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留学だより

メイヨークリニック医科大学神経科学部門 山崎 雄

はじめに

平成14年に広島大学を卒業した山崎 雄と申します。学生時代からわたしがずっと憧れてきた、米国への研究留学。それが現実のものとなり2013年10月よりわたしは、米国フロリダ州Department of Neuroscience, Mayo Clinic JacksonvilleのDr. Guojun Buラボで、リサーチフェローとしての研究生活をスタートさせました。

留学までの経緯


写真:研究室のあるBirdsall Medical Research Building

わたしと研究とのかかわりは、医学部4年生の基礎配属実習で、薬理学講座にて半年間基礎研究に取り組んだ時に始まります。実験内容は、ラットより単離した初代神経細胞を用い、新規向精神薬の薬理作用をパッチクランプなどの電気生理学的手法を用いて明らかにしようとするものであり、当時教室におられた松林弘明先生、天野 託先生に、基本から丁寧に指導していただきました。その際、米国留学の話をうかがい、研究者としてそのような機会をもつことができることを知り、自分もいつかそうなってみたいと漠然とですが考えたのを覚えています。半年間の実習期間が終了したあとも研究室に通わせていただき、医学部6年生の時、筆頭著者として論文発表する機会も与えていただきました。
医学部卒業後は、7年間神経内科医として臨床に没頭し、その間、基礎研究にふれる機会はまったくありませんでした。患者さんの診療を通じて感じていた、神経変性疾患の発症メカニズムはどうなっているのか?、どうしてこうなるのか?という疑問を、どのように解決していけばよいのか、その方法を学ぶ機会になればと思い、8年目に脳神経内科大学院に入学しました。
分子神経科学研究グループの一員として迎えていただきましたが、大学院1年生の時は、教室でおこなわれていた最先端の神経筋疾患研究(筋萎縮性側索硬化症、パーキンソン病、封入体筋炎など)について、先輩方から繰り返し説明をうけても、まったく理解できませんでした。グループ長の高橋哲也先生の半ば言われるままといった感じで、自分で仮説を立てて、実験を計画し、検証するといった研究のいろはができるようになるまでには、かなりの時間がかかりました。
少しずつ結果が得られ始め、研究が面白くなってきたのが2年生から3年生にかけてでした。当時わたしは死後脳をもちいて、アルツハイマー病とオートファジー関連分子のかかわりを病理学的に研究しており、それが論文として形になりそうだと感じた頃から、次の展開として(学生時代に感じた海外生活への憧れに加え、より高いレベルの研究に取り組んでみたいという理由から)留学について考えるようになりました。さらに、当グループからハーバード大学ベス・イスラエル・メディカルセンターに留学されていた山下拓史先生とお話をする機会があったり、サンフォード・バーナム医学研究所(米国サンディエゴ)から帰学された永野義人先生がグループに加わったりと、留学を身近なものとして意識するようになりました。
大学院4年で学位取得後、卒業しましたが、わたしが大学院時代に明らかにした成果は、変性(多くの神経疾患に共通した病態)や老化の末期像を対象とした研究にとどまっていました。次のステップとして、変性を正常から異常に至るまでの連続した変化としてとらえられるような研究に従事したいと、自分のなかでも留学の目的が明確化したため、その旨を諸先生方に相談し、サイエンスの世界でトップを走る米国への研究留学を決意しました。
とはいえ、コネもつてもない状況からの留学先探しが、簡単にいくはずがありませんでした。なにか行動を起こさねばということで、神経変性疾患を対象とした、細胞やモデル動物をもちいた分子生物学的な解析が行われている施設を条件に、論文やHPを頼りに複数の候補施設にアプライレターを出しました。意外にもほぼすべての施設から返事がもらえましたが、その内容は、ポジションに空きなしというお断り、もしくは日本からのフェローシップの獲得が必須条件とあり、当然ですが、臨床医をメインでやってきており、ほんの少し研究をかじった程度のわたしのキャリアにポスドクとして興味を示してくれる施設はありませんでした。
大学院卒業後は、神経内科臨床をおこないながらの留学先探しであり、本当に留学先がみつかるのか不安な日々でしたが、その間、松本昌泰先生には、何度も相談の時間をつくっていただき、留学先を選ぶにあたって、研究内容、施設のレベル、ボスの国籍、業績面、過去に日本人による1st authorの業績があるかなどさまざまな面を評価していく必要があることを教えていただきました。また、当時勤務していた県立広島病院の先生方には、わたしがいつでも大学での研究や留学の準備をおこなえるよう、格別の配慮をしていただきました。結果として、いくつかの偶然が重なり(すでに募集は終了していましたがインターネットに求人を出されていた日本人の先生にコンタクトを取りアドバイスをいただけたこと、以前国際学会で質問させていただいた先生がたまたまメイヨークリニックに留学されていたこと)、わたしの希望する上記条件に加え、豊富な脳サンプルや患者サンプルも解析可能な現在の研究室にポジションを見つけられたのは幸運でした。
もちろん、そこでもフェローシップ獲得が採用における必須条件であり、松本昌泰先生ご推薦のもと日本学術振興会海外特別研究員に採用内定し、上原記念生命科学財団ほか複数の財団より留学助成金内定通知を得ることができたため、大学院卒後2年目にわたしの米国留学が正式に決定したのでした。渡米半年前に、現地に挨拶に伺い、リサーチフェロー(ポスドク)としてお世話になることを決めました。

Bu研究室


写真:パーティでラボメンバーと(右から2番目が筆者、右隣が今回の留学にあたり大変お世話になっているAssistant Professor 兼清貴久先生)

ラボにはわたしを含めて現在ポスドクが7名おり、総勢17名から構成されています。国籍もさまざまで、中国、台湾、アメリカ、スウェーデン、フランス、ドミニカ、イタリアそして日本などです。当ラボは長年にわたり、アルツハイマー病におけるアポリポ蛋白E(apoE)やapoE受容体の研究を、分子生物学的手法、動物実験モデルを用い積極的に展開しており、この分野においては、世界をリードしている研究室のひとつです。さらにトランスレーション研究の面においても、メイヨークリニックの神経内科医との共同研究により、患者由来の生体サンプルを用いた新規診断法および将来的な新規治療法の開発を積極的に行っており、脳神経内科医であるわたしにはとても魅力的な環境にあるといえます。
テクニシャン以外は各々が個別のテーマを与えられ研究しており、またそのテーマは重複しないように配慮されています。基本的にある程度の方向性は示されますが、PIが細かいところまで実験に口出しをすることはありません。出勤時間や帰る時間も自由、休日に働くかどうかも全て個々の裁量に任されています。Dutyは週に 1回行われるlab meetingへの出席だけで、2週間ごとの全員のdata meetingと、各自3-4ヶ月に1回の頻度で回ってくる60分程度のプレゼンテーションが交互に組み合わせられています。細かな実験の指導はありませんが、PIやメンバーからデータの信頼性や解釈、結果から得られる次への戦略の立て方など、多面的なフィードバックを得ることができ、大変勉強になっています。いまでも議論されている内容についていくのに必死で、日本では病理学的解析を主に行ってきたわたしにとって、基本となる生化学や分子生物学の知識、経験が圧倒的に不足していることを痛感する毎日ですが、ラボに日本人の方がいるのはとても心強く、またPIを含めそのような(ポスドクとして役に立っているのかわからないような)わたしでもお客さん扱いされず、根気強く指導してもらえているのはとてもありがたいことだと感じています。


写真:北米神経学会2014@ワシントンD.C.
現在、わたしはアルツハイマー病における脳血管病態の役割をメインテーマに、in vitro、in vivo実験に、日々悪戦苦闘しながら取り組んでいます。米国の研究室は PIの性格によってその雰囲気が大きく左右され、年中無休で朝から晩まで働かせる研究室や、グラントが取れずPIが常にイライラしている研究室など、さまざまなタイプの研究室があるようです。PIの各自の研究経験や能力に差があることを理解したうえで指導する姿勢は一貫しており、また自分で考えて実験を進めることができるため、現在の研究室では非常に居心地よく過ごしています。ラボの雰囲気、メンバー同志の仲もよく、定期的に開かれるパーティに参加したり、各メンバーの誕生日にはケーキを用意して休憩時間にパーティーが開かれたりするのですが、このような研究以外のラボライフも楽しんでいます。

ジャクソンビルライフ

Mayo Clinic Jacksonvilleのあるフロリダ州は、愛称Sunshine Stateといわれるように、年間を通じて温暖な気候と陽光が特徴です。わたしの住んでいるジャクソンビル市は、フロリダ半島東側の付け根付近に位置するフロリダ州最大の都市で、12月から2月にかけては、さすがに冬の装いが必要となるものの、その後は春を楽しむまもなく夏となり、研究施設から車で10分程度のビーチエリアは、一年中多くのサーファーや釣り人、海水浴を楽しむ人々でにぎわいます。
少し足を伸ばせば「アメリカ最古の街」セント・オーガスティンがあり、ジャクソンビル市から2-3時間の距離に位置するオーランド市は、世界に類のないテーマパーク都市としてご存知の方も多いと思います。「ウォルト・ディズニー・ワールド」、「ユニバーサル・オーランド・リゾート」、「シーワールド」など世界的に有名なテーマパークがあつまっており、月曜日の朝には年間パスを使って先週末もオーランドに行った みたいな話をよく聞きます。オーランド市から30分程度郊外に足を伸ばすと、宇宙への玄関口として知られる「ケネディ・スペース・センター」があり、ラボの学生たちは昨年新型宇宙船「Orion」の打ち上げを見にいったようです。その海岸続きにカーレースの街「デイトナ」があります。 またオーランドから最も近いビーチ「ココアビーチ」もサーフィンのメッカです。
着任の際に、すでに多くの日本人の方が留学しておられ、生活のセットアップ、各種手続き等を手伝ってもらえたこと、上述したラボの雰囲気に加え、このような温暖な気候と陽光に溢れた生活環境のおかげで、広島市から出たことのなかったわたしがアメリカに年単位で滞在するというこれまで経験したことのないストレスは最小限に抑えられたものと思います。

確かにジャクソンビル市は他のアメリカの大都市と比較すれば手に入らない日本のものも多く、当初はいかに日本と同じ生活水準を保てるかばかりを気にしていました。しかし、渡米1年たった頃から「郷に入っては郷に従え」の精神で、現地生活を楽しめるようになってきました。日本では米の炊き方すら知らなかったわたしであり、渡米当初は自炊をこころみ包丁で指を切ることが多く、できあがった料理がよく血塗れになったものです。ところが、いまでは食材の調達方法も身について、同僚の日本人の方から「おふくろの味」と評されるような日本料理を作れるようになっています。

アメリカにきて感じたこと

こちらに留学されていた諸先輩方が口をそろえていわれるように、米国におけるライフサイエンスの研究環境は、莫大な研究費に支えられており、多数のノーベル賞受賞者を輩出するなど、その研究水準も世界のトップにあることは間違いありません。優れた研究成果を挙げれば、出身、人種や民族に係わらず、高い地位、名誉が与えられ、より一層の研究支援にもつながるため、多くの研究者が日夜しのぎを削り、全体のレベルを押し上げていると思います。さらに、世界中の有能な研究者が、この最大限の成果をうみだすシステムの魅力に惹かれて米国に集中し、当地の研究レベルは一層高まっているようです。


写真:大西洋。海のすがすがしさを見ていると、研究への新たな着想が生まれてくる気がします
米国における、各個人に対する社会や他人からの評価は、いかに富をもっているかと社会貢献をおこなっているかによって決まるように思いますが、それに通ずるように研究者としての評価が、研究業績と獲得したグラント資金で評価されるシステムは、シンプル、公平、客観的であり、多民族集団である研究の領域においても、出生、国籍を問わず、誰もが理解しやすいものです。このシステムを基盤に、人を循環させ続けることで、国家として最大限の研究成果をあげられるような合理的な仕組みが築かれているのだと思います。このような仕組みのなかで、同じ志をもち世界中からあつまった優秀な人と出会う機会があると同時に、淘汰されないよう必死で生きている多くの研究者を目の当たりにできる米国の留学生活は、わたしにとって、とても刺激的な毎日です。ポスドクとして目の前の課題に全力で取り組み、研究成果を挙げることが本分ですが、日本では考えることすらなかった資金獲得力についても少しずつ学んでいければと考えています。

おわりに

わたしの留学を全面的にご支援くださった、松本昌泰先生、直前まで勤務させていただき快く送り出してくださった、県立広島病院の時信 弘先生、仲 博満先生、金谷雄平先生、内藤裕之先生、直接研究のご指導をいただいた分子神経科学研究グループの高橋哲也先生、そしてグループの皆様に、この場を借りて心より御礼申し上げます。このような恵まれた環境で、わたしの希望する研究をさせて頂いている事に感謝するとともに、神経疾患になやむ患者さんに貢献できるような形を残せるよう、当地で最大限に努力していきたいと考えています。

2015年2月22日

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