マウス神経芽細胞を用いた麻痺性貝毒、フグ毒の簡易検定法の実用化
研究の背景
最近,カキやアサリのような貝類において麻痺性貝毒といわれる毒素をもった貝が採取されることがある。このような貝を食用摂取した人は、甚だしい場合には死に至ることがあり、世界各地で問題になっている。この毒素は、海水中に生息するプランクトンが産生し、このプランクトンを食物として取りいれた貝が体内に蓄積する。その毒性を測定評価する方法として,従来は試料抽出液を注射したマウスが、死亡するまでの時間を以って判定するマウス毒性試験法が公定法として用いられている。本法は、衛生研究所等の公的試験機関における貝毒検査に広く利用されている。しかし、「マウスに注射して数十分間観察する」という比較的簡単な操作で測定が可能である反面、多くの試験検体を処理するには多大な労力と多量のマウスを必要とすること、生物愛護の観点からも好ましくないことから、これに代わりうる簡便で低コストかつ効率的な方法の開発が求められている。
研究の目的
本研究では、貝毒検査の実施機関である広島県保健環境センターの協力を得てマウス毒性試験法とマウス神経芽細胞法との比較評価をうと共にその最適測定方式を確立し、代替法として実用化することを目的とした。
期待される成果
動物個体を利用した実験や毒性試験は、代替法の開発によって可能な限り減らすことが世界的に望まれている。新しい貝毒測定法の実用化はこうした流れに沿うものである。また、従来より少ない試料で検出でき、動物を扱う手間もかからないことから、公共的な検査機関における省力化やコスト削減につながる。これまでより多量の検査が可能であるため、本検査前のマススクリーニングに利用すれば、より安全な食品の流通に貢献できると思われる。神経芽細胞は、冷凍保存しておき必要に応じて解凍、再培養すれば、安定的に供給することができる。神経芽細胞と測定に必要な化学物質をセットにして、簡単で誰にでも使用できる普及型貝毒測定キットとして実用化できれば、魚介類の養殖あるいは採取する業界において、安全な食品を提供するための検査用品として利用することが考えられる。
原著論文
Hamasaki, K., Kogure, K., Ohwada, K. (1996) "A biological method for
the quantitative measurment of tetrodotoxin (TTX) : Tissue culture bioassay in
combination with a water soluble tetrazolium salt." Toxicon 34: 490-495
Hamasaki, K., Kogure, K., Ohwada, K. (1996) "Improved method of tissue
culture bioassay for tetrodotoxin." Fisheries Science 62: 825-829
