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Amiodarone -

アミオダロン

抗不整脈薬として使われているが、酵母細胞のカルシウム濃度を変化させることも知られている。

Amiodarone induces stress responses and calcium flux mediated by the cell wall in Saccharomyces cerevisiae.   Courchesne WE, Tunc M, Liao S.   Can J Microbiol. 2009 Mar;55(3):288-303.

植物に与えてみたことがあるが、あまり顕著な作用はなかったような気がする。しかし与え方によってはうまく使えるかもしれない。こんな論文があった。

Mitochondrial retrograde regulation of HSP101 expression in Arabidopsis thaliana under heat stress and amiodarone action   Russian Journal of Plant Physiology   January 2014, Volume 61, Issue 1, pp 80–89   https://link.springer.com/article/10.1134/S1021443714010117

この論文を読んでみる。

熱ストレスはヒートショックタンパク質を誘導する。その際には、ミトコンドリア内膜の外部、内側の間の電位差=プロトンの濃度勾配 が大きくなる。

(私が考えたこと: シロイヌナズナの種子では高い温度で発芽させるとアブシジン酸が減少しにくくなり発芽が抑えられる。そういうこととも関係があるかもしれない。)

ここでアミオダロンが出てくる。アミオダロンは酵母で、細胞質のカルシウム濃度、ミトコンドリア内膜の電位差を平行して上昇させる。そして Hsp104 の転写が誘導される。今回、アミオダロンをシロイヌナズナの培養細胞に与えてみた。

5 から 100 のアミオダロンで培養細胞を26℃、120分処理することで、Hsp101 が転写誘導された。 また抗体を用いて Hsp101 タンパク質の量の増加も確認できた。 100 で一番強く誘導された。しかし37度で処理した際よりも、 誘導は弱いものだった。 他の種類の Hsp に対する効果はない・再現性に乏しいものだった。

ミトコンドリア内膜におけるプロトンの濃度勾配を破壊する CCCP で 26℃で処理しても、Hsp101 の転写誘導は引き起こされた。

アミオダロン、CCCP によって細胞が熱ストレスに耐えられるようになるかどうかを調べた。TTC トリフェニル テトラゾリウム クロライドを還元する能力(ミトコンドリアの還元酵素で還元されると、色がつく)で測定している。 熱ストレスは 50度、10分間与えている。37度で120分処理(マイルドなストレスで前処理)することで、細胞は熱ストレスにかなり耐えられるようになった。Hsp が増加した効果だと思われる。 26℃では、アミオダロンは熱ストレス耐性を与えなかった。CCCP は26度で与えるとほんの少し耐性を高くした。

37度では、アミオダロンは熱ストレスによる誘導に影響を与えないが、CCCP は熱ストレスによる誘導を抑制する効果があった。CCCP の効果は、CCCP が Hsp101 の転写に与える効果と一致していた。Hsp101 の重要性を示している。

ミトコンドリア内膜のプロトンの濃度勾配を見積もるために、JC-1 という色素を使った。 電位差が小さい場合、緑色の蛍光を放出する。電位差が大きいと、色素同士で凝集して赤い蛍光を放出する。 細胞を37度で二時間処理すると、赤い蛍光が強く放出された。アミオダロン処理を26度で行っても、赤い蛍光の強度が強くなった。これはアミオダロン処理と37度処理で同じくらい強かった。 これらの処理がミトコンドリア内膜のプロトン濃度勾配(電位差)を大きくすることを示している。 アンチマイシン、CCCP で処理すると、赤い蛍光は弱くなった。ミトコンドリア内膜に由来していることを確かめられた。

細胞質のカルシウム濃度を、Fluo-4 AM という色素で測定した。アミオダロン処理と37度処理は、どちらも細胞質のカルシウム濃度を上昇させた。 この上昇は、ミトコンドリア内膜の電位差の上昇と平行していた。 CCCP も、細胞質のカルシウム濃度を上昇させた。26度でも37度でも上昇した。これはミトコンドリア内膜のプロトン濃度勾配(電位差)と全然平行していなかった。

Hsp101 が誘導される仕組みについて推定されている。熱でカルシウムが細胞質に流れ込む。それは毒性があるので、過剰のカルシウムはミトコンドリア内に輸送される。そのことでミトコンドリア内膜のプロトン濃度勾配が大きくなる。 それによってミトコンドリアから活性酸素 ROS が生成する。ROS が Hsp101 の転写誘導を引き起こす。 CCCP はミトコンドリアから細胞質へ逆向きにカルシウムを動かし、それが Hsp101 の誘導をかえって阻害する。

Effects of amiodarone on K, internal pH and Ca homeostasis in Saccharomyces cerevisiae.   Peña A, Calahorra M, Michel B, Ramírez J, Sánchez NS.   FEMS Yeast Res. 2009 Jun 11. [Epub ahead of print]

病原性酵母では、エルゴステロール合成阻害剤と同時に投与すると病原性を抑える。

Mechanism of the synergistic effect of amiodarone and fluconazole in Candida albicans.   Gamarra S, Rocha EM, Zhang YQ, Park S, Rao R, Perlin DS.    Antimicrob Agents Chemother. 2010 May;54(5):1753-61. Epub 2010 Mar 1.

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