TOEICについて
−屁理屈をこねます−
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TOEIC 広島大学 導入 英語教育 到達目標型教育
Since 2003.2.28. Last Modified 2003.3.4.
平成15年1月以来,広島大学で平成15年度入学生から一斉にTOEICを実施し,これを教育内容にも導入するという話が報道され,あれこれ尋ねられることがあります。自分なりのまとめ,兼,質問されたときの回答として,いろいろ書いておきます。
なお,この文書は「広島大学大学運営戦略会議TOEIC導入を中心とした外国語教育改革ワーキング・グループ」の委員としてだとか,「広島大学部局長会議TOEIC実行委員会」の委員としてだとか,「広島大学情報メディア教育研究センター」の教官としてだとか,そういう公式な見解ではありません。ただ,ワタシが尋ねられたらこう答えるだろうな,というものを書くだけです。もちろん,自分なりに公式な文書などに基づきますが。
Q なんで広島大学でTOEICを導入することになったんですか?
A 平成14年7月に広島大学の大学計画委員会が「到達目標型教育に向けて」という答申を出しました。そこでは,平成16年度から,到達目標型教育,すなわち,到達目標をできるだけ明確に設定し,教育を行い,教育効果を測定し,測定結果を教育に活かす,ということが述べられています。この到達目標型教育は,小学校・中学校・高等学校における ,目標に準拠した評価(いわゆる絶対評価)にも沿う,いわば日本の教育界全体における動きの一環でもあります。
特に英語では英検・TOEFL・TOEICのように広く普及したテストがあるわけですから,それらを用いることが答申で述べられています。また,答申では,英語は平成15年度からTOEICによる測定を実施し,データ収集と分析を行い,目標設定を年度内に済ませ,平成16年度にはすぐ到達目標型教育に移行するための準備をすることが述べられています。
Q で,なんでTOEICなんですか?
A その答申では,上述の3種のテスト(英検・TOEFL・TOEIC)についても,それぞれ比較されています。概要をかいつまむと,
ということです。したがって,答申ではTOEICが選択されたという次第です。加えて,
などという事情もあり,実施容易性という面やスコアの用途という面からもTOEICが望ましいというわけです。
Q 具体的に,いつ実施するのですか?
A 5月と2月を予定しています。学生は入学したての5月に受験し,その後,1年次・2年次・3年次の終わりである2月に継続して受験するということです。
Q いきなり平成15年度から全学年に実施するのですか?
A いえ,年次進行を予定しています。平成15年度は1年生のみ,平成16年度は1・2年生,平成17年度には1・2・3年生,というかたちです。
Q 受験料がひとりあたり7千円弱だから,高いのではないですか?
A 本学で実施を予定するのは,TOEIC SP(いわゆるTOEIC)ではなく,TOEIC IP(上述の団体受験特別制度)です。受験料は税抜きで3,850円,賛助会員価格で2,850円,500人以上一斉受験の割引価格で2,350円となります。
Q TOEIC SPとTOEIC IPの違いを教えてください。
A 話すと長くなります。すでに書いたものがありますので,「TOEICとTOEIC IPとカレッジTOEICについて(http://home.hiroshima-u.ac.jp/flare/test/toeic/whatistoeic.html)」をご覧ください。TOEICのサイト(http://www.toeic.or.jp/toeic/)も有用です。
Q なぜ受験料を大学が負担するのですか?
A 補足しますと,暫定的に,平成15年度の2回(5月・2月)は,大学が受験費用を負担します。平成16年度以降については,検討中(平成15年2月28日現在)です。
上述のように,平成15年度については,大学側としても到達目標設定のためのデータ収集という目的もあります。そのため,全員に受験を義務付ける以上は,大学が負担すべきであるという答申が「TOEIC導入を中心とした外国語教育改革ワーキング・グループ」から出されました。それらを踏まえて ,大学が負担することになりました。
Q TOEICで高得点を取ることを目標にするのですか?
A まったくもって違います。上述のように,TOEICを用いて測定を行うのは,本学の英語教育の目的に沿った教育効果を測定する一手段であり ,目的ではありません。本学の英語教育の目的は,概して言えば「英語によるコミュニケーション能力の育成」です。その目的における教育効果を,総合的な英語コミュニケーション能力を測定するTOEICで測ることに ,不整合はありません。
Q 英語教育の効果測定はTOEICだけで十分ですか?
A そうは思いません。そう思っている教官は一人もいないと思います。
英語能力には理解能力と発表能力があり,細分すればたとえばCanale and Swain(1980)にしたがって文法能力・社会言語学的能力・談話能力・方略能力があるとしましょう。媒体には音声言語と文字言語があります。
TOEICの問題形式は,リスニング(音声言語)100問とリーディング(文字言語)100問です。その2つの形式で,かなりまんべんなく,理解能力と発表能力を測定します。
ただし,発表能力については,実際に言語運用を行って発表するというわけではなく,与えられた選択肢の中から適当なものを選択するという解答方法です。これでは直接的に発表能力を実際の言語運用から測定することにはなりません。ただし ,実際に全受験者に言語使用をさせて,それを測定するのも評価するのも,膨大な労力がかかるうえに,標準化された方法はありません。
したがって,TOEICのみを用いて英語教育の効果測定を行うことは,あくまで暫定的な処置としてとらえるのが自然でしょう。
Q TOEICは何点満点ですか?
A 理論的には,10点から990点の間で,5点刻みでスコアが示されます。1問何点という,単に正答数に基づくものではなく,高度な統計手法である項目応答理論を用いて推定されたスコアです。項目応答理論の説明は避けますが ,偏差値がもっと進化したもの,とでも考えてください。
Q TOEICのスコアは確かなものですか?
A そんなわけはありません。なにごとにも測定誤差はつきものです。TOEICスコアは,受験者の「真の得点」と測定誤差とを合算したものと考えてください。
TOEIC Technical Manual (http://www.toeic.com/pdfs/TOEIC_Tech_Man.pdf)において公開されているように,TOEICスコアというのは「約3分の2の確率で,そのスコアからプラスマイナス35点の範囲に真の得点がある」ということを示すものです。詳しい統計学上の説明は避けますが,もちろんプラス1点とプラス5点とプラス10点が同じ確率で起こるわけではなく,誤差が小さい場合の確率の方が高いです。確率論的には,ごく稀に,35点以上(または以下)の誤差も考えられますが,極端に誤差が大きいことはあまり考えられないでしょう。
Q TOEICで600点取らないと卒業できないのですか?
A 一部そういう報道をされたりそういう解釈をされたりしていますが,そんなことはありません(平成15年2月28日現在)。もちろん,学生の単位認定や卒業判定を行うのは各学部等ですから,そのような動きになるかもしれませんし,ならないかもしれません。
ただし,TOEIC導入,すなわちTOEICを用いて英語コミュニケーション能力を測定することの導入,この経緯について上述のことを再度説明します。到達目標を設定し,教育を行い,その教育効果を適切に測定し,測定結果を教育方法へ還元することです。教育効果を測定することがそのまま卒業要件にするということは,ちょっと短絡にも思われますし,そもそも今回のTOEIC導入の理念とは異なるものです。
Q 目標を設定しないと学生が勉強しないのですか?
A 到達目標型教育の目指すところは,上述のとおり,目標設定→教育→教育効果測定→教育へのフィードバック,という流れです。学生が勉強しないから目標を設定しようという流れではありません。目標を明確にし,教育効果を測定した結果をさらなる教育活動へ役立てようとする,教育の質を高めるためのものです。もちろん,その副産物として,目標が明確になった学生がこれまで以上に学習に前向きになるということも考えられますが,あくまで副産物です。
Q 大学なのに語学学校化するのですか?
A 広島大学が目指すものは「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」です。細分すると「世界トップレベル」として国際的な競争力を持ち,「特色」ある教育・研究活動などを行い,「総合研究大学」として文系・理系・複合領域などのすべての分野における研究を行う大学です。
それら細分化された目標のはじめにあるように,世界的に活動・交流するためには,外国語コミュニケーション能力,特に英語コミュニケーション能力が必要であり,研究成果の発表や国際的学術交流などの成否もそれにかかってきます。
つまり,そういう大目標に向かって,それを達成するために英語コミュニケーション能力の育成が必要なのです。確かに英語コミュニケーション能力を伸ばすというところだけ切り取れば語学学校や専門学校と変わらないかもしれませんが,英語コミュニケーション能力を育成する目的を抜きにして考えてはいません。
なお,この類の質問には,大学の方がいろいろな意味で高く,語学学校や専門学校が低いという序列を前提にしている場合があります。これは間違いです。それぞれの学校が,それぞれの目標に向かって,それを達成するために教育活動などを行っているのです。本学の場合には,大学として,「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」を目指すというだけの話です。
Q TOEICなどの試験は,受験者の能力を証明する資格試験的な要素のあり,各学生に利益になるものだから,受験は各学生の自主性に任せるべきではないですか?
A これも一部上述の繰り返しになりますが,説明します。広島大学の教養的教育において,ほぼ全ての学生にとって,英語科目は必修となっています。それぞれの学術分野の観点から,ほとんどの学生にとって専門教育の中にも英語科目が組み込まれています。そのように,いわば大学全体として「世界トップレベルの特色ある総合研究大学」であるために行っている英語教育の客観的な目標を設定し,教育効果の測定を統一して行うのが目的です。その際に,さまざまなテストや,自作の問題なども検討しましたが,もっとも適していると判断されたものがTOEICであったというわけです。
原義的には広島大学の教育の質を高めるためにも役立つうえに,二次的には各学生にとっては利益にもなるというのであれば,悪い話ではまったくありませんよね。
各学生の自主性ということに関しては,大学生協が「カレッジTOEIC」ということでTOEIC IPを年に5回(8月を除く偶数月),キャンパス内で実施しています。また,情報メディア教育研究センターは「TOEIC SP(公開試験)」を,賛助会員価格として\1,000引きで年に6回(奇数月)キャンパス内で実施しています。意欲的な学生が自主的にTOEIC受験に取り組む環境は整っています。
なお,TOEICのみに偏らず,情報メディア教育研究センターではTOEFLの模擬試験版であるTOEFL ITPや,ドイツ語検定なども行っていますし,教育学研究科英語文化教育学講座によって英検もキャンパス内で行われることになりました。
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http://home.hiroshima-u.ac.jp/keiroh/maeda/herikutu/toeic.html