赤潮(red tides)


「赤潮(red tides)」とは、極限られた種類(通常は一種類)の植物プランクトンが、ある環境条件のもとで爆発的に増殖した状態を指す用語で、しばしば海面が赤褐色に色着くことからこのように呼ばれる。 現在海産の植物プランクトンは、約5000種知られているが、比較的高密度に増殖し「赤潮」を形成するのは約300種と言われ、そのうちの約40種はある種の毒を生産する。 日本沿岸海域における海洋植物プランクトンの分類学的研究は、1970年代〜1980年代にかけて赤潮生物の研究を通じて精力的に行われてきた。 現在、これらの研究成果をまとめた「日本の赤潮生物」(福代康夫他編、内田老鶴圃1990)には、赤潮生物あるいは赤潮として出現する可能性のある種として10綱(藍藻、クリプト藻、渦鞭毛藻、珪藻、ラフィド藻、黄金色藻、ハプト藻、ユーグレナ藻、プラシノ藻、緑藻)200種の植物プランクトンが記載されている。

「赤潮」に関する最初の記述は、紀元前1000年聖書のなかに見られる。

「…すべての川の水は、血の色に変わった。
そして川の魚は死に絶え、川は悪臭を放ち、エジプト人はその水を飲むことができなかった」


植物プランクトンは、酸素発生型の光合成生物として現在の酸化的かつ安定的な地球環境の形成に大きな役割を果たしてきた。 今日では、全地球の基礎生産の約50%が植物プランクトンによるものであり、そのうちの3%程度が生物ポンプ作用によって深層に移送され、千年単位での海洋の二酸化炭素吸収を促進している。

また、別の見方をすれば、有機物生産という機能によって、海洋生物の増減をコントロールしている。 つまり、自然環境における植物プランクトンの動態を把握することは、純粋に生物学的な意味を別にすると、次の二つの意味において重要である。 一つは、地球環境特に炭素循環過程に及ぼすグローバルな影響を明らかにするという意味。 もう一つは、ローカルな生態系における他の生物への影響や相互作用を明らかにするという意味である。 両者の区別はそれほど厳密なものではないが、人間活動の影響を受けやすい沿岸域におけるプランクトン研究は、主に後者の視点に基づく研究と言える。