No.ReSCL-16

英語タイトル:

Slicks, waves, and fronts observed in a sea coastal area by an X-band airborne synthetic aperture radar

 

日本語訳タイトル:

航空機搭載Xバンド合成開口レーダによる沿岸域の汚染,波浪およびFront(潮目?)の観測

 

筆者:

P. Forget and P. Broche

 

要旨:

本論文では,Xバンド合成開口レーダ(SAR)による沿岸域の観測結果を報告する.観測域は,ローヌ川の河口域である.最初にSARデータ処理,特にスペックルの除去方法について説明する.次に,河口域の海面油汚染観測結果と,その分布パターンを,河口域の水流動モデルによる流れ予測結果による予測と比較する.次にSARによる波浪観測結果と,沿岸からある程度離れた領域(off-shore)では,風の状況と矛盾しない結果である.SAR映像に波がどの程度現れるか(visibility)を,SAR映像理論に基づいて議論する.更にSAR映像から有義波高を導出する.沿岸域では,海底の影響によって波浪が変化するが,その様子がSAR映像に現れた.それを,off-shoreにおける波浪パラメータを初期値として簡単なモデル計算を用いて議論する.モデル計算で示された波浪の屈折効果は,SAR映像に一部現れたがあまり明確でなかった.最後に,河川水と海水の間のfront(潮目?)の観測結果を示

す.SkopとLeipoldによる水流-波浪モデルによると,frontのSAR映像の明確さを説明することができる.これらの結果は,航空機搭載SARが,沿岸域の環境モニタに有効であることを示している.

 

(訳:古津)

 

訳者コメント:

 ドイツDLRの開発したSARを用いて,フランスCNESが1990年に実験を行ったものである.大体訳者が予想しているような用途に用いられている.油などの汚染域を観測できたとしても,それがどのように広がるかを予測するには,流動の情報が必要なので,SARリモセンと流動モデルを組合わせることが必要であろう.潮目(と呼んでいいのですか?)の検出において,波浪(ブラッグ散乱に効く波長数cmの波)と水流の相互作用については,別の論文(Skop and Leipold, 1988)を勉強する必要があろう.汽水域の環境モニタで,航空機搭載SARが使えればありがたいが,チャンスは少ない(CRLとの協力で偶に?).衛星の場合,観測日が限定されてしまうのがつらいところ.また分解能が10倍位違うので,細かい現象を検出できるか,という問題もある.しかし当面は衛星に頼らざるを得ない.

宍道湖・中海での汚染域観測+流動計算での予測,潮目の検出などは面白いテーマであろう.

 

Skop, R.A. and Y. Leipold, 1988: Modification of directional wave number spectra by

surface currents.  Ocean Eng., 15, 585-602.