No.ReSCL-18

英語タイトル:

Predicting phytoplankton composition from space –Using the ratio of euphotic depth to mized-layer depth: An Evaluation

 

日本語訳タイトル:

宇宙からの植物プランクトン構成予測:有光層と混合層の比を使って

 

筆者:

Brown, C. W., Esaias, W. E., and Thompson, A. M.

 

要旨:

環境研究の応用として,いくつかのフィールドで植物プランクトンの分類学的な構成(the taxonomic composition)を遠隔から識別する方法が試されている.しかし現状又は近い将来,分光学的な方法を使った特殊なケースを除いて,衛星画像から植物プランクトンの構成の識別を行うことは難しそうである.そこで代わりになる方法として我々は「有光層(Zeu)(Euphotic layer)と混合層(Zm)(mixed -layer)の比」を使う方法を検討する.構成予測のパラメータは温帯の北大西洋(North Atlantic Ocean)と北太平洋(North Pacific Ocean)の表層に生息し相対的多数種である3つの主要な藻類グループ,すなわち珪藻(diatom),渦鞭毛藻(dinoflagellates),石灰質ナノプランクトン(coccolithophore)とした.その比は現場の測定をすることなしに(構成を)確かめることができる. Zeuは海色画像から,Zmは水位モデル(hydrographic model)からそれぞれ導かれる.渦鞭毛藻が優占する場所よりもZeu-Zm比の値が大きい珪藻が優占する場所の方が植物プランクトン集団(the phytoplankton comminity)を支配していることが細胞濃度(cell concentration)からわかった.これは珪藻が渦鞭毛藻よりも層状構造をなすことが少ないというという既存の考え方とは逆である.単にデータセットに反映させるあるいはかなり試験が必要な場合には,地域的な基礎に立った上で植物プランクトンを分類することへの手助けとなる.しかしZeu-Zm比は植物プランクトンの分類学的構成を識別するための非分光学的な技術として使うのは難しいであろう.

(訳:作野)

 

訳者コメント:

この論文は外洋における植物プランクトンの種類をリモートセンシングデータ等により識別するための研究だと思われる.実際に使用されたデータは観測したクロロフィル濃度から経験式を使って推定したZeuと水の密度?から推定したZmデータを使っているようである.ここで議論されている有光層,混合層は数10〜数100m以上の層を示しており,宍道湖・中海のような浅い富栄養化水域において同様な議論は難しいと思われる.しかし,宍道湖・中海でもこのような植物プランクトンの水深ごとのすみわけがあるという結果もあり(大塚,私信),何らかの方法(広義のリモートセンシング技術)で,植物プランクトンの種類分布が地図化できれば画期的といえるだろう.