医学部医学科 教育の理念と目標 (平成24年11月27日 医学科会議承認)

医学部の学部教育においては、医学、医療、保健、福祉の実践者にふさわしい豊かな人間性と幅広い教養を身につけ、専門職となるための基礎的知識、技能、態度を習得し、さらには科学的思考力と創造性に富む人材を育成することを共通の理念とする。

医学科は、医療の担い手としてふさわしい倫理観と人間性(思いやり、共感、献身、使命感)を備えた人材、高度な医学知識・技術を習得し、独創的研究を行い、国内外の医学水準の向上に貢献できる人材、地域社会のニーズに応えて必要な能力を提供し、地域の保健・医療の向上に貢献できる人材を育成することによって、人類の健康・福祉と社会の発展に寄与することを使命とする。

1) 医師としての基本的診療能力を身につける

将来、どの分野を専門とした時にも土台となるような幅広い知識と技能を身につけるため、本学では従来の縦割り制の分野別講義を改め、複数の講座が協働して内容を統合した総合的な講義体系を組む。これにより、各科の専門分野の概念にとらわれない総合的な知識の習得を目指す。また、医学教育モデル・コア・カリキュラムに準拠して講義体系を組み、基本的な知識や技能を遺漏なく体系的に修得させる。

良質な医師となるためには、個々の知識や技能に秀でていているのみでは不十分であり、知識、技能、態度のすべてにおいて完成されたスキルを統合して診療できることが重要である。本学では臨床実習に診療参加型実習を採用し、医療現場で医師としての業務を体験することで知識・技能・態度を実践的に学び、これらを統合して診療にあたる能力を身につけることで、卒業後の臨床研修にそのまま連続して移行できる診療能力を確立させる。また、スキルスラボを活用し、医療現場での実習にシミュレーションを併用した実習環境を構築して、基本的診療技術の早期の確立をはかる。卒業前にはOSCEによって総合的な診療技能を評価し、個々の学生について不十分な部分の指導を行う。

2) 医学・医療における事象を適切に分析・評価し問題点を解決する能力を身につける

自ら問題点をみつけそれを解決する姿勢や科学的な思考力・判断力は、医師として仕事を行ううえで必要不可欠である。これらの能力を早期から開発するため本学の学習カリキュラムでは、一方的な知識伝達型講義のみではなく、小グループによるディスカッションとPBL(Problem-based learning)テュートリアル教育を多く取り入れる。特に4年次には集中的に複数回のPBLテュートリアルを行うことで、問題解決能力を培うとともに、課題に直面した際に自然に問題解決型の考え方ができるような基本姿勢の確立を目指す。

3) 全人的医療の実践のために医師としてとるべき態度を身につける

医師としての豊かな人間性を涵養し、また、プロフェッショナルとして人々の健康を守る使命感・責任感を形成するため、入学後早期から、実際の医療現場に接する実習を行う。医療の現場を見学することで、医師の仕事を理解し、また、看護、検査部門など、他の医療スタッフの業務を理解することで、医師となるべき心構えと医師のあるべき態度を自ら考え自覚することを促す。

4) 医学・医療の基礎的及び応用的な研究の発展に寄与できる柔軟な発想と創造性を養う

生命科学としての医学の発展に寄与する研究者を養成するためには、探究心と創造性に立脚した科学的な視点を養うことが不可欠であり、学生時代に科学的な思考と方法論を十分身につけることが必要である。本学では、臨床診療を行うための知識や診療技術の教授と並行して、学生による医学研究への参画を推進する。特に、4年次には4か月間、講義等の他のカリキュラムをすべて休止し、学生を学内の各研究室に配属して、実際の研究活動に従事させる。これにより、医学研究の意義と重要性を理解し、自らも医学の発展に寄与しようとする気概とリサーチマインドを養う。

5) 医療に関わる行政制度や社会保障・医療経済の仕組み及び医療に関わる法制度を知り、これらに適切に対処する能力を身につける

疾病の予防や健康に関する問題を社会の中で捉え、保健制度や医療経済についても十分な知識を持つことが必要である。本学では、社会医学の講義を臨床実習の直前の学年である4年次に実施し、多くの演習、実習も組み合わせることで、保健医療制度における医師の役割や責務を理解するよう促す。また、地域社会において医師の果たす役割を理解するために地域医療実習を行い、すべての学生が、県内各地域の医療機関で実習を体験することによって、医療と地域住民の生活との関係を理解し、地域の抱える保健・医療上の問題を実感するようにする。

6) 医学・医療の国際化・情報化に対応して、外国語の運用能力と情報処理能力を身につける

医学のグローバル化に対応した国際交流能力を獲得するためには、実践的な英語能力を身につけることが不可欠である。本学では、入学時に全学生にTOEICを受験させ英語力を測定するとともに、3年次には、外国語教育研究センターの教員による英語の集中講義を行い、医学を話題とした英語での討論や、臨床場面における患者との英語での会話練習などを行って、実践的な英語力を養い、単なる語学力ではなく、英語によるコミュニケーション能力を修得させる。また、4年次の医学研究実習では、海外の研究施設で研究を行うことも選択可能とし、研究活動を行いながら国際交流能力の向上を図る機会を設ける。

情報化社会に対応するためには、医療情報の収集と解析を行う能力が必要であり、1年次のうちから教養科目の中にコンピューター・情報科目を取り入れ、臨床実習でも、診療に必要な情報を適切に収集、処理できることを実習の目的の一つと位置付け教育を行う。

7) 医学以外の幅広い多様な学問に触れ、多様な文化や価値観を学ぶ

一人の社会人として幅広い教養を備え、また、医学的問題を幅広い視野からとらえる能力を備えるためにも、自然・社会・人文科学的な考え方を総合的にできる素養が望まれる。さらに、化学、物理学、数学、統計学など、医学を学ぶうえで基礎となる教養的基盤を確立することも必要である。本学では、主に1年次において幅広い視点からの教養教育を行うが、高学年になり、医師となる者としての自覚がある程度育ってから教養の重要性を再認識する必要もあり、高学年での専門教育と並行して、教養教育も継続する。また、化学、物理学など、高校で学ばなかった科目があることで専門教育に支障をきたさないよう、高校での未修得科目に対するサポート教育も行う。

8) 患者やその家族、あるいは同僚と良好な人間関係を築くためのコミュニケーション能力を身につけ、チームの一員として協調性を重んじ、リーダーシップをとれる能力を涵養する

医療の基本となるのは信頼関係に根ざした良好な人間関係であり、そのためのコミュニケーション能力は医師として必須のものである。本学では、低学年のうちからグループ学習を積極的に取り入れることで、協働することの重要さを学び、チームの一員としての責任を果たしチームに貢献する姿勢の確立を図る。また、臨床実習では診療参加によって実際の患者との人間関係構築を繰り返し練習することで、患者と良好な人間関係を築くスキルの向上を促す。

9) 生涯にわたって学習する習慣を養う

医学の進歩はめざましく、医師たる者は、自分の知識や技能のレベルや限界を把握したうえで、生涯にわたり、自らの努力によって向上し続ける習慣を身につけることが必要である。本学では、複数科の講義の中に問題基盤型のPBLテュートリアルを取り入れ繰り返し行うことで、何を学ぶかを自らが決め、学びたいことを学びたいだけ学ぶ自己開発型の学習姿勢を習得させる。

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