副センター長あいさつ

  • 松下 毅彦Takehiko Matsushita 医学教育センター 副センター長 准教授

医学教育者のめざすものは
「よい学習」でなければなりません。

平成24年10月より、副センター長を務めさせていただいております松下です。専任教員として、センターの業務全般を担わせていただいております。よろしくお願い致します。

近年、医学教育のあり方は急速に変化しつつあります。医学は領域の拡大と細分化が進み、医学生が身につけるべき知識は増大の一途をたどっています。臨床実習では診療参加型実習の導入が推奨され、医学・医療のグローバル化に伴って医学英語の重要性も増大しています。また、医学教育モデル・コア・カリキュラムの策定、全国共用試験の導入、臨床研修の必修化、など、医学教育をとりまく環境も大きく変化しつつあります。ここ数年特に話題となっていた医学教育の国際認証制度も、ついに現実のものとなりました。

医学教育は、このような医学・医療あるいは社会の変革に伴って、常にかたちを変えていくことが求められます。私は、実際に教育を行う教員の先生方の「縁の下の力持ち」として、教育をサポートし、よりよい教育を実践できるよう、教育手法の開発と環境の整備を行っていきたいと思っております。

最近、医学生の学習意欲や学力の低下が取り沙汰されています。しかし、問題の本質は、学生の学習姿勢の転換がうまくいかないことにあると思えてなりません。私はこれまで長年、医学教育者の目指すものは「よい教育」であると信じてきましたが、最近この考えを改めました。医学教育者の目指すものは「よい学習」でなければなりません。「教育」は私たち教員が行うものですが、「学習」は学生が行うものです。

高校時代までは、先生の授業をよく聞いてノートをとり、教科書をしっかり予習復習していれば、よい点数をとることができました。学習は一方的に与えられるものであり、決められたレールの上を進んでいればそれでよかったのです。しかし、医師となるためには、自らの意志で学習する姿勢と習慣を持たなければなりません。医師の仕事は生涯が学習であり、その学習には、決まったカリキュラムもなければ先生もいません。自分に何が必要かを自分で考え、必要なことを必要なだけ学ぶ学習姿勢が必要です。私は、医学教育の中で最も大切なのは、また私たち教員が最も力を注ぐべきなのは、高校までの12年間ですっかりからだに染みついた「与えられるのを待っている学習姿勢」から「学ぶべきことを自ら考えて学ぶ学習姿勢」への転換であると思っています。

学生に勉強を促す手段として、試験を厳しくする方法があります。しかしこの場合、学生は試験に合格するという目的のために試験対策をしているだけであり、自らの向上を目指して学習しているわけではありません。試験が終われば、学習の目的は達成されたので、知識の大半は忘れてしまうことでしょう。一方、臨床実習で患者さんを前にして、うまく診察をすることができなかった、知識がなくて患者さんの質問にうまく答えられなかった、等の体験は、学習の大きな動機づけとなります。このように動機づけされた学習の成果は、自身の実力となって身についていきます。自らの向上のために何が必要なのかがわかって学習しているからです。

医学生である以上将来の目標は医師になることであり、よい医師になりたいと思わない学生はいないはずです。問題は、よい医師となるために何が必要か、何を学ばなければならないかを学生が考えるかどうかにあります。

学生が、よい医師となるために必要なのだということを自分で気づいて行う学習こそが「よい学習」なのではないでしょうか。そして、学生を「よい学習」に導くこと、すなわち、今行う学習が、将来の“医師としての自分”につながっていくのだということを実感させるのは、私たち教員の仕事であり、そのような「よい学習」をひきだす教育こそが、本当に「よい教育」なのだと思います。卒業して医師となり、臨床現場で困難に直面した時に、“大学時代に学んだことが今役に立った、広島大学で学んでおいてよかった”と思ってもらえるような教育を実現できるよう、力を尽くしていきたいと思います。

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