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なぜmitochondriaを研究するのか -

なぜ私はミトコンドリアの研究を行っているのか

私は以前、重要なバイオマスであるセルロースに関する研究を行っていた。セルロース合成阻害剤に対する感受性が変化したシロイヌナズナの変異体を単離し、その変異遺伝子を解明した。それは植物のミトコンドリアゲノムに存在するイントロンをスプライスする、核にコードされた遺伝子だった。

さらに、この遺伝子の変異はセルロースだけでなく脂質、デンプン、アミノ酸などの多種の重要なバイオマスの蓄積量にも同時に大きな変化を引き起こした。  Plant Cell Physiology 47(6) 772-783(2006)_について

これらのことは、セルロース合成という基礎的で大量の糖を消費する代謝は、他の基礎代謝と密接不可分な関係にあることを示していると考えている。またミトコンドリアは単に基礎代謝と ATP 生産を行うだけでなく、植物のバイオマス生産をコントロールする因子(資源、エネルギーの配分を決める装置)として機能している可能性を示すと考えている。 そのしくみを解明することは、植物のバイオマス生産を人為的に都合よく制御することを可能にするかもしれない。資源、エネルギーの配分 allocation (例えば「バイオマス生産」と「病害防御機構」の間の分配、配分)を最適化するための一般的な問題解決手法が見いだせるかもしれない。

言い換えると、「生物の細胞でミトコンドリアが関連している物事はどんなことでも重要に決まっている」ときわめて主観的に思い込んでいると言うことになる。あまり賛成する人はいないようだが、それは仕方がない。などど言っていても仕方がないので、「社会的に意味があること」にミトコンドリア研究をできるだけ結びつけられるように心を広く持たなければならないと改心している。

また細胞ではミトコンドリアは単独で機能を果たすだけでなく、葉緑体、ペルオキシソームなどの他のオルガネラと相互に連携することでさらに高度な働きを行うことが注目され研究されている。このことを「細胞内の秘密の会話」と呼ぶ人もいる。 解説記事へのリンク:   だから葉緑体、ペルオキシソーム、小胞体などについても深く関心を持たなければならないと考えを進めた。考えてみると私が以前見つけたことは、細胞壁とミトコンドリアがエネルギーを通じて連携しているということだった。

種子の発芽は社会的意味が大きい。「発芽生物学」(種生物学会 編集)という本に、発芽の際にはミトコンドリアが修復、新生されると書いてあった。植物生理学の成果を生かし寄生植物の発芽をコントロールすることが試みられている。植物ミトコンドリアに関連する研究の成果も発芽の研究と制御に何か貢献できるのではないかと考えている。