科学技術振興事業団の戦略的基礎研究推進事業(研究領域:環境低負荷型の社会システム)の一環として、森林衰退と大気汚染との因果関係を解明する研究プロジェクトが平成8年度から5年間の予定で開始された。この報告書は、平成9年度において得られた研究成果をまとめたものである。科学技術振興事業団の戦略的基礎研究推進事業は、科学技術庁がその所轄法人である科学技術振興事業団を通して、明日の科学技術の開拓や新産業の創出につながる知的資産の形成を目的として、大学や公立研究機関に所属する研究者のなかから公募でプロジェクトを選択し、5年間の予定で重点的な研究を実行させるものである。この研究プロジェクトは、上記の課題を解明するために、全国各地で森林衰退の実態と大気汚染との関連性を調査するのを大きな特色としている。観測地域が全国に広く分散しているため、便宜的に4つの研究グループ(九州山岳、瀬戸内沿岸、乗鞍岳、丹沢・大山地域)に分けて研究を実施する。一口に森林衰退といっても、多くの針葉樹林や広葉樹林が存在し、その衰退の程度およびメカニズムは一様ではない。比較的研究が活発に行われてきた上記の4つの地域を集中的に調査し、その衰退の実態とメカニズムを明らかにする予定である。ちなみに、平成9年度のプロジェクト参加研究者は26名、研究員や技術員等(科学技術振興事業団派遣)6名、大学院生12名である。他に、10数名の研究協力者に観測や実験の補助をお願いした。
平成9年度は、前年度(初年度)の研究開始時に課題であった事項(4研究グループ研究体制の確立、研究員等の採用、大型機器の購入・活用、)が前年度中にほぼ達成されたため、4月1日からスムーズに研究を開始することができた。研究内容においては、平成8年度の研究成果を踏まえて、特に次の事柄に力点を置いて研究を行った。すなわち、1)リモートセンシングによる森林衰退の実態解明、2)野外観測による森林衰退メカニズムの解明、3)室内実験(暴露実験)による森林衰退メカニズムの解明である。1年間を振り返ってみると、1)および2)については大きな知見が得られたと信じる。3)については、暴露実験(特にオープントップチェンバー実験)の立ち上げに大きなエネルギーを費やした。暴露実験は長期間(2~3年)継続する必要があるため、成果が出るのは平成10年度以降になると思われる。
平成9年12月8日、9日に広島市において、大気汚染による森林衰退に関する第一回国際シンポジウムを開催した。6名の外国人招待研究者、5名の国内招待研究者を含む16名の研究者による講演および質疑討論があり、約130名の専門家および一般市民がこれに参加した。また12月10日には、広島県において森林衰退が顕在化している山林の視察・調査を、一部の参加者で行った。このシンポジウムにおいては、日本および世界における森林衰退の現状の把握および将来予測、衰退の様式・機構解明の研究に関して専門家および一般市民も含めて活発な討議が行われ、本研究プロジェクトの推進にも大きく貢献した。
この研究プロジェクトを実施するに当たって、科学技術振興事業団・基礎研究推進部の臼井勲部長およびスタッフ、環境低負荷型の社会システム研究事務所の茅陽一研究統括、佐藤成生技術参事、鎌田基一郎事務参事およびスタッフには多大なご援助およびご指導を頂いたのでここに感謝を表明する。なお、この研究プロジェクトに関してご意見やコメント等があれば下記までご連絡いただきたい。忌憚のない批判やご提案を特に歓迎する。
平成10年7月
〒739-8521東広島市鏡山1-7-1
広島大学総合科学部
佐久川弘
Tel & Fax: 0824-24-6504
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