広島大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科

(正式名称)
広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
展開医科学専攻病態制御医科学講座
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学研究室

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広島大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科
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一般の方、患者の皆様へ

ここでは、広島大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診療内容、病気や治療についてわかりやすくご説明いたします。

ヒトの感覚は、視覚、聴覚、平衡覚、嗅覚、味覚、触覚があげられます。嗅覚の治療については、視覚、聴覚、平衡覚などに比べて遅れていましたが、その理由としては生死に直接関係ないこと、感覚の疲労現象が他の感覚より起こりやすいこと、症状の発現や進行が一般に緩徐で自覚されにくいことがあげられます。

しかし、現代においては、匂いの文化など潤いのある生活を享受するために欠くことのできない感覚として関心が高まっています。

また、活動性の低下を余儀なくされている高齢者の嗅覚障害を考える場合、風味が十分生かされた生活は栄養摂取面のみならず生活の幅を広げる意味でも重要と考えます。

嗅覚障害の原因

嗅覚障害の原因分類としては、5割が副鼻腔炎、3割が感冒(風邪)、他は頭部外傷、脳腫瘍、先天性、薬剤性、脳血管障害、神経症があげられます。

1、副鼻腔炎(蓄膿)
原因疾患としては、最も多く、鼻茸の合併例や鼻中隔彎曲、慢性炎症による鼻粘膜腫脹により十分な嗅素(匂いの元)が嗅裂(匂いの経路)へ届かないことによります。副鼻腔炎とは副鼻腔内の炎症のことを言います。
顔の骨中にある空洞を副鼻腔(ふくびくう)といいます。副鼻腔はいくつもあり「上顎洞(じょうがくどう)」、「前頭洞(ぜんとうどう)」、「篩骨洞(しこつどう)」、「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」からなっています。副鼻腔と鼻腔はつながっていて鼻呼吸をすることにより空気の交換が行われます。その内部は粘膜に覆われ、鼻の中が乾いたりしないよう温度や湿度の調整をする役目を持っています。
副鼻腔炎の炎症が嗅裂(匂いの経路)にまで波及し嗅粘膜(匂いの細胞がある)までもが障害を受けた場合、嗅裂(匂いの経路)へ届いても匂いの認知ができないこともあります。治療としては、保存的治療は一般的な副鼻腔炎の治療に家庭でのステロイド点鼻、病院でのステロイド懸濁液局所注入、ビタミン剤や亜鉛剤の投与が施行されています。手術治療としては、内視鏡下鼻内手術(鼻の中よりモニターを見ながら行う手術)があります

2、感冒(風邪)
原因としては、感冒罹患後嗅裂部に炎症が限局したもので、多くは一過性に治ってしまうが、不幸にして嗅裂部に残ってしまったものです。または、ウイルスが直接嗅神経に障害を与えた場合も考えられます。
治療としては、前者については、同部の炎症性病変に対してステロイド点鼻法が最も効果的であるのに対し、後者は神経性嗅覚障害であり、前者ほど有効率はないが、嗅神経を活性化させるために、家庭でのステロイド点鼻、病院でのステロイド懸濁液局所注入、ビタミン剤や亜鉛剤の投与が施行されています。

3、アレルギー性鼻炎(花粉症を含む)
鼻粘膜腫脹により十分な嗅素(匂いの元)が嗅裂(匂いの経路)へ届かないことや嗅神経細胞、嗅腺の機能障害があります。
治療としては、生活指導(抗原の除去、マスク着用など)、抗アレルギー剤などの内服療法、家庭でのステロイド点鼻、病院でのステロイド懸濁液局所注入、ビタミン剤や亜鉛剤の投与が施行されています。





4、外傷性

外傷性嗅覚障害は、交通事故などによる頭部外傷が原因となることが多い。他の部位の重症度を伴うことも多く、救命治療が優先され、嗅覚障害の有無・治療については十分な配慮がなされていない場合が多いと思われます。発症の際の障害部位は直達外傷・鼻腔変形による嗅裂への通気障害に起因するもの、外力により脳が頭蓋内で動揺し、嗅神経が牽引され、損傷・断裂されることに起因するもの、頭蓋底での脳挫傷、特に嗅球(嗅覚伝導路の一つ)付近での出血・浮腫などに起因するものがあげられます。
一般に外傷性嗅覚障害は治療に難渋しますが、嗅神経を活性化させるために、家庭でのステロイド点鼻、病院でのステロイド懸濁液局所注入、ビタミン剤や亜鉛剤の投与が施行されています。

5、薬剤性
有機溶剤やガスなどの刺激性・毒性物質を吸入することにより引き起こされるもの、医療用薬剤の投与に伴う副作用のものがあります。
医療用薬剤の投与に伴う副作用のものの一例としては、抗腫瘍薬、降圧剤、抗不整脈薬、抗高脂血症薬、抗生剤、抗炎症薬、抗甲状腺薬、向精神薬などがあげられます。
治療としては、まず、原因薬剤の中止です。一般的な治療として、ステロイド点鼻、ビタミン剤や亜鉛剤の投与が施行されています。

6、その他
先天性の嗅覚障害としては、先天性完全嗅覚脱失、Kallmann症候群、また、加齢による嗅覚減退や嗅覚脱失、妊娠時にみられる嗅覚過敏、さらに、神経症・ヒステリー、精神分裂病、薬物中毒などの心因性・精神障害で嗅覚過敏や嗅覚幻覚を訴えられる方もいます。

ステロイド点鼻を施行する体位について


嗅覚が回復しても急に中止せず、徐々に点鼻回数を減らし、さらに、1?2ヶ月継続します。

ステロイド点鼻の主な副作用は体重増加、満月様顔貌、発疹などがある。

匂いの検査
基準嗅力検査(TT
5基準臭が選定され、10倍列で8段階の濃度が設定されています。匂いのついた紙を嗅いでもらい、『何か匂いのする』濃度と『何の匂い』であるか判断できる濃度を検査します。また、嗅覚は、疲労が起こりやすい感覚であるため、原則として薄い方から順次高濃度へ移行する方法で施行します。








静脈性嗅覚検査(アリナミンテスト)

アリナミン注射液を静脈注射し、その後に生じるニンニク臭の発現時間とその匂いが消失する時間を測定する検査です。アリナミン注射液を静脈注射後、肺で拡散された嗅素(匂いの元)が呼気とともに呼出され、後鼻孔より嗅上皮を直接刺激するためにおこります。
注射部に痛みが残ることがありますので、その場合は医師にお知らせください。

その他
めったにないですが、脳腫瘍など障害部位の診断にはMRIが有用です。スティック型嗅覚検査は匂いとなる香料成分をマイクロカプセル化しパウダー状にしたスティックを紙に付着し匂っていただくものです。基準嗅力検査(TT)よりも種類が多く簡便で、日本人に馴染みのある検査臭を使用していますが、濃度の希釈は困難です。

嗅覚障害の臨床的な分類

1、
呼吸性嗅覚障害
鼻腔形態の異常のために、嗅素(匂いの元)が嗅裂深部の嗅粘膜に到達できないために起こるもの

2、末梢神経性嗅覚障害
嗅粘膜の障害によるものであり、嗅糸の障害も含まれる

3、混合性嗅覚障害
呼吸性嗅覚障害と末梢神経性嗅覚障害が合併しているもの

4、中枢性嗅覚障害
嗅球や高位の嗅覚中枢の障害によって起こるもの

【嗅覚障害について】
ニオイが解らないと味覚にも影響したり、また花の匂いや、きれいな香水の匂いなども解らなかったり,本当に不自由な生活を送らないといけないことがあります。まず、『なぜニオイが解るか』ですが、ニオイ物質は気体となって空中に浮かび、鼻の中に吸いこまれ、鼻の中の奥の上のほうにある嗅覚細胞(この周辺を嗅上皮といいます)に触れます。そこからニオイは、電気信号として神経に伝達され(嗅神経)すぐ上の大脳の中の嗅球といわれる部分に伝わり、ニオイとして認識されます。

つまり(1)ニオイ分子が嗅上皮に伝わらない(鼻がつまっているなど)これを呼吸性嗅覚障害といいます。アレルギーや、副鼻腔炎、鼻中隔弯曲症などで,鼻のつまりで鼻の中のニオイ分子が嗅上皮までに達しない場合です。長い鼻づまりと疾患に病気を書いています。

(2)嗅上皮の障害
これを末梢神経性嗅覚障害といいます。まず多いのは鼻の中の嗅上皮の細胞が何らかの感染(カゼによるウイルス感染とかまた1の鼻の疾患が、細胞まで侵した場合です)によって機能を失ったもの。また,本当に微妙な神経なので、外傷でも機能を失うこともあります。

(3)それから脳までの神経経路、または中枢の障害これを中枢性嗅覚障害といいます。脳腫瘍や外傷などでなります。また脳血管障害で起こることもあります。しかし『ニオイだけの障害』というのは脳腫瘍や脳血管障害では少なく、一番多いのはこのあたりの外傷のようです。

()神経変成疾患
Alzheimer病やParkinson病でも嗅覚障害が起こることがあります。しかし実際(2)になるか(3)になるかは鑑別が難しいところです。

(5)薬剤性嗅覚障害
症例はそれほど多くないけど報告例はあります。また経験的にですが点鼻薬、特に血管収縮性点鼻薬で起こる場合もあります

(6)先天性嗅覚障害 
 Kallmann症候群が有名です。
と簡単に書いても実際どこが原因か判別は簡便ではありません。

 ≪嗅覚障害の予防≫

嗅覚障害を予防する為には風邪をひかないことが大切です。風邪は嗅粘膜に炎症を起こすことがあり、副鼻腔炎の原因にもなります。 鼻詰りや鼻汁などが長引く場合は副鼻腔炎を起こしている可能性があります。 生活習慣を見直してみましょう。
ニオイを感じない人は、ガス漏れや火災の発生に気づかなかったり、食品の腐敗もわかりにくくなるなど、時には身の安全にかかわる問題も出てきます。こうした点には、きちんと安全対策を講じてください。
風邪が治ったのに3?4日たってもにおいが感じられない場合は早めに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。