プロジェクト研究センター設立までの成果

1960年代後半に開始された広島大学のインド地域研究は、主に農村を対象として行われてきたが、1990年代の後半から、インドの急速な経済成長をふまえ、工業化や都市開発に力点を置くようになり、インドの国土構造・地域システムの解明を研究目標とするようになった。  

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1996年度から1998年度にかけて行った「インドにおける工業化の新展開と地域構造の変容」(科学研究費 国際学術研究・学術調査、代表者:岡橋秀典)は、この方向での最初のまとまった調査・研究であり、急激に進行するインドの工業化の研究に成果をあげた。その成果は2003年3月日本地理学会の海外地域研究叢書第2巻『インドの新しい工業化』古今書院にまとめられた。2001年度からは、テーマを拡大して、「経済自由化後のインドにおける都市・産業開発の進展と地域的波及構造」(科学研究費基盤研究(A)海外地域研究,代表者:岡橋秀典)の下で、インド大都市圏の都市・産業開発に関する調査研究を進めた。  
本センターの研究活動はこれら一連の研究蓄積の上に出発したものである。

プロジェクト研究センター設立後の成果

○2003年度
「経済自由化後のインドにおける都市・産業開発の進展と地域的波及構造」(科学研究費基盤研究(A)海外地域研究,代表者:岡橋秀典)にもとづく調査研究を実施した。これまでの研究成果をまとめるとともに、インドにおける現地調査を2003年11月末から12月末にかけて研究員9名の参加を得て実施した。対象地域は,デリー大都市圏であり,特に郊外のグルガオン地区(ハリヤーナー州)に焦点をあてて調査を行った。

○2004年度
2001-2003年度の3年間にわたる科学研究費基盤研究(A)海外地域研究の研究結果の総括を行い,その成果を本プロジェクト研究センターの研究成果報告書『経済自由化後のインドにおける都市・産業開発の進展と地域的波及構造』(A4版344ページ)として2005年1月に刊行した。

2004年9月に開催された日本地理学会秋季大会(会場:広島大学)においては、インドと中国の変貌の比較をテーマとしたシンポジウム「二つの大国の変貌ーグローバリゼーション下のインドと中国」を開催した。本センター長と研究員2名がオーガナイザーをつとめ,また本センター研究員5名が発表した。二つの大国の比較というテーマは,これまでにない斬新なもので,参加者から高い評価を受けた。なお,このシンポジウムの内容をもとにした報告書を,広島大学総合地誌研究資料センター研究叢書40として2005年3月に刊行した。

○2005年度
本年度から採択された「グローバリゼーション下のインドにおける国土空間構造の変動と国内周辺部問題」(科学研究費基盤研究(A)海外地域研究,代表者:岡橋秀典)にもとづく調査研究を開始した。インドにおける現地調査は,11月末から12月末にかけて7名の研究分担者と3名の研究協力者の参加を得て行った。滞在した地域は,デリー,インドール(マディヤ・プラデーシュ州),ナイニタル(ウッタランチャル州)などであり,主に2006年度と2007年度調査のための予備調査を行った。 2005年度の研究員による主な研究成果を,本プロジェクト研究センターの研究成果報告書『現代南アジアの地域システム』として2006年3月に刊行した。

○2006年度
昨年度に引き続き「グローバリゼーション下のインドにおける国土空間構造の変動と国内周辺部問題」(科学研究費基盤研究(A)海外地域研究,代表者:岡橋秀典)にもとづく調査研究を実施した。対象地域は,主にマディヤ・プラデーシュ州インドール市とその周辺であり,一部は,2007年度の調査地域ウッタランチャル州や,この地域に隣接するネパール農村でも調査を行った。 研究員によって2006年度中に行われた主な研究成果を,本プロジェクト研究センターの研究成果報告書『現代南アジアの地域システム2』として2007年3月に刊行した。 なお,本センターの多くの研究員が執筆している「インドの新しい工業化ー工業開発の最前線から」(日本地理学会海外地域研究叢書2)は,2007年1月に第2刷に入った。これに合わせて一部のデータを更新する改訂作業を行った。

○2007年度
2005年度から開始した「グローバリゼーション下のインドにおける国土空間構造の変動と国内周辺部問題」(科学研究費基盤研究(A)海外地域研究,代表者:岡橋秀典)にもとづく調査研究を引き続き実施した。対象地域は、インドヒマラヤに位置し、国内周辺部としての特徴を有するウッタラカンド州である。保養地であり中心性も高いナイニタルを拠点に、観光産業の動向、住宅地開発の特徴、近郊農村の変貌について調査し、一部は工業化の調査のために山麓部においても調査を行った。
研究員によって2007年度中に行われた主な研究成果を,本プロジェクト研究センターの研究成果報告書 『現代南アジアの地域システム3』としてまとめ、 2008年3月に刊行した。

○2008年度
本年度は、2007年度で終了した「グローバリゼーション下のインドにおける国土空間構造の変動と国内周辺部問題」(科学研究費基盤研究(A)海外地域研究、代表者:岡橋秀典)の総括作業を行い、報告書にまとめた。2008年度から新たに科学研究費(基盤研究(B))「インド・国内周辺部における開発戦略の展開と持続的発展への課題?2つの山岳州の比較?」が採択された。インド北部の山岳州であるウッタラカンド州とヒマーチャル・プラデーシュ州について、比較の視点を交えながら、その開発過程を検討しようとするものである。9月に本センターの研究員である研究分担者により、インドでの現地予備調査を行った。2008年度中に行われた主な研究成果を,本プロジェクト研究センターの研究成果報告書 『現代南アジアの地域システム4』としてまとめ刊行した。また、本センターの研究員,客員研究員執筆の『Emerging New Industrial Spaces and Regional Developments in India』(日本南アジア学会叢書No.5)がインドの出版社Manoharから刊行された。

○2009年度
2009年度は9月から10月にかけてウッタラカンド州で本調査を実施した。本プロジェクトセンターからセンター長をはじめ5名が調査に参加した。主な調査地は、山麓部にあり大規模な工業開発と都市開発が進行するウッダム・シン・ナガール県ルドラプルと、山岳地域ナイニタル県のビムタール、ノークチアタルであった。ルドラプルでは工業化と都市開発について、ビムタール、ノークチアタルでは観光開発と工業化などについて調査を行った。一部のメンバーはウッタラカンドの内奥に位置するアルモラ、コーサニにも足を運び、農村開発と職業訓練校の実態について調査した。本調査によって、山岳州ウッタラカンドにおける経済自由化後のダイナミックな変化が明らかとなった。
本センターの2009年度の研究活動として特筆すべきは、人間文化研究機構による「現代インド地域研究」に関わる活動である。本年度から、広島大学は人間文化研究機構の地域研究推進事業「現代インド地域研究」の拠点に指定された(2009年度は準備年)。全国6拠点(京都大学、東京大学、東京外国語大学、民族学博物館、龍谷大学、広島大学)の一つであり、これまでの研究をふまえて、全国、さらにグローバルに研究交流を展開するチャンスが訪れた。幸いなことに本大学には8名のインド研究者が存在すること、広島大学総合地誌研究資料センターから、広島大学現代南アジア地域システム・プロジェクト研究センターという形で、組織的かつ持続的にインド研究を続けてきたことが拠点形成にとって有利に働いたといえよう。
2009年度中に行われた主な研究成果については、 『現代南アジアの地域システム5』を刊行し、公表した。

○2010年度
本年度も、昨年度に引き続き、岡橋を研究代表者とする科学研究費基盤研究(B)の「インド・国内周辺部における開発戦略の展開と持続的発展への課題-2つの山岳州の比較」による共同の調査研究を主たる事業として実施した。9月にインド北部山岳地域(ウッタラカンド州、ヒマーチャル・プラデーシュ州)において、7人のメンバーによる現地調査を行い、その成果を2011年3月の日本地理学会大会で発表した(大会での口頭発表は中止となったが、報告要旨は受理された)。また、2010年度は、この研究プロジェクトの最終年度であるため、研究の取りまとめ作業を並行して進めた。来年度には、本研究の成果を書物として刊行することを計画している。 
本センターは、南アジア全体を対象としているが、2010年4月に設立された広島大学現代インド研究センターとフィールドが共通する部分が多いので、相互に連携しながら事業を進めている。現代インド研究センターが開催した2010年度の7回の研究集会の実施に協力したほか、成果の報告についても、現代インド研究センターが発行する「広島大学現代インド研究-空間と社会」に協力し、成果を掲載することとした。これに合わせて5年間にわたりこれまで独自に毎年発行してきた「現代南アジアの地域システム」の発行を取りやめた。上記科研プロジェクトの成果も、この雑誌に多数掲載されている。なお、本雑誌の編集作業に対しRAを中心に協力した。

○2011年度
本年度から「現代インドにおけるメガ・リージョンの形成・発展と経済社会変動に関する研究」(研究代表者・本プロジェクトセンター長・岡橋秀典)が新たに採択され、2014年度までの4年計画の事業として、共同研究プロジェクトを開始した。研究分担者10名、連携研究者2名による研究で、本プロジェクトセンターの中核的事業となる。本年度は、初年度なので、2011年9月にメガ・リージョンの核となるデリーからハリヤーナー州、パンジャーブ州において予備調査を実施するとともに、メガ・リージョンに関する基礎的な考察を進めた。
なお、並行して、本センター研究員の友澤和夫氏を研究代表者とする科学研究費(基盤研究B)「インド成長産業のダイナミズムと空間構造」の共同研究プロジェクトも本年度より開始された。上記プロジェクトと同じく2014年度までの計画として実施予定であり、今後連携を深めていく予定。2012年2月〜3月にかけて現地調査が行われた。
本センターは、広島大学現代インド研究センターと相互に協力しながら事業を進めている。現代インド研究センターが開催した23年度の7回の研究集会のほか、1回の国内全体集会の実施に協力した。成果の報告についても、現代インド研究センターが発行する「広島大学現代インド研究―空間と社会」第2巻の刊行に協力し成果を掲載した。上記科研プロジェクトの成果も、この雑誌に掲載されている。