てんかんのQ and A

てんかん患者さんや御家族から良く受ける質問をまとめてみました。

1.てんかんとは?

 人間の脳の活動は神経細胞(ニューロン)の電気的活動によって行われていますが、てんかんは大脳のニューロンの一部が、特別に活発な放電を起こすことによってけいれんなどの発作が繰り返して起こる慢性の病気です。

 

2.発作とは?

 てんかんの発作には色々の種類があります。両手を中心とする一瞬のピクつき(ミオクローヌス発作)、突然意識が無くなりまた直ぐに回復する(欠神発作)、手足の一部の引きつりやけいれん(単純部分発作)、意識が消失し四肢が硬直したあとピクつきに代わる(強直間代けいれん、大発作)などです。一般の人にわかりにくいのは自動症発作で、意識はもうろうとなったままで口や舌や手を勝手にうごかしたり、歩き回ったりすることもあります。

 

3.てんかんの種類は?

 病因によって、特定の病変・原因のみあたらないもの(特発性てんかん)と脳炎、脳腫瘍、外傷、海馬硬化など何らかの脳疾患があってそこから2次的にてんかんが生じてくるもの(症候性てんかん)に分けられます。

 また、発作を起こす異常な放電が脳の一部から起こるもの(局在関連性てんかん)と、最初から大脳の両側にまたがる広範な領域に異常放電が起こり、発作の起源を推定することが出来ない(全般性てんかん)に分類することができます。

たとえば、側頭葉自動症は症候性局在関連性てんかんで、典型的欠神発作は特発性全般性てんかんなどと呼ばれます。

 

4. てんかんはめずらいし病気?

 人間が一生のうちで少なくとも一回のけいれんを起こす可能性は全人口の10人に一人といわれています。また、けいれん発作が慢性となりてんかんの状態となる患者さんは全人口100人に一人で、決してまれな病気ではなく、むしろありふれた病気ということが出来ます。 

 

5. てんかんは遺伝しますか?

 ごく一部の特殊なものを除いててんかんは遺伝しません。当然人から人に感染する病気でもありません。

 

6. どのような検査をしますか?

 てんかん発作が疑われれば、まず脳に傷や腫瘍などの異常がないかCTやMRIをとります。特に最近のMRIのFLAIR(フレアー)法で撮像すれば以前CTをとって正常だと言われた患者さんのなかにも治療可能な病変が見つかるようになってきています。

 脳波は発作が本当にてんかんであるか、さらにどのような種類のてんかんであるかの見極めに重要です。外来での30分前後の脳波測定では異常放電をとらえられないこともありますので、場合によっては入院していただき脳波と行動を観察するビデオ脳波モニタリングという検査を行うこともあります。

てんかん発作の起源となっている脳の部分は血流が低下することが多いので、SPECTという脳血流検査も有用です。

この他、ごく最近になって利用可能になった脳磁図検査(MEG)はてんかん発作起源をつきとめるのに活躍が期待されています。(本ホームページの最後にMEGの紹介が載っています)

 

7. てんかんの治療方法は?

 まず長期間にわたる正確な薬物療法をきちんと行うことが大切です。これによって大部分のてんかん発作は抑える(寛解)ことが可能です。とくに特発性てんかんは殆どの場合、薬でコントロールすることが可能です。

 薬の種類や量は、発作の種類や程度や薬物の血中濃度を見ながら慎重に決定されます。ですから、自分勝手に薬の量を調節しない、勝手に薬を止めないことが大切です。自分勝手な服用で中毒におちいったり、ひどいてんかん発作を誘発することもあります。

 

8. 仕事や家庭生活は出来ますか?

 薬などで発作がおさえられていれば通常の仕事が出来ます。発作が不十分にしかおさえられていなければ、危険作業や夜業は避けた方が良いので仕事内容についての話し合いが必要です。家庭での生活が困るような重症のてんかんは稀です。

 

9. てんかん発作が起こったらどうしたらよいでしょうか?

 大切なことは、てんかん発作の状態を良く観察することです。落ち着いたら発作の状況を記録しておきましょう。大きなてんかん発作でも、通常は1分以内で止まります。大きな発作の時は顔を横向きにして、着衣をゆるめて下さい。口の中にスプーンなどをつっこまない方がよいです。発作が5分以上続いたり、10分以上意識が戻らないときには救急車を呼びましょう。

 

10. てんかんの手術とは?

 きちんとした薬物治療を行っているにもかかわらず、てんかん発作が抑えきれず、生活や仕事に支障がある場合、手術療法を考慮する必要があります。

手術は大きく分けて二つの方法があります。ひとつはてんかんの起源となっている病変を切除する方法(焦点切除)で、もう一つは脳の一部に生じた異常放電が両側の大脳全体に拡がらないよう、異常放電の伝わる経路を絶つ方法(遮断手術)です。この他、脳を切除せず脳の表面に浅い傷をつけて、異常放電がおこらないようにするMSTという方法があります。

これらの中で最も数多く行われているのが、側頭葉の中の海馬という部分の異常(海馬硬化)によって起こるてんかんに対する側頭葉前半部切除術です。この手術は専門家が行えば比較的安全に行えます。手術によって発作が完全に無くなる可能性約70%で、完全に無くならなくても発作回数が少なくなる可能性は約20%です。

 

11. どのような医師に相談したら良いでしょうか?

 てんかんを治療しているのは神経内科、脳神経外科、精神科などです。時間をかけてゆっくり相談にのってくれる医師を選びましょう。

 

12. 普段の生活のことや行政の支援など、もっと詳しく知りたいのですが

 患者さん、御家族を中心とする団体に社団法人日本てんかん協会があります。各県に支部組織が設置されていますが、広島県支部の連絡先は下記の通りです。てんかんに関するどんなことでも相談にのっていただけます。また、定期的に相談会や講演会を開いています。

日本てんかん協会 広島県支部
〒730-0051
広島市中区大手町5丁目16-18
TEL・FAX: 082-242-6540

 

広島大学にMEGの導入

 脳は神経細胞の電気活動によって活動しています。てんかんはこの電気活動がうまくコントロールされず脳の一部で異常な放電が生じることによって起こります。この異常放電を直接測定する方法に脳波検査があります。しかし、通常の脳波検査では測定用の電極は頭の皮膚の上におくため、電極と大脳の間には電気を通しにくい分厚い介在物(髄液、硬膜、頭蓋骨、皮下脂肪、皮膚)があります。このため、神経細胞の電気活動を正確にとらえることが出来にくいことがあります。この問題の解決のために、開頭手術をして脳表に電極を設置する事も行われますが、患者さんの肉体的な負担はさけられません。

 一方、電気活動は同時に磁場の変化を生み出します。この磁場の変化は極めて微弱ですが、介在物によって影響を受けにくいという利点があります。この微弱な磁場の変化をとらえるセンサーを頭皮上に多数(今回導入されたものは306チャンネル)配列し、頭全体の磁場の変化を測定すれば、コンピュータで逆算して電気活動を正確に割り出すことが出来ます。この装置を脳磁図計(MEG)といいます。MEGは、特に難治性てんかんの患者さんの発作の起源(焦点)を明らかにするのに活躍が期待されます。広島大学医学部では2000年3月に最新型のMEGが設置され、4月から利用が可能になりました。広島大学脳神経外科では、5年間をかけて、難治性てんかんについてすべての検査と手術が行えるように準備を進めて来ましたが、このMEGの設置によって、ほぼ全体制が整ったことになります。

 

 これらの図は協和発酵工業株式会社、泉 達郎監修「てんかん -診断と治療-」から提供会社、エレクタ社の御厚意によりそれぞれ引用しました。

文責 広島大学脳神経外科 機能脳神経外科グループ

 

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