた。 海洋表層の生物圏も研究されてきた。
地球を知り尽くした今、巨大な電波望遠鏡ではるか宇宙に存在しているかもしれない文明を探すことが出来る様になった。
しかし、足下にはまだ広大な未知の生物圏が広がっている。 それが深海である。

「地球上にあるんだから研究なんて簡単、早く調べちゃえばいいのに・・・ 今や人類は遥か宇宙を調べることだって出来るのに・・・」と思われるかもしれない。
ところがそうは簡単にはいかない。 深海は巨大な水圧と永遠に続く闇の世界である。 いくら強烈なライトで深海底を照らしても、一度に観察できるのは微々たる領域でしかない。 海が全て干上がってしまわない限り、我々は深海底を「見渡す」ことは出来ないのだ。

音波は水中をよく伝わる。 この性質を利用した音波探査で海底地図を描くことができる。 海底に山脈(海嶺)や谷(海溝)がくまなく描くことができるが、これでは「海底地形」が分かっただけに過ぎない。 熱帯雨林生態系を調べる際に飛行機に乗り、遥か上空から調べようとする様なものだ。

やはり、生物の観察には人間が直接乗り込むのが一番だろう。 そこで開発されてきたのが「深海調査船」である。
現在有人では「しんかい6500(日本)」で6500mまで、無人では「かいこう(日本)」で世界最深部(約11000m)までの潜航が可能である。
深度的には全ての深海底をカバーしているのだが、面積まではカバーできない。 一度の潜航で調査できる面積は非常に限られているし、もちろん潜水調査船もそう多くはない。 我々は数少ない深海調査船の、これまた小さな観測窓から、しかも光の届く範囲内を短時間覗くことが出来るだけである。

以上のように深海研究は困難なため、深海底のほとんどの領域は人類未踏(未到)となっている。
まだ我々の知らない深海底に様々な謎や、未知の生物が人類に発見されるのを待っているにちがいない・・・