現在行なっている研究        
広島大学耳鼻咽喉科では広島大学倫理規定に基づいて以下の研究を行っています。

現在行なっている研究現在行なっている研究現在行なっている研究



【鼻・副鼻腔】

1.好酸球性副鼻腔炎の難治化因子に関する研究

好酸球性副鼻腔炎は、副鼻腔粘膜と鼻ポリープに著明な好酸球浸潤を伴う易再発性の慢性副鼻腔炎の総称であり、疫学的にもわが国での本疾患の増加傾向が報告されている。当教室は平成22年度より厚生労働省の難治性疾患克服研究事業(藤枝班)の「好酸球性副鼻腔炎の疫学、診断基準作成等に関する研究」に参加し、副鼻腔炎手術症例の組織学的解析やデータベースの作成事業などを行っている。本疾患は疫学的に増加していることと、臨床的に通常の薬物治療に抵抗性で再発しやすいことともあいまって大きな問題となっており、現在その病因と有効な治療法を解明中である。

2.鼻アレルギーの病態に関する研究

鼻アレルギーに対する手術療法は、1)鼻腔形態の矯正とともにアレルギー反応の領域を縮小させ(下鼻甲介切除術など)、鼻腔の通気を改善させる方法、2)粘膜表層のアレルギー反応の場を変性させ(CO2レーザー焼灼など)、抗原抗体反応から連鎖的に生じるアレルギー炎症を生じにくくする方法、3)アレルギー性反応を増幅する神経ネットワークを処理し(後鼻神経手術など)、鼻アレルギーに伴う鼻過敏症状を軽減する方法がある。
これらのうち3)について、鼻アレルギーの3大症状の中でも、くしゃみと水性鼻汁は中枢反射経路の役割が主体を占めており、下鼻甲介を含む鼻腔粘膜の知覚神経である三叉神経第Ⅱ枝と翼口蓋神経節由来の遠心性副交感神経の枝である後鼻神経は、これに直接関連する。近年くしゃみ、鼻汁の制御を目的に、内視鏡を用いて経鼻腔的に蝶口蓋孔から鼻腔内に侵入する部位で後鼻神経を切断あるいは焼灼処理をおこなう後鼻神経手術が行われるようになってきた。
当教室においては重症鼻アレルギー患者に対する手術療法として、粘膜下下鼻甲介骨切除術と後鼻神経手術を合わせて行なっている。本手術により、術後のくしゃみ、鼻汁、鼻閉のすべての症状において、有意差をもって改善しており、さらに長期成績及び症状と病態の関連について検討を行なっている。

3.上気道における一酸化窒素(NO)の機能的役割に関する研究

一酸化窒素(NO)は分子量30の無色・無臭の気体である。その物理化学的性質として、不対電子をもつフリーラジカル(15個の電子を所有)であり、非常に反応性が高いことが挙げられる。NOは1991年にGustafssonらが、ヒトの呼気中にNOが検出されること、そしてNO吸入が選択的な肺動脈圧降下作用を有することを発見し、呼吸器疾患の診断における新しいマーカーの可能性と治療への応用の道が開けることとなった。多機能生理学活性物質である一酸化窒素(nitric oxide、NO)は、ヒトにおいて上・下気道全般において産生されており、呼気中でも検出可能なことより、今後鼻アレルギーや副鼻腔炎においても診断治療マーカーとしての役割が期待されている。

興味深いことにヒトの鼻副鼻腔は恒常的に多量のNOを産生していることが知られている。従って種々の鼻副鼻腔疾患においてもNOは、その濃度をモニタリングすることにより、病態を反映するパラメータとして活用できる可能性を秘めている。有症状の鼻アレルギー患者においては鼻腔NOレベルの上昇がこれまでにも報告されている。鼻アレルギーでは気管支喘息と同様に過剰産生されたNOが、炎症細胞を介した非特異的免疫応答の増強や、活性酸素種との反応を介した細胞障害作用を引き起こし、病態増悪の一因になっていると考えられている。このNO産生の増加はNO合成酵素の中でも主として誘導型NOS(inducible NOS, NOS2)の発現増強が下鼻甲介粘膜などで生じているためとされている。我々の最近の検討でも、鼻呼気FeNOの測定が病態把握に有用な指標となる可能性が示され、疾患における敏感度としてとしては59.3%(51/86例)であった。さらにスギ・ヒノキ花粉症患者においては、花粉飛散期において症状の増悪に応じて鼻呼気FeNO値のみが上昇することも確認した。

慢性副鼻腔炎ではしばしば罹患した副鼻腔洞において著明なNO濃度の低下が認められており、粘液線毛輸送機能の低下による排泄機能障害の可能性が指摘されている。内視鏡下副鼻腔手術(ESS)を施行することにより、粘膜線毛上皮の再生と修復過程が促進され、副鼻腔の換気機能と排泄路が回復する。この面でも生理的にNOが有する線毛運動の賦活作用が重要な役割を果たしているものと推察される。我々は最近、臨床的に問題となっている好酸球性副鼻腔炎(ECRS)症例において薬物療法と手術療法それぞれにおいて前向きに継時的なFeNOのモニタリングを行った。その結果口呼気と鼻呼気におけるFeNO値の測定は、治療に伴う副鼻腔粘膜の正常化と同時に、下気道病変の改善の評価を行う上でも有用な指標となりうることが示唆された。

【中耳】

4.慢性中耳炎と真珠腫性中耳炎の病態に関する研究

中耳真珠腫は非常に特殊な難治性の中耳炎であり、手術(鼓室形成術)が唯一の治療法である。臨床的に真珠腫は感染による炎症により、増殖や骨破壊が促進されるが、その機序は成因と相まって不明のままである。この真珠腫の骨破壊と増殖に関して、当教室では炎症性サイトカインをはじめとした様々な視点から検討している。

【内耳】

概 要

内耳は聴覚、平衡覚を司る器官でその障害は難聴やめまいを引き起こす。一般に内耳が傷害された場合にはその昨日の回復は困難であるとされていたが、この問題を解決するために分子生物学を応用した様々な研究を行なっている。

5.加齢性内耳障害の予防、治療法開発のための分子生物学的研究

老人性難聴、平衡障害の予防・治療法の確立のため、内耳での加齢に関る因子として、フリーラジカル、プロスタグランジンレセプター、エストロゲンレセプター、TRPチャネル、バゾプレッシン、IGF、sirtuinの内耳における局在を明らかにし、内耳での働きを解明するとともに加齢による変化を明らかにする。

内耳でのエストロゲンの分布内耳でのエストロゲンの分布

これらの因子を制御することにより、加齢による内耳障害を予防し、治療を行う方法を確立し、その結果をもとに、老人性難聴、めまいに対して今回の研究で得られた成果を臨床応用し、高齢者のQOLの大きな改善をめざす。

6.メニエール病の病態解明のための分子生物学的研究

バゾプレッシン投与による内リンパ水腫バゾプレッシン投与による内リンパ水腫

メニエール病の原因は内リンパ水腫であるがこれまでのモデルは内リンパ嚢閉塞により作成され、内心パス異種は生じるものの平衡障害が生じないという欠点があった。これを解決するためにバゾプレッシン投与などによる新しいメニエール病動物を作成している。
その他、メニエール病の治療を目的として抗酸化剤投与、プロスタグランジン投与などによる治療効果に関しても検討している。