地質試料の有機分析による地下微生物相の解析

研究担当:立花 明子
指導教官:長沼 毅


【はじめに】

地下生物圏の存在が、近年注目され始めている。 地表と比較して、地下の生活環境は、高温、高圧など厳しいものと考えられていたが、近年、地下には地表よりも大きいバイオマスが存在している可能性が示唆され、地下微生物の存在が多数報告されている。 このうに、地下生物圏が存在することはほぼ確実視されており、目下の関心は、地下生物圏の広がりとその生物相(微生物相)にある。

しかし、地下生物圏に関する知見は最近になって、集積しはじめたばかりで、まだ、研究は十分に進んでいない。 地下の岩石中に存在するバイオマス、微生物相を推定する方法の一つに脂質分析がある。 特に、脂肪酸は多種多様な生体分子で、微生物の種類によって脂肪酸組成が特徴的である。 よって、脂肪酸組成を調べることにより、地下の微生物相を推定する手がかりを得ることが期待される。

本研究では、清水で掘削された、日本でもっとも「きれいな」孔の一つである東濃地科学センターの試錐孔で採取された岩石についてリン脂質分析を行い、微生物の存在を確認するとともに、それらのバイオマス、微生物相を解析した。

【材料・方法】

東濃地科学センターにおいて、4mから59mまでの堆積岩と108mから736mまでの花崗岩を採取した。
*採取した岩石からリン脂質分析を行った。リン脂質分析は、リン脂質(LPO4)とリン脂質脂肪酸(PLFA:データは今回示さず)を分析した。
*GC,GC/MSにて各岩石試料のリン脂質脂肪酸の同定を行った。

*得られた脂肪酸組成に基づいて、岩石試料間の類似度をクラスター分析し、デンドログラムを作成した:データは今回示さず。
* CHNコーダにより岩石試料中の有機炭素量を測定した。

【結果・考察】

LPO4分析により岩石試料中の微生物バイオマスが測定された。
これによると、バイオマスが小さい岩石中にも岩石1gあたりに10細胞、微生物が存在していることが示唆された。 また、岩石中の有機炭素量を測定したところ、有機炭素量と微生物バイオマスの間に有意な正の相関がみられた。これは岩石中の有機炭素が微生物の増殖基質となっていることを示唆する。 一般的には深さが深くなるにつれて微生物の量が減少すると思われるが、LPO分析より、微生物の量は深度が増しても顕著に減少しなかった。 今回、分析した最深736mサンプル(花崗岩)にも岩石1gあたりに10細胞という高密度で微生物が存在しているので、地下生物圏では相当深所まで、微生物が存在していると考えられる。