在学生代表送辞
梅の花が咲き,桜もほころび始めるこの良き日に晴れて卒業・修了される先輩の皆様,本当におめでとうございます。
皆様は,この広島大学に入学されてから今日までの間,多くの出会いや経験をされたことと思います。それらの出会いや経験は,学生時代のよき思い出として,皆様の心に深く刻まれるとともに,これからの人生においても,きっと心の支えとなることでしょう。
さて,私達は科学技術が飛躍的な進歩を遂げ,物質的に豊かな時代となった20世紀末を過ごし,新しい21世紀への変わり目を大学時代に迎えたわけですが,私達を取り巻く社会環境は益々複雑で,多くの問題を抱えています。昨年九月に起きた米国同時多発テロは皆様の記憶にも新しいことでしょう。「真珠湾以来の攻撃」という表現がなされ,平和都市である広島で学生生活を送って来た私達にとって,戦争・平和について改めて考えさせられる事件でした。テロリストの最大の武器は「命の軽さ」であったように思われます。無差別に多くの人命が犠牲となつたこの事件と同様に,20世紀,この広島でも原子爆弾の投下によって多くの人命が犠牲となりました。その奥にはどれだけの悲しみがあったことでしょう。将来,同じような悲惨な過ちを起こすことがないよう,この犠牲を無駄にすることなく,私達の記憶に残していかなければなりません。
先月行なわれたソルトレークシティーでの冬季オリンピックにおいてもテロ対策以上に判定問題が一番の焦点となった大会でした。世界における各国の地位や立場が判定の背景に見られ,不当な扱いを受けているとして,一部の国々が五輪から引き揚げる可能性を示唆しました。スポーツを通して世界協調を深め,各国が参加することに意義があるはずのオリンピックがこのような結果を導いたことは非常に残念でなりません。これからの21世紀を生きる私達はこの複雑な国際社会で,自己を確立する一方で,周囲との協調性を大切にし,広島大学の理念の一つである「平和を希求する精神」を持ち続けたいと思います。
また,ここ数年,先の見えない不況が続き,成人式での非常識な行動や若い親による幼児虐待など暗い事件が多く報道されています。今日のこの晴れの卒業式に暗い話題を採り上げるのは恐縮ではありますが,今私達が生きる日本がこのような暗い現状にあることを直視しなければなりません。私達は,先輩方と共にこの日本社会を明るいものにしていきたいと思います。そのためには,大人としての自覚や自己責任は勿論ですが,さらに他人と助け合う精神も不可欠です。この広島大学の開学は設立運動のほか,資金の面でも,県内募金をはじめとする県民の協力によるところが大きかったそうです。与えられたこの環境を当たり前と思わず,感謝の意を覚えつつ,広島大学での学生生活を通して私達も他人を思いやる精神を持って社会に貢献できる人間に成長したいと思います。これからも私達の学生生活を支えてくださる方々との協調性を大切にし,先輩方が築いてこられたこの広島大学がさらに発展するよう,努力していきたいと思います。
最後に皆様がこれまで良き先輩として私達を導き,励ましてくださったことに心から感謝の意を表し,今後の御活躍と御多幸をお祈りしつつ,在校生一同,心より御祝い申し上げて,卒業・修了される皆様への送辞とさせていただきます。
平成14年3月21日
広島大学在校生代表
医学部総合薬学科
前田奈穂
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