広島大学 耳鼻咽喉科・頭頸部外科
(正式名称)
広島大学大学院 医歯薬学総合研究科
展開医科学専攻病態制御医科学講座
耳鼻咽喉科・頭頸部外科学研究室
耳鼻咽喉科・頭頸部外科のホームページに関するご意見・ご感想をお寄せ下さい。
尚、医学的なご相談やご質問にはお答えできませんのでご了承下さい。
広島大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科
〒734−8551 広島市南区霞1−2−3
Tel 082-257-5252
jibi@hiroshima-u.ac.jp ![]()
ここでは、広島大学耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診療内容、病気や治療についてわかりやすくご説明いたします。

睡眠時無呼吸症候群について
〜いびきは身体が発する危険信号〜
いびき(鼾)、歯ぎしりは他人に迷惑をかける代名詞のような存在とされているのが現状だと思います。睡眠中に発生するいびきを自覚することは極めて難しく、ほとんどの場合家族や同僚から「うるさくて眠れない」「寝る部屋は別」などいびきの騒音を指摘されていることでしょう。
いびきをかいていると一見熟睡しているように見ます。しかし実際には気道(空気の通り道)が塞がり空気の通りが悪くいびきを発生しているため、呼吸が抑制され、眠りが浅く、ほとんどが睡眠不足に陥っていることも少なくありません。疲れたときなどの一時的な軽いいびき程度であればそれほど問題にはならないと思いますが、毎晩いびきをかいたり「呼吸が止まっている」などというときには身体機能にも特に注意が必要です。
いびきは他人に迷惑をかけているばかりでなく、本人の体にも多くの危険な問題が出て来ていることがわかっています。いびきをかき、しかも呼吸が抑制され熟睡していないとなれば、日中の眠気、集中力、活力、記憶力が低下し、精神不安定でイライラしたりするようになります。
さらに「呼吸が止まっている」ことがあればただのいびきだけではなく、睡眠時無呼吸症候群も考えられます。無呼吸状態は体内の酸素不足を招き、循環器系や呼吸器系に影響を与えやがては身体に様々な障害(高血圧、不整脈、心不全、突然死)が出てくると考えられています。
いびきとはいわば身体の発する危険信号です。
いびきを知ることによって今後の治療、対策に繋げていきましょう。
いびきの原因
いびきは粘膜の振動音
いびきとは睡眠時に発生する粘膜の振動音です。主な原因としては肥満、アルコール、薬物、アデノイド、咽頭部の異常、鼻疾患などがあります。 睡眠中に咽頭や舌の筋肉の緊張が低下したときや、アデノイドなどの鼻疾患、咽頭部の障害によって気道が閉塞するときにおこります。いずれも睡眠中は空気の通り道(気道)がふさがれ狭くなり、そこに空気が通ると粘膜が振動しいびきの発生となります。
いびきは体重の増加とともにその割合も多くなります。体重が増えるに連れ、顎の周囲、首周り、喉や舌も太くなり、その結果気道が前後左右から圧迫され気道が狭くなりいびきの発生につながります。対策→減量(ダイエット)
2.アルコール
体内にアルコールが入ると気道内がうっ血し粘膜が膨張します。鼻が詰まった感じになるわけです。また舌や咽頭の筋肉の緊張がなくなり気道が狭くなりいびきの発生につながります。対策→禁酒
3.薬物
筋弛緩薬、睡眠薬、精神安定剤などは筋の緊張を緩和させる作用があり、舌や咽頭の筋肉の緊張がなくなり気道が狭くなりいびきの発生につながります。
薬物の中でも睡眠薬、精神安定剤、筋弛緩薬などの薬は精神や筋肉の緊張を緩和(リラックス)させる作用があり、とくに睡眠時の服用では、舌、顎の筋肉の緊張が日中起きているときよりも緩和されます。その結果、舌が気道側に落ち込みやすく、さらには気道を圧迫させいびきの発生や睡眠時無呼吸症候群につながります。
4.鼻疾患
正常の呼吸は鼻を介しておこなわれますが、鼻や鼻腔に疾患がある場合には口呼吸となります。口を開けると舌がのどに落ち込みやすくなり、気道が狭くなる原因になります。アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎などは鼻の通りが悪くなりがちで、粘膜の抵抗が大きくなりいびきの発生につながります。
5.咽頭部の異常
咽頭扁桃(アデノイド)、口蓋扁桃(扁桃腺)、口蓋垂(のどちんこ)、口蓋弓(のどの粘膜)、舌根(舌の付け根)の炎症や肥大により気道が狭くなり、いびきの発生につながります。
骨格:小顎の女性など、顎が小さいといびきを発生することがあります。
年齢:年齢による筋力の低下によりいびきを発生することがあります。
いびきにはこのような原因がありますが、睡眠時に呼吸が止まり無呼吸になっているときには睡眠時無呼吸症候群が考えられます。
いびきの原因(詳細)
薬物によるいびき
薬物の中でも睡眠薬、精神安定剤、筋弛緩薬などの薬は精神や筋肉の緊張を緩和(リラックス)させる作用があり、とくに睡眠時の服用では、舌、顎の筋肉の緊張が日中起きているときよりも緩和されます。その結果、舌が気道側に落ち込みやすく、さらには気道を圧迫させいびきの発生や睡眠時無呼吸症候群につながります。
鼻疾患によるいびき
正常の呼吸は鼻を介しておこなわれますが、鼻や鼻腔に疾患がある場合には注意が必要です。具体的原因としてアレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、鼻中隔湾曲症などのがあります。
症状は鼻閉塞(鼻が詰まること)が中心で、鼻閉により口呼吸になると舌が気道に落ち込むため、気道が狭くなり、いびきや睡眠時無呼吸症候群が引き起こされると考えられます。成人より気道の狭い新生児や乳児にこのような症状がある場合は呼吸困難を引き起こすこともあるので特に注意が必要です。また、高血圧に対する降圧剤(血圧を下げる薬)の中にも鼻の血管を広げるように働くのものもあり、鼻づまりの原因になります。
鼻疾患によるいびき(詳細)
副鼻腔炎
副鼻腔炎とは副鼻腔内の炎症のことを言います。
顔の骨中にある空洞を副鼻腔(ふくびくう)といいます。副鼻腔はいくつもあり「上顎洞(じょうがくどう)」、「前頭洞(ぜんとうどう)」、「篩骨洞(しこつどう)」、「蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)」からなっています。副鼻腔と鼻腔はつながっていて鼻呼吸をすることにより空気の交換が行われます。その内部は粘膜に覆われ、鼻の中が乾いたりしないよう温度や湿度の調整をする役目を持っています。
普段、呼吸は鼻で行いますが、副鼻腔内に炎症や障害があると鼻呼吸がしずらくなり、無呼吸やいびきの原因となるほか口呼吸になりやすく、口腔内の乾燥による口臭、咽頭および扁桃炎にもつながります。
鼻中隔彎曲症
アレルギー性鼻炎には、季節性のものと通年性のものがあります。
花粉症のように季節ごとに起こるものが季節性アレルギー性鼻炎。
ハウスダスト、カビ、ダニなど季節に関係なくくしゃみ、鼻水、鼻づまりなどの鼻症状があらわれるものが通年性アレルギー性鼻炎です。
季節性である花粉症の場合は、飛散期を越えれば徐々に治まり、日常を送ることができます。ところが、通年性(ダニ、ハウスダスト)の場合は年間を通してアレルギー反応を起こし日常生活に支障をきたします。
通念性の原因の一つとして、現代建築の住宅構造にあるといえるでしょう。気密性が増し、カーペット、じゅうたん、エアコンの普及などにより生活環境の中にアレルギーの原因となるダニ、ハウスダストなどが急増しやすいのが現状です。まめに室内の掃除や換気をすることに心がけましょう。
咽頭部の異常によるいびき
咽頭扁桃(アデノイド)
咽頭部にある免疫組織で、風邪をひいたときなどにはこの部分が腫れて痛くなります。アデノイド肥大をたんにアデノイドともいいます。
口蓋扁桃
いわゆる「扁桃腺」のことです。咽頭部を狭くする代表的な組織です。
口蓋垂
いわゆる「のどちんこ」のことです。まれに大きく肥大し咽頭部を狭くすることがあります。
口蓋弓
「のどちんこ」から左右にのびる粘膜のことで、前後に分かれており、前口蓋弓と後口蓋弓の間に口蓋扁桃(扁桃腺)があります。これらの粘膜は、口蓋垂とともに食物や空気が鼻に抜けない様に鼻と咽頭(のど)の分離する働きがありますが、厚さや形態により同部を狭くすることがあります。
舌根
舌の付け根で、この部位にも舌根扁桃という免疫組織があります。肥満や炎症によりこの部分が大きくなり、寝ているときに後方に落ち込むと、咽頭部が狭くなります。
上記の部分が肥大や炎症を起こすと咽頭部が狭くなり、起きているときは問題がなくても、睡眠時にいびきの発生や無呼吸症候群になりやすくなります。肥大が著しいときには扁桃摘出術、アデノイド切除術が必要となります。気道の狭い新生児や乳児にこのような症状がある場合は呼吸困難を引き起こすこともあるので注意が必要です。
身体に異常はないが「いびき」をする
骨格:顎(あご)が小さい(細い)
骨格:顎が小さい(細い)といびきを発生することがあります。顎が小さくなるにつれ、舌が顎に収まりきれず気道側に落ち込みやすくなります。その結果気道が狭くなり呼吸の抵抗となっていびきを発生します。最近は食生活の変化などで小顎の女性が増えていることからいびきの発生になることもあります。下顎に対して舌が大きい場合には舌の側縁に歯形がついてぎざぎざの舌になることが多く、口をあけた際に口蓋垂(のどちんこ)や口蓋扁桃(扁桃線)がみえないといった状態になります。
顎が後方(喉側)に移動しているときもいびきを発生することがあります。これら骨格が関係している場合、とくに身体の異常、肥満、鼻や喉の異常に関係なくいびきを発生することがあります。
年齢による筋力の低下
筋力が低下すると、張りが無くなり舌や顎周囲の重さを支えられず、結果として気道が狭くなります。気道が狭くなると呼吸の抵抗となるためいびきへと移行することがあります。
子供のいびき
子供のいびきの原因
一般的に子供はいびきはかきません。子供の寝息は「すやすや」と表現されているように、通常は鼻が通っているのです。もし子供がいびきをしているときには、何らかの影響で気道が狭くなっていることを疑う必要があります。気道が狭くなると呼吸するときに抵抗が生まれるためいびきとなっているのです。
子供は日常活発に動き回っています。もしも日中眠気があったり、やる気がなかったりするようだと、いびきによる睡眠不足も疑われます。とくに、無呼吸などの症状を起こしているようであれば体内の脳や臓器は十分な酸素が得られなくなることも考えられます。また、睡眠中に分泌される様々なホルモンが、十分な睡眠が取れないことにより、減少するため身長を中心とした身体の発育に影響が出る可能性もあるため注意が必要です。
原因の中ではアデノイド(咽頭扁桃)増殖症や口蓋扁桃肥大が最も多いようです。
アデノイドの増殖のピークは5歳〜7歳で、口蓋扁桃も10歳位になると縮小しますが、いびきの程度がひどい場合や頻繁に扁桃炎を繰り返す場合は手術の対象となります。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎が原因となることがあります。これらは環境汚染や現代建築の住宅構造にあるといえるでしょう。気密性が増し、カーペット、じゅうたん、エアコンの普及などにより生活環境の中にアレルギーの原因となるダニ、ハウスダストなどが急増しやすいため、徐々にアレルギー性鼻炎の発症する年齢が低下してきているのが現状です。
子供のいびきの診療科
こどものいびきの原因として上記の扁桃肥大や鼻疾患などが考えられます。診療科は小児科、耳鼻咽喉科などです。
睡眠時無呼吸症候群とは
睡眠時無呼吸症候群の定義
一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこる。
または、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上おこる。
実際に呼吸を止めてみると辛いことがわかります。
厚生省では睡眠1時間あたりの低呼吸数が20回以上おこる場合では、5年後の生存は84%(5年後の死亡率は16%)と報告しています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea
Syndrome)は、睡眠中に呼吸が止まった状態(無呼吸)が断続的に繰り返される病気です。その結果十分に睡眠がとれず、日中の眠気、集中力、活力に欠ける、居眠りがちになる、居眠り運転で事故や重大事故などを起こしやすくなります。
治療をせずに放置しておくと生命に危険が及ぶ場合もあります。よって適正な症状分析と診断、治療、予防などの対策が必要になります。眠っている間に呼吸が数十回、ときには数百回と止まるようであれば、体内の酸素不足が深刻になってくるでしょう。
酸素不足がおこれば「寝苦しい」「息苦しい」などの症状が現れ、睡眠不足がおこります。また酸素不足は循環機能に負担をかけ、不整脈、高血圧、心不全、糖尿病が現れ事故や突然死などで生存率が低くなるなど無呼吸症候群には様々な問題がでてきます。
いびきのあとに呼吸が止まるようなときには無呼吸症を疑い早めの治療が必要です。
無呼吸症と生存率
生存率の低下
無呼吸症候群が重度に移行した場合生存率が低くなります。
厚生省研究班の調査では、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が20回以上おこる場合、5年生存は84%(死亡率は16%)と報告しています。8年ではさらに下がって60%という報告もされています。
無呼吸症では血中の酸素不足により心肺機能に多大な負担が掛かります。また、脳の酸欠を招くことから、死因は脳梗塞、心筋梗塞やその他の合併症などがあります。睡眠中や朝方に死亡する例が多いとされています。脳卒中といびき
脳卒中
脳卒中は急性(重症)の脳血管障害(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)などの総称です。脳の血管が破れる、詰まるなどの場合に起こります。発作が起こる前に手足の痺れ、ふるえがみられることもあります。
突然意識を失い手足がふるえる、痺れる、呂律が回らない、大いびきをかいて寝る。このような症状が出るようであれば脳卒中かもしれません。高齢者や普段アルコールや薬物を飲まなず、いびきもかかない人が突然「大いびき」をかいたときには十分注意をしましょう。
症状
いびきをかく
とくに若いころの体重に比べて大幅に増加した場合には睡眠時無呼吸症の傾向が強く現れます。例えば20代の頃の体重が50キロであったものが80キロになった場合は肥満傾向にあるといえるでしょう。
身体全体の重さが増えれば当然顎や首周が太くなるなります。結果として睡眠時には気道を前後左右全体で圧迫させ気道が狭くなっている可能性があります。
また、舌も肥大するため睡眠時にはその重さで気道に落ち込みやすく気道が狭くなり、いびきの発生へとつながります。
不眠(寝不足)
いびきをかくということは呼吸の抵抗が増えているということです。日常起きているときには舌の落ち込みや咽頭部の圧迫は物理的になり難いですが、寝ている間には圧迫され気道が狭くなります。狭くなったところに空気を通すには相当な力が要ります。
また、無呼吸症の場合では寝ているときには気道の閉塞がおこり肺まで空気が通らなくなります。このため眠っているように見えても、実際には呼吸できず息苦しくなり寝付けなかったり頻繁に目が覚めたりしていることが多いのです。
日中眠くなる
注意力散漫や突然の眠気、疲労感があり大きなミスをしたり交通事故を起こすとされています。
これは前途の不眠により睡眠不足になっているため日中は眠気が襲ってくるようになります。睡眠不足による疲労感と眠気により集中力の低下、注意力散漫、活力、判断力、記憶力などの低下がおこります。居眠り運転による交通事故や重大事故にもつながります。
夜間の多動
寝相が悪くよく動きます。
手足をバタバタさせ、ばんざいなどをします。
いびきをかくときは空気の抵抗が増えているため通常の呼吸が出来ず苦しくなります。無呼吸ともなれば酸欠状態に陥るため息苦しさを感じ、睡眠中に体位を変えようと寝相が悪くなります。
特徴的なものとして、よく動く、ばんざい、手足をバタバタ、立位、布団からはみ出す、などがあります。
早朝の頭痛
起床時に慢性的酸欠による頭痛が起こる。
無呼吸症では十分な酸素が得られず酸欠状態となり、とくに起床時には慢性的酸素欠乏による頭痛が起こります。また体内の換気ができなくなり高炭酸ガス血症になり起床時の頭痛となります。
重症の場合では低酸素血症がおこり肺高血圧症や右心不全の合併症がおこります。心不全などの症状が出ると予後は不良です。
性格の変化
精神不安定、抑うつ、性欲、食欲不振など。
睡眠不足により日中の眠気や疲労感が毎日襲ってくると何時しか性格にも変化をきたします。うつ病に似た抑うつなどの症状が現れます。無呼吸症による抑うつはしばしばうつ病と誤診されやすいようです。
また精力減退やインポテンツ。夜間の覚醒、多動(動き回る)のために発汗がおこることもあります
抑うつ
「抑うつ」とは「うつ病」ではなく幅広い「うつ状態」のことです。
気分が沈み、晴れ晴れしない重苦しい気分のことをいいます。
これに対して「うつ病」は落ち込んだ気分が長く続き、生活に支障が出る場合をいいます。近年では、うつ病とはいえない「うつ状態」の人が増えています。
睡眠時無呼吸症候群の場合では睡眠不足からくる日中の眠気、気力の低下、食欲不振などの症状が抑うつ状態といえ、うつ病と誤診されることがあるようです。40歳以降の中高年に現れやすくなります。
咳き込む
無呼吸状態に陥ると、しばらくの間呼吸が出来なくなります。このまま呼吸が出来なければでは生命にとってまさに危険でしょう。それを無意識の間に回避しようとするため、呼吸が止まった後に大きく息を吸い込むときがあります。
このとき多くの空気を吸い込むため、空気圧で咽頭部などの分泌物が気管支から肺へ入り込もうとします。気管支ではそれを防ぐため生体反射として咳き込むことがあります。
高炭酸ガス血症 低酸素血症
高炭酸ガス血症
無呼吸に陥ると呼吸が出来なくなり、気道の最も末梢である肺胞で換気が十分に出来なくなり呼吸不全に陥ります。肺の重要な機能の換気は大気中の酸素を取り入れ、二酸化炭素を大気中に排出することです。しかし肺胞での低換気が持続的におこれば動脈血の炭酸ガス分圧(PaCO2)の上昇、酸素分圧を下降させ、身体各所の組織呼吸を障害し生命の危機を招きます。頭痛もそのひとつで脳が発している危険信号なのです。
低酸素血症
低酸素血症と高炭酸ガス血症は同時に現れます。重度の睡眠時無呼吸症候群では低酸素血症が問題となってきます。睡眠中に周期的に強い低酸素状態になることが分かっています。低酸素血症が持続されると不整脈、意識障害が引き起こされ、生命にが危険があるといえるでしょう。
肺高血圧症、右心不全
肺高血圧症
心臓から肺に血液を送り届ける肺動脈といいます。この肺動脈の血圧が高くなることを肺高血圧症といいます。
この病態はさまざまな原因によって起きます。例えば先天性心疾患や弁膜症や膠原病や肺塞栓病です。原発性肺高血圧症とは、原因が明らかでない肺高血圧症のことをいいます。
右心不全
肺高血圧症になると血液循環が十分出来なくなり、疲労感、息苦しくなる、動悸、場合によっては気を失うこともあります。また、足のむくみ、肝臓の腫脹、腹水が現れ心不全と言います。
心臓は心室や心房といったいくつもの部屋に分かれています。肺動脈に血液を送る部分は右心室といいます。通常右心室は高い圧力の耐えられる構造ではなく、肺高血圧症で圧力の高い状態が持続すれば右心室が機能しなくなり結果として心不全で命を失う可能性もあります。
無呼吸症の検査
ポリグラフ検査
実際に「睡眠時無呼吸症候群」かどうかを確定診断するには専門の検査機関でポリグラフという装置を用いた検査入院(1〜数日)が必要です。
ポリグラフ検査は睡眠中の現象を詳しく記録解析することができ、無呼吸症の状態を知ることができます。睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシー、周期性傾眠症などの疾患や不眠の検査に用いられています。
身体の各部、頭部、胸部、胴部、脚部に約20個の電極を取り付け情報を記録解析します。睡眠中の身体状態、脳波、眼球運動、筋電図、呼吸曲線、電気皮膚反射、心電図、血圧などを観察することが出来ます。
<無呼吸症の定義>
一晩(7時間)の睡眠中に10秒以上の無呼吸が30回以上おこる。または、睡眠1時間あたりの無呼吸数や低呼吸数が5回以上おこる。
検査費用は約数万円程です。
個室や食事など医療機関により異なります。
治療法
生活習慣の改善
比較的軽度のいびきの場合は家庭でのちょっとした工夫や日常生活の改善で治ることもあります。例えば横向きに眠る、枕を低くする、アルコールを控える、減量・ダイエットする、睡眠薬や筋弛緩薬をやめる点鼻薬を使うなどがあります。
防止対策でもいびきが改善しなかったり、無呼吸症を併発しているなどの際には、より効果の高い専門治療が必要となります。 現在治療として確立しているものは負担の少ない
マウスピースから鼻マスク治療、外科手術などがあります。
これらの治療方法は市販のいびき防止グッツなどとは異なり専門医療であるため、いびきを防止する効果は絶大です。また睡眠時無呼吸症候群の治療としても極めて効果が高いと言えるでしょう。詳しくは医師の診断を受けてください。
マウスピース(歯科装具)
適応
: いびきと比較的軽い無呼吸症候群
この方法は身体に負担をかけない新しい治療法として、いびきと比較的軽い無呼吸症候群(軽度〜中度)に用いられています。通常のマウスピースとは異なり、口にはめ込むと気道を拡げる作用があります。肥満による気道の閉塞や圧迫、顎や舌の沈下を防止できるほか、小さく細い顎などが原因している場合にも効果が得られます。
装着後は気道が開くので空気が通り症状も減少します。睡眠中息苦しかった人も熟睡できるようになります。また、呼吸がしやすくなると体内の酸素量も増加し心肺系の負担が減り、高血圧や循環器系などの合併症を抑制することができます。防止対策で効果が得られなかった人にも有効です。
他法と比べ身体の負担が少なく、小型のポケットサイズで旅行などに持ち運べます。負担をかけずに治したい人はこの方法をお勧めします。ただし、歯がなかったり鼻に病気があると適さないこともあり、ご希望の方は利点・欠点をご覧下さい。
いびき治療・睡眠時無呼吸症候群の治療法
マウスピース
画像は歯型と装置です。各個人の上下それぞれかみ合わせに合わせてハンドメイドで作成します。
素材は薄く丈夫なアクリル樹脂です。
気道拡大などの手術や鼻マスクなどの装置は必要としません。身体にかかる負担が少なく、また他法と比べ割と安価(数万円)に作製出来ます。
鼻マスク(CPAP)に違和感がある方や外科手術を検討されている方にお勧めいたします。
子供にマウスピースを使いたい
顎の発育を妨げるため注意が必要です
子供の顎は完全に発育していません。使用すると顎の発育を妨げたりかみ合わせが悪くなることがあります。
顎の発育に合わせマウスピースを頻繁に作り替えることが出来れば可能な場合もあると思いますが、なるべくなら控えた方が良いでしょう。もし、18歳以下に使用する際には十分注意をする必要があります
鼻マスク(CPAP:持続陽圧呼吸療法)
適応
: 重度までの睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群に用いる装置で頭部固定のゴムマスクを鼻に装着し、ポータブルのコンプレッサーを使用して加圧した空気を人工呼吸器のように鼻から気道に送り込みます。効果が高く睡眠時無呼吸症候群の治療として用いられています。
気道内を陽圧にさせ、空気を人工的に送り込むことが可能です。舌の落ち込みによる閉塞も防止することが出来ます。症状は翌日より大幅に改善されるため、熟睡出来るようになります。
また、無呼吸症は睡眠中酸欠状態になりやすいため循環系合併症の心拍数増加、高血圧、不整脈といった症状が現れます。装置を使用することにより空気を十分取り入れられ、体内の酸素量も増えることになります。よってこれら合併症の抑制にも有効な方法でしょう。ただし、弊害もあり寝苦しいなど不快感が出ることや、加湿機能の付いていないタイプは喉が渇いたり、鼻が悪いと使えないことがあります。慣れなかったり使えない場合はマウスピースや手術などの治療になります。
装置はポータブルですがホースやマスクの手入れが必要で持ち運びには不便もあり、電源がないところでは使えないことがあります。また、いびき治療には保険が適応されません。購入には数十万円程度必要です。
保険の適応
・入院検査で中度〜重度の無呼吸症と診断されること。
・毎月一度通院が可能であること。
鼻マスクの空気圧が気になる
マウスピースとの併用で空気圧を下げる
鼻マスクは即効性で効果の高い装置ですが、しばしば圧搾空気の圧力に悩まされることがあるようです。圧力を下げるにはマウスピースとの併用で気道を広げると、通りが良くなり空気圧を下げることが期待出来るでしょう。
外科手術
適応
: 病的な症状や病気などが原因のとき
気道内の扁桃の極端な肥大、口蓋垂(のどちんこ)が極端に長いなどのような病的症状には外科手術の必要があります。いびき、睡眠時無呼吸症候群の手術で最も広く行われているものが、UPPPとLAUPです。
両者とも気道が狭く閉塞をおこさないようにの形を変えることにあります。また、外科的に咽頭部を拡大するので呼吸がしやすくなり体内の酸素量も増加します。酸素量が増えれば心肺系の負担が減るため、いずれも高血圧や循環器系などの合併症抑制にも有効でしょう。
UPPP睡眠時無呼吸症候群に有効な方法です。
口蓋垂を含めた軟口蓋を外科的に切除します。次に口腔側と鼻腔側の粘膜とを縫い合わせて上咽頭部の拡大と突っ張った緊張状態を作ります。
上咽頭部の拡大緊張が保てれば落ち込んでいた舌や咽頭部分の空間が確保できます。
LAUP
睡眠時無呼吸症候いびきのレーザー手術(Laser Assisted Uvula Palatoplasty 「LAUP」)
レーザーで部分的に焼き切ります。
UPPPより切除する領域は少なく、麻酔も局所麻酔で行えます。対象はいびきの治療となります。
咽頭(のど)の粘膜の厚みや形態によっては、切除することによりかえって狭くなることがあり、すべての方に行えるというものではありません。
咽頭部や舌の落ち込み以外の原因の場合
扁桃肥大→扁桃摘出術
アデノイド→アデノイド切除術
鼻中隔湾曲症→鼻中隔矯正術
など上記原因の除去が必要な場合があります。
アレルギー性鼻炎→下鼻甲介レーザー焼灼術、粘膜下下鼻甲介骨切除術・下鼻甲介切除術など、鼻腔の中での容積を制限する下鼻甲介の容積を減量することを目的とした手術が必要になることがあります。
外科手術はいびき、睡眠時無呼吸症候群の原因となる粘膜などの切除、咽頭部の拡大手術により呼吸がしやすくなることを目的としていますが、上記や他の治療で予後が不良のときには気管切開が必要なこともあります。
気管切開
適応
: 生命維持が危機的状況などのとき
生命の危険を脅かすような重度の睡眠時無呼吸症や気道の閉塞が著しい場合には気管切開による気道の確保が必要となります。また、他の外科手術で効果が見られず、放置すると危険な症状の場合にも気管切開は必要でしょう。
重度の無呼吸症は睡眠中酸欠状態が著しいため循環系合併症の心拍数増加、高血圧、不整脈といった症状が現れます。気管切開する事により、睡眠時の舌や下顎の沈下による閉塞や扁桃肥大などの症状があっても楽に呼吸することが出来ます。また、空気を十分取り入れられ、体内の酸素量も増えることになり合併症の抑制にも有効です。
ただし、声を出す時には気管にフタをしなければならなかったり、消毒を怠ると細菌感染することがあります。このため切開部は毎日イソジン等で消毒したりガーゼの交換をするなど気管切開部の衛生管理には十分な注意が必要です。